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金曜日, 12月 30, 2011

フランス海岸松

○フランス海岸松

 フランス海岸松は南仏の大西洋沿岸のみに生息する海洋性の松である。この樹皮から得られる抽出物には40種類を超えるフラボノイドが含まれており、半世紀以上も前からヨーロッパを中心に抗酸化物質として活用されてきた。現在は一般にピクノジェノールフラバンジェノール(いずれも商標)という名称で世界的に知られている。

 樹皮が生薬となる例は多々あるが、これは16世紀のフランスの探検家J・カルチェの率いる探検隊がカナダを探索中に壊血病にかかった時、現地の先住民に松の樹液を飲むことを教えられて助かったという記録が発見のきっかけとなった。1940年代にケベック大学(カナダ)の客員教授をしていたJ・マスケリエがこの記録を知り、帰仏後も樹皮成分(フラボノイド)の研究を続ける中で、生理活性の高いこのフランス海岸松エキス(以下、海岸松エキス)に辿り着いたのである。以後、フランス厚生相が血管の保護効果がある医薬品として認可すると共に、90年代に入ってからはアメリカでも研究が進み、サプリメント市場に登録するや爆発的な評判を得た。

 海岸松エキスには数多くのフラボノイドが含まれているが、なかでも注目度が高いのはプロアントシアニジンで、通常のフラボノイドに比べて水への溶解性が高いため、抗酸化物質として即効的に働くという特徴がある。また、多数の有機酸からなる機能成分が連携して高いSOD活性を示すことが明らかにされている。このことから、海岸松エキスは毛細血管を保護し、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞・静脈瘤などを予防する効果のあることが明らかにされ、多くの研究者によって報告されている。

 海岸松エキスにはこのほか、月経困難症・生理痛・子宮内膜症・冷え性・更年期障害など、女性特有の疾患を劇的に改善する効果のあることが日本の医師や研究者によって明らかにされている。1998年に金沢市で開催された日本補完・代替医療学会の第1回学術集会で、医師の小濱隆文(恵寿総合病院)、神奈川大学医学部の鈴木信孝らによって海岸松エキス(ピクノジェノール)による886例の臨床予備治験の結果が報告され医療関係者の注目を集めた。小濱はその翌年も発表を行い、子宮内膜症患者に対してピクノジェノールの投与により重度の月経痛と骨盤痛が軽減したこと、また子宮内膜症以外の原因による月経痛・骨盤痛も軽減されたことを報告している。また、藤野武彦(九州大学)らはサントリー健康科学研究所との共同研究により、フラバンジェノールに血液の流れをよくする作用のあることを確認し、学会発表を行っている(第44回日本人間ドック学会)。

木曜日, 12月 29, 2011

たらの葉茶

○たらの葉茶

 日本各地に自生するウコギ科の落葉低木タラの木(楤木)は、春先にそのほろ苦い若芽がタラの芽として天ぷらや和え物に用いられるのでよく知られているが、日本では古くから樹皮、根皮を糖尿病腎臓病・胃腸病の民間薬として用い、中国でも根皮を強壮・神経衰弱に、韓国では咳止め・糖尿日・ガンなどに用いてきた歴史がある。

 タラの木の葉を茶材に用いることに着目したのは長村洋一(藤田保健衛生大学)らの研究グループである。長村らは、種子島ではタラの木の樹皮を糖尿病の特効薬のごとく見なして繁用しているという事実を知り、糖尿病ラットに抽出エキスを飲ませて血糖値効果を確認、その葉を採取して洗浄・乾燥した得た茶材(タラの葉茶)にも同じ効果があることを知り、さらに実験を重ねて、その抽出エキスに肝細胞へのグルコースの取り込みを促進するインスリンと同様の作用のあることを見出した。また、この作用の原因物質を調べて斉藤節生(城西大学薬学部)は11種類の新しいトリテルペン系のサポニン(タラの芽のほろ苦さの原因物質もサポニン)を分析し、その化学構造のいくつかが肝臓病の薬とされるグリチルリチンによく似ていることを発見しており、長村の四塩化炭素で肝障害を起こさせたラットによってGOTの抑制率を調べ、タラの葉サポニンがグリチルリチンと比較しても遜色のない治療効果を見せることを確認している。さらに、薬物性の肝炎だけでなく、ウイルス性肝炎にも有効であることが明らかにされた。ウイルス性肝炎が進行するときには、本来ウイルスを攻撃すべき免疫力(抗体)が逆に感染者自身の肝細胞を破壊するという厄介な障害が起こる場合があるが、タラの葉サポニンはその自滅的な破壊作用を抑制することを突き止めている。

水曜日, 12月 28, 2011

シジュウム茶

○シジュウム茶

 シジュウム(psidium)はフトモモ科の落葉小高木で、南米(部汁、ペルー、コスタリカなど)が原産。古くからインカ帝国のインディオによって栽培され、甘酸っぱい果実は食用のほか皮膚病の薬にも使われていた。その葉を干して粉末にしたシジュウム茶は、見かけは黄色みの強い粉茶に似ており、少々抵抗感のある薬臭さが気になるが、飲んでみると苦味も後味の悪さもない。

 シジュウムの葉にはミネラル(鉄、カルシウム、リン、マグネシウムなど)やビタミンC、タンニンが含有されているが、抽出エキスにはアレルギー性症状を引き起こす原因となるヒスタミン遊離を非常に強く抑制する作用があるため、花粉症に効果的であるほか、入浴剤として使用するとアトピー性皮膚炎、湿疹、老人性皮膚掻痒症などによるかゆみを抑える作用がある。北中進(日大薬学部)が行ったラットへのエキス投与実験ではこの作用を立証するデータが得られたという。また、馬場俊一(日大駿河台病院)はあらゆるタイプのアレルギーに有効があると発表している。

 シジュウム属には50~70種の植物が数えられ、グァバ茶として知られるグァバもその一種で、その性状や成分には非常に似通ったものがあることは興味深い。

火曜日, 12月 27, 2011

水溶性ビタミン(4)

ビオチン

 ネズミの成長因子として卵黄から発見された物質で、ビタミンB複合体、ビタミンH、補酵素Rとも呼ばれる。細胞の成長やDNA合成、血糖値の維持に作用し、毛髪や皮膚の健康維持、貧血予防に有効とされる。食品ではレバー、イワシなどの魚介類、ピーナツ、クルミなどに多い。「食事摂取基準05年版」では、ビオチンの目安量は1日あたり成人男女とも45ug(妊婦は+2ug、授乳婦は+4ug)としている。また保健機能食品制度では、ビオチンを1日摂取量あたり14~500ug含む食品にはビオチンの機能を表示することができる。

ビタミンC

 抗壊血病の因子として発見されたビタミン。物質名はアスコルビン酸。ストレスや疲労、風邪、喫煙の害、高コレステロールなどさまざまな場面でビタミンCを補給することによって症状が軽くなったり、予防する働きを持つことがわかっている。また、発ガン物質であるニトロソアミンの生成を阻止する働きがある。ビタミンCはアルカリ性の環境や加熱によって分解されやすく、また空気や酸化酵素によって酸化され、効果が低下する。食品では新鮮な野菜、果物、緑茶、イモ類に多く含まれ、動物性食品や穀物には少ない。「食事摂取基準05年版」では、ビタミンCの推奨量は1日あたり成人男女とも100mg(妊婦は+10mg、授乳婦は+50mg)としている。また保健機能食品制度では、ビタミンCを1日摂取量あたり24~1000mg含む食品にはビタミンCの機能を表示することができる。また、健康食品については(財)日本健康栄養食品協会による「ビタミンC含有食品規格基準」(1986年8月公示、93年7月一部改正)がある。

月曜日, 12月 26, 2011

水溶性ビタミン(3)

※ナイアシン

 抗ペラグラ因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はニコチン酸。酸化還元補酵素の構成成分として重要。糖質や脂質の代謝に作用し、血行改善、脳神経の働きを高める効果がある。体内ではアミノ酸のトリプトファンから合成されるが、トリプトファンの含有が少ないトウモロコシを常食としている中南米では、欠乏症としてペラグラ(顔や手足の発赤や浮腫、皮膚炎、下痢などを伴う全身性疾患)が見られる。食品では魚肉、レバー、酵母、小麦胚芽、米糠、緑黄色野菜、豆類、穀物に比較的多く含まれている。「食品摂取基準05年版」では、ナイアシンの推奨量は男性は18~49歳で15mgNE(ナイアシン当量)、50~69歳で14mgNE、女性は18~49歳で12mgNE、50~69歳で11mgNE、上限量は男女とも100mg(ニコチン酸として)としている。また保健機能食品制度では、ナイアシンを1日摂取量あたり3.3~60mg含む食品にはナイアシンの機能を表示することができる。

※パントテン酸

 鶏のペラグラ治療因子として発見されたビタミンB2複合体。エネルギーの産生に関わる補酵素A(CoA)の主要成分。多くの食品に広く含まれているので欠乏症(皮膚炎、手足の痺れ、灼熱足症候群、知覚障害など)は少ないが、妊産婦や授乳婦は多く摂る必要がある。食品では酵母、レバー、牛乳、魚肉、大豆(納豆)などに多く含まれている。「食品摂取基準05年版」では、パントテン酸の目安量は1日あたり成人男性6mg、女性で5mg(妊婦は+1mg、授乳婦は+4mg)としている。また保健機能食品制度では、パントテン酸を1日摂取量あたり1.65~30mg含む食品にはパントテン酸の機能を表示することができる。

金曜日, 12月 23, 2011

水溶性ビタミン(2)

※ビタミンB6

 ネズミの皮膚炎症を改善する因子として発見された水溶性ビタミンで、ピリドキシン、ピリドキソール、ピリドキサミンなど同様の作用を持つ化合物の総称。アミノ酸の代謝に関与する補酵素として働く。また、近年は抗アレルギー作用など免疫機能の正常化に役立つことが指摘されている。通常の食生活では欠乏する例は少ないが、不足すると皮膚炎、多発性神経炎、動脈硬化性血管障害、貧血、口内炎、舌炎、食欲不振などの原因になる。ビタミンB6はどの食品にも比較的多く含まれているが、特にマグロやサンマなどの魚類、肉類、レバー、鶏卵に多い。「食品摂取基準05年版」では、ビタミンB6の推奨料は成人男性で1.4mg、成人女性で1.2mg、上限量は男女共に60mgとしている。また保健機能食品制度では、ビタミンB6を1日摂取量あたり0.3~10mg含む食品にはビタミンB6の機能を表示することができる。

ビタミンB12

 抗悪性貧血因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はシアノコバラミン。タンパク質や核酸の体内合成に欠かせないビタミン。細胞のエネルギー獲得にも有効である。葉酸と共に造血に関わるため赤いビタミンとも呼ばれ、肝機能強化にも有効である。欠乏すると貧血になり、息切れ、めまいのほか、神経系に作用して各種神経炎、神経痛、うつ状態、記憶力の減退などの原因ともなる。含有量が多い食品は魚肉、牡蠣、あさり、帆立貝などの貝類、レバー、牛肉、卵、牛乳などだが、よほど偏食しない限り日常の食生活で不足することはない。「食品摂取基準05年版」では、ビタミンB12の推奨量は1日あたり成人男女とも2.4ugとしている。また保健機能食品制度では、ビタミンB12を0.6~60ug含む食品にはビタミンB12の機能を表示することができる。

木曜日, 12月 22, 2011

水溶性ビタミン(1)

※ビタミンB1

 抗脚気因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はチアミン。1910年、農芸化学者の鈴木梅太郎が米糠より単離に成功し、オリザニンと名づけた。糖質代謝に関与する補酵素として働き、成長促進、心臓の機能の安定、中枢神経や末梢神経の正常化、消化液の分泌、食欲増進などに影響する。B1を多く含む食品は酵母や米糠であるが、通常の食品として豚肉、うなぎ、カツオ、鶏レバー、大豆、落花生、ニンニクなどに含有量が多い。「食事摂取基準05年版」では、ビタミンB1の推奨量は1日当たり男性は18~49歳で1.4mg、50~69歳で1.3mg、女性は18~49歳で1.1mg、50~69歳で1mgとしている。また保険機能食品制度では、ビタミンB1を1日摂取量あたり0.3~25mg含む食品にはビタミンB1の機能を表示することができる。

※ビタミンB2

 動物の成長因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はリボフラビン。細胞の再生などに関与するフラビン酵素の働きを助け、特に脂質の代謝を促し、発育や粘膜保護に役立つ。体内で過酸化脂質の生成を防止する作用もある。B2が不足すると脂質をエネルギーに利用しにくくなって発育不良をきたすほか、咽頭桶口内炎を経て口角炎、舌炎、角膜炎、肛門や陰部の皮膚炎、脂蝋性皮膚炎、白内障などに冒されやすくなる。B2を多く含む食品は酵母、八つ目ウナギ、レバー(豚・牛・鶏)、ウナギ、サバ、サンマ、牛乳、納豆アーモンドなど。「食事摂取基準05年版」では、ビタミンB2の推奨量は1日あたり男性は18~49歳で1.6mき、50~69歳で1.4mg、女性は18~69歳で1.2mgとしている。また保険機能食品制度では、ビタミンB2を1日摂取量あたり0.33~12mg含む食品にはビタミンB2の機能を表示することができる。

水曜日, 12月 21, 2011

その他の肉類

鹿肉

 フランスではジビエ(野禽獣)料理の代表的素材の一つ。日本ではもみじ肉とも呼ばれ、古くから食されてきたが、今日では一般家庭で食べる機会は少ない。現在、食用として出回っているのはニュージーランドなどから輸入された飼育鹿か、エゾシカなど冬季の解禁時に狩猟した野生鹿である。

 栄養的には高タンパク・低脂肪でエネルギーは110kcal(生肉100gあたり)と低め。他の食肉に比べて鉄や銅などのミネラルを多く含んでいるのが特徴である。肉色は赤く、あっさりとした味である。鍋物や煮込み、ローストにする。

兎肉

 家畜化されたイエウサギと野性のノウサギがいるが、食肉用として市販されているのはイエウサギの肉である。鶏肉に似た肉質でやわらかく、脂肪は約6%と少ない。ビタミンB12の含有量が生肉100g中5.6ugと、他の肉類に比べ2~5倍程度含まれるのが特徴である。

 兎肉はパテやテリーヌ、パエリア、煮込み料理、焼き物など、西洋料理ではよく使われる食材である。日本でも昔は貴重なタンパク源として食べられており、現在では地方によってウサギ汁や煮付け、味噌煮、たたき、鍋などの伝統料理がある。最近ではまた、アレルギー対策食品として注目されている。

※鴨肉

 鴨肉は鳥肉類の中でもっとも美味といわれている。食用として流通しているのはマガモ、アヒル、アイガモの3種類である。マガモは全長60cmほどで、雄は頭部が光沢のある暗緑色、首に白い輪があり、”あおくび”ともいわれる。雌は全体が地味な褐色である。日本には9月から11月にかけて渡来してくる冬鳥で、猟鳥に指定されている。

 アヒルは野生のマガモを改良した家禽で、チェリーバレー種、バルバリー種、北京種などがある。アイガモ(合鴨)は野生のマガモとアヒルの交配種である。鴨料理では多くの場合、アイガモが使われている。

 鴨肉は鶏肉に比べてビタミンB1・B2が多く含まれている。B1は鶏肉(若鶏胸肉)が0.07mgに対してアイガモは0.24mg、B2は鶏肉0.09mgに対してアイガモ0.35mg(いずれも生肉100g中)である。また、鴨肉の脂肪は牛肉や豚肉に比べて不飽和脂肪酸の割合が高い。東洋医学では微熱を治め、むくみを解消するとしている。

七面鳥

 英名はターキー(turkey)。わが国では日常的に食べられることはほとんどないが、欧米では、詰め物をしてローストした七面鳥はクリスマスや感謝祭に欠かせない料理である。重さが約5kgと大型の鳥で、雌より雄の方が美味しいとされている。鳥肉類の中では最も脂質が少なく(生肉100g中0.7g)、味は淡白である。食物アレルギーを起こしにくい食材とされている。

火曜日, 12月 20, 2011

色々な魚介類(3)

※しらうお(白魚)

 シラウオ科の小型魚で日本全国の内湾に棲み、1年で全長約10cmの成魚となり、3~5月頃、川を遡って産卵する。肉質のあぶらぴれがあり、頭に”葵の紋様があるとして江戸時代には特別に管理されたという。脂肪が少ないので(生100g中2g)、吸い物、寿司ネタ寿司ネタ、酢の物、茶碗蒸し、卵とじ、唐揚げ、天ぷら、素干しなどに調理される。クセがなく美味で、いずれにしても丸ごと食べるのでカルシウム(同150mg)の補給によい。

 名前の似ているシロウオ(素魚)はハゼ科の魚で、シラウオとは別種。シロウオは全長約5cm、体は半透明で鱗・側線はなく、本州から九州の海岸近くに棲み、春先に川に遡って産卵する。生きている時は半透明で美味だが、死ぬと真っ白に変色して味が落ちる。生きたまま食べる”踊り食い”は福岡市室見川の名物料理になっている。

※あゆ(鮎)

 日本全国の清流に生息する淡水魚。稚魚は川を下って海で冬を越し、春に再び川に遡って成魚(全長20~30cm)となり、秋に産卵する。川底の石についている藍藻類を食べて成長するため、6月頃のものはアユ特有の香気が強くなり美味である。そのため香魚とも呼ばれる。天然のものは年々少なくなり、近年は養殖アユが多く出回っている。

 アユはビタミンAを多く含んでおり、特に養殖アユの内臓に多い。焼いた養殖アユ100g中、身には480ug(天然は120ug)、内臓には6000ug(同2000ug)含まれている。また、魚には珍しく少量ながらビタミンCを含んでおり、こちらは天然アユに多い(焼き100g中、身に2mg、内臓に5mg)。このほか天然・養殖共にカルシウム、鉄、ビタミンE・B12・Dが比較的多く含まれている。

 アユは内臓も一緒に食べられるので、季節感あふれる香りを楽しみながらビタミン・ミネラルの補給ができる初夏の魚である。なお、内蔵や卵巣を塩辛にしたものは「うるか」と呼ばれ、酒の肴として珍重されている。

※たこ(蛸)

 食用とされるマダコ、テナガタコ、イイダコ、ミズダコなどが代表種である。いずれも水分が80%を超えるが、タンパク質は意外に多く、マダコで16.4g、イイダコで14.6g(いずれも生100g中)を含む。脂質、糖質はほとんどない。かつてタコやイカはコレステロールが多い食品として敬遠される嫌いがあったが、タウリンという含有流アミノ酸に脚光が当たったことで、タコもまた健康食材として出番を迎えることとなった。この、”準必須アミノ酸”ともいわれるタウリンには血中コレステロールを減少させる作用があるため、動脈硬化や心筋梗塞の予防につながる。

※おきあみ(沖醤蝦)

 オキアミ科の甲殻類の総称で、大型プランクトンの一種。海生で主として南氷洋に生息し、ヒゲクジラ類の餌となるほか、養殖魚の餌(年間1万数千トンが充てられる)にされてきたオキアミであるが、近年は健康素材として見直されてきている。食用にされるのは全長3mのナンキョクオキアミで、カルシウム360mg、銅が2.3mg、鉄が0.8mg(いずれも生100g中)と多く、リンやカリウムなどにも富む。加えてエビ類には見られないビタミンA(レチノール)が180ugと優れており、ビタミンB1・B2・C、ナイアシンを含むことでも見逃せないものがある。このほか血圧を下げるのに有効なペプチド類も含むので、動脈硬化や心筋梗塞などの予防にもつながる。オキアミは佃煮や塩辛にされるが、乾燥させた干しアミは大根おろしと和え物にしたり、野菜と共にかき揚げにするとかなりの量を摂ることができる。

月曜日, 12月 19, 2011

色々な魚介類(2)

※てんぐさ(天草)

 テングサは紅藻類のテングサ科の総称で、マクサ、オニクサ、オオブサ、キヌクサ、ヒラクサなど多くの種類があるが、一般にはマクサのことをいう。インド洋や大西洋など広く世界に分布している。わが国では黒潮が流れる海域に育ち、春から秋に掛けて採取し、若いものはそのままサラダにして食べられるが、大半は寒天やところてんの原料になる。心太は、テングサの粘質物を煮溶かして冷却して固めたもので、1000年前には既につくられていたとされる。夏の味覚として親しまれ、細く天突きしたものを醤油、酢、辛子などで食べる。

※かます(魳)

 カマス科の海産魚で全長50~60cmにもなるが、市場に出ているのは20cmくらいのものが多い。アオカマスとアカカマスがあり、いずれも本州の中部以南に分布する。アオカマスは水っぽいので”水カマス”ともいわれ、干物として多く出回っている。アカカマスは塩焼きに適しており、秋から冬にかけてが旬である。アカカマスといっても皮が赤いわけではなく、多少赤みを帯びた白身魚である。味は淡白ではあるが美味で、乳幼児や病人、高齢者などに喜ばれる食材である。白身魚にしてはカルシウムが多い。骨は硬いが取りやすいので、身をほぐして病人食や離乳食などにも適している。

※たちうお(太刀魚)

 タチウオ科の海産魚で、銀白色で刀の太刀のように見えるのでこの名がある。また”立ち魚”に通じ、早朝や夕方、海上に浮いて頭を上にして立ち泳ぎすることでも知られている。全長約1.5m、体は平たくて細長く、背びれが尾部まで続き、鱗がない。本州中部以南の暖海に分布し、夏に浅海で産卵する。体表の銀粉は模造真珠の材料に利用されている。

 タチウオは白身でほどよい脂があり、関西地方で好まれるが、近年は関東でも切り身で出回っている。脂質が多い(生100g中20.9g)割りにさっぱりしているので、子供から高齢者まで調理の仕方で摂りやすい食材といえよう。シーズンは夏から秋であるが、塩焼き、味噌漬け、立田揚げのほか、ムニエルにしてレモンを添えると洋風の一品になる。ビタミンB1・B2・D、亜鉛や銅などのミネラルもほどよく含むので活力を補うのに役立ち、口内炎・味覚障害・前立腺肥大・骨粗しょう症にも効果がある。

土曜日, 12月 17, 2011

色々な魚介類(1)

わかめ(若布)

 若布は褐藻類のチガイソ科に属する海藻で、日本のいたる所で採れるが、なかでもナルトワカメが有名である。ワカメは幼いものの方が味がよいといわれ、地方によっては新芽を干した板ワカメを炭火であぶって食べるところもある。ワカメはミネラル類を豊富に含んでいる。素干し100g中にカルシウムが780mg、リン350mg、鉄2.6mgとバランスがよい。反面、タンパク質や脂肪は少ないので、ミネラル補給の美容食として人気がある。最近は味噌汁の具や酢の物だけでなく、サラダにも取り入れられるなど料理法も多様になってきている。

のり(海苔)

 一般にノリと呼んでいるが正確にはアマノリ(甘海苔)で、紅藻類ウシケノリ科アマノリ属の総称である。アサクサノリ、スサビノリ、ウップルイノリ、マルバアマノリなどの種類がある。わが国で最も食べられているのはアサクサノリだが、最近は天然のものは姿を消し、ほとんどが養殖か韓国からの輸入物である。

 アマノリの栄養成分の特徴は、他の海藻類に比べてビタミン類が多いことである。特にビタミンB12は、干しノリ100g中77.6ugと豊富である。ビタミンB12は造血に関係するビタミンでレバーや肉類や動物性食品に多く含まれているが、これらの食品が苦手な人はノリを多めに摂ることを心掛けるといいだろう。このほかビタミンCが100g中160mgと海藻中トップで、これはレモン(同100mg)を遥かに凌ぐ数値である。アマノリは韓国や中国はもとより、北ヨーロッパ、スコットランド、カナダなどでも産し、ことは青野菜が不足する極北地近くではビタミン供給源として盛んに利用されている。

※青のり

 青ノリは緑藻類のアオサ科アオノリ属の総称で、青苔、阿乎乃利などの字も宛てる。日本各地の沿岸に分布し、やや深い所の岩の上や、他の海藻に付着して育つ。スジアオノリ、ヒラアオノリ、ボウアオノリ、ウスバアオノリなどの種類がある。寒い時期のものが良質で12~2月頃までが旬。栄養成分はミネラルが多く、ことにカルシウムは素干し100g中720mgで、アマノリの5倍以上含む。リンの含有量が380mgなのでバランスもよい。青ノリは炙ると芳香があるところから、菓子やお好み焼き、焼きソバをはじめ用途も多様である。

金曜日, 12月 16, 2011

その他のキノコ類

※ホンシメジ

 キシメジ科のシメジ属の食用キノコで、学名はLyophyllum shimeji。ダイコクシメジ、ギンシメジ、ネズなどの別名がある。昔は天然ものが多く出回っていたが、最近はほとんど見かけなくなった。今日”ホンシメジ”として市場に出ているのはブナシメジやヒラタケがほとんどである。ブナシメジはキシメジ科シロタモギタケ属、ヒラタケはヒラタケ科のキノコでそれぞれ異なる種類である。

 ホンシメジは赤松の混ざった雑木林などに5~10本が束生したり、ときに輪を描いて群生する。傘ははじめは半球体だが、やがて丸山形を経て扁平に開くと直径10cmくらいになる。柄は12~13cmにもなって根元が太く、肉は白く緻密で”匂いマツタケ、味シメジ”といわれる通り美味である。味のよさの秘密は、旨味成分となるアミノ酸の含有量による。グルタミン酸やアスパラギン酸が非常に多く含まれ、日本人に不足しやすいリジンも多い。アミノ酸以外ではナイアシンが豊富なのも特徴で、強い日差しに当たると湿疹ができる太陽アレルギーの人はナイアシン不足の可能性があるので好適な食材といえる。ビタミンB2も多く、100g中0.5mgと生シイタケの2.6倍に達する。B2は脂肪の代謝を浴するので肥満を防ぐ、湿疹や吹き出物にも有効である。

※なめこ(滑子)

 モエギダケ科の食用キノコで、学名はPholiota nameko。晩秋、広葉樹の中でも主にブナの倒木や枯れ幹、切り株などに群生する。柄は根元で数本が癒合し、傘ははじめ半球体だが、やがて丸山形を経て扁平へと転じ、直径は最大10cmにもなる。淡い黄褐色で粘性が強い。シイタケと並び栽培キノコの代表格で、市販品のほとんどは小さな半球形の人工栽培品である。特有のぬめりはペクチン質(多糖類)で動脈硬化を防ぐとされている。タンパク質、ビタミンB1・B2、カリウム、リンの含有量が比較的多い。国立がんセンターの熱水抽出物による抗腫瘍活性試験(池川哲郎、1968年)では、マツタケに次いで86.5%という高い阻止率を示した。

※マッシュルーム

 ハラタケ科の食用キノコで、学名はAgaricus bisporus。ツクリタケ、セイヨウマツタケ、シャンピニオン(仏名)ともいう。世界各地で栽培されており、白色種、クリーム種、ブラウン種などがある。一般には白色種とブラウン種が出回っている。タンパク質の含有量が多く100g中2.9g、また、ビタミンB1・0.06mg、B2・0.29mg、ナイアシン3mgと多く、ことにB2は5~6個で1日の必要量の1/8を満たし、口内炎・口角炎・肌荒れ・指先のささくれ・フケなどの予防に役立つ。缶詰より生のほうがもちろん食効がある。このほかマッシュルームには消臭作用のあることが認められており、そのエキスは消臭素材として利用されている。

 マッシュルームの旨味は他のキノコと異なり、グルタミン酸のほか必須アミノ酸が多いためで、生でも食べられるキノコとしてサラダなどに適している。切り口がすぐ変色するが酢水に浸せば防げる。

※ひらたけ(平茸)

 ヒラタケ科の食用キノコで、学名はPleurotus ostreatus。オイスターマッシュルーム、アワビタケとも呼ばれている。温帯地域に分布し、秋に広葉樹の枯れ木や切り株に重なり合って生える。ホンシメジに似ているところからシメジの名で売られることもある。ヒラタケはホンシメジよりもタンパク質が多く、100g中3.3g含む。又ビタミンB1・B2共に0.4mg、ナイアシンが10.7mgとキノコ類ではトップクラスである。そのほかカリウム340mgを含んでいる。ビタミンB1が不足すると脚気・多発性神経炎・便秘・むくみ・心臓肥大などを招く。またB2の欠乏は口内炎・口角炎・角膜炎などのほか生長にも悪影響を及ぼす。ナイアシンはペラグラ・口舌炎・胃腸病・皮膚炎などに関与する。

木曜日, 12月 15, 2011

色々な野菜類(8)

※みつば

 セリ科の多年草で、東アジアの湿地などに自生している。日本では江戸時代から野菜として栽培するようになった。現在は、促成栽培された切りミツバ、水栽培で葉柄10~15cmで収穫する糸ミツバ、畑で栽培して根付きのまま出荷される根ミツバの3種類がある。ビタミン、ミネラルは糸ミツバと根ミツバの方が多いが、カリウムだけは根ミツバが一番である。カロテンは糸ミツバで3200ug(100g中)と豊富だ。

 ミツバは香りを賞味するのが種で大量には食べない野菜なので、それ自体の栄養価を問題にするよりは、ミツバを添えて美味しく食べることに注意を向けるべきであろう。従って食効の第一は香りと色が誘う食欲増進効果で、茶わん蒸しや卵とじには欠かせないし、病後の味気ないお粥もミツバを加えるだけで素晴らしい料理に一変する。そのほか頭をスッキリさせ神経の興奮を鎮めて安眠を誘うほか、健脳効果もあるといわれている。

パセリ

 セリ科の二年草で地中海沿岸が原産。和名はオランダセリ。明治初期にわが国に渡来した当時は特殊な西洋野菜として扱われ、以来、洋食の飾り物として使い捨てられてしまう傾向が続いたことは、パセリの持つ栄養成分からみて誠に残念といわざるを得ない。

 欧米では古くから、あの特有の香りと鮮明な緑色が”食を進める”働きを持つとして尊重されてきたハーブであるが、事実、ビタミンが豊富で、とりわけカロテンは100g中7400ugと他の野菜よりも飛び抜けて多く、ビタミンCの120mgも野菜・果物中のトップクラスである。また、鉄は7.5mgと小松菜の2.5倍含まれ、極めて優れた緑黄色野菜なのである。もちろん他の野菜のように大量に食べられるものではないが、さまざまな料理に付け合せることで毎日少しずつでも摂れば貧血の改善、血中コレステロール値の低下などにも効用が期待できる。食効としてはアピオールという精油成分が腸内の有害細菌の繁殖を抑えるほか、食中毒の防止・口臭防止、食欲増進効果がある。

※せり(芹)

 日本原産で1000年以上前から栽培されてきたセリ科の野菜。春の七草の筆頭に数えられる香り高い野草でもある。初春から初夏までが旬で、野ゼリや田ゼリなどの名で店頭を賑わす。また近年は、栽培した背丈の高い水ゼリも食卓を彩るようになった。

 特有の香りはミリスチン、カンフェンなどの精油成分によるもので、発汗・解熱作用があり、病後の内熱(体温は平熱でも内臓諸器官が熱っぽい状態にあること)を取るのに有効だとされる。また健胃効果もあり、その香りにあずかって食欲が増進する。ほかに血圧を下げ、血の道を通し、酒毒を消し、黄疸にも効用があるとされている。これには茹でたものを食べてもよいが、新鮮なセリをすり鉢で擂り潰し、水を加えて裏漉しした汁をひと煮立ちさせて飲む。また、陰干ししたものを煎じるのもよい。

水曜日, 12月 14, 2011

色々な野菜類(7)

モロヘイヤ

 中近東やアフリカを主産地とするシナノキ科の一年草で、エジプトでは古くから幼茎や葉を摘んで食用とされてきた。モロヘイヤはエジプト名である。

 日本でも近年、健康野菜の見直し気運の中で注目を集め、沖縄県などで栽培されるようになった。多少ヌメリがあってわずかにほろ苦さがあるが、若い芽は柔らかくクセのがないので生葉のままでも食べられるし、お浸し、和え物、サラダ、酢の物にも合い、味噌汁の具やスープにもよい。さらに天ぷらにしても美味しいばかりか、人参を上回るカロテンを効率よく摂るには油を使った調理が最善である。

 その栄養価を見ると、可食部100g中(カッコ内は人参の場合)、カルシウム260mg(28mg)、リン110mg(25mg)、鉄1mg(0.2mg)、カリウム530mg(280mg)、カロテン10000ug(9100ug)、ビタミンB1・0.18mg(0.05mg)、B2・0.42mg(0.04mg)、C65mg(4mg)と、いずれも野菜類ではトップクラスの圧倒的な数字が並んでいる。

※エシャロット

 ユリ科の二年草で、ラッキョウに近縁の西洋野菜。鱗茎をおろしたり刻んで香味料として使われる。エシャロットは仏名。

 わが国で酒のつまみとして生食されるエシャロットはラッキョウを土寄せして葉鞘部まで軟白にして若採りしたもの。エシェレット、エシャラッキョウ、エシャなどとも称して出回っている。ラッキョウのように漬け物にはせず、鱗茎と葉鞘の軟白部を味噌につけて食べたり、細かく刻んで、洋風料理にも用いられる。エシャロットは疲労回復、抗炎症作用、風邪の予防などによい。なお、同じくエシャロットと呼ばれる小型の分球性タマネギがあって混同されやすいが、これはラッキョウのエシャロットとは別物である。

※みょうが(茗荷)

 日本原産のショウガ科の多年草。夏秋に根茎から花穂を出し淡黄色の花が咲く。花穂と若い茎を食用にするが、我が国以外では食習慣のない野菜である。栄養的には特筆すべきものはないが、独特の香りとシャキシャキとした歯ざわりが食欲増進につながる。昔から不眠症や生理不順に効くとされ、また抗菌作用があるので口内炎や風邪などにもよいといわれている。

 夏場は素麺などの薬味にしたり、削り節と和えて酒の肴の一品にしたり、卵とじや味噌田楽、天ぷらなど調理法がいろいろあり、捨てがたい季節の食材である。ミョウガの葉は、と同じく腐敗を防ぐ目的で、おにぎりなどを包むのに利用されてきた。

火曜日, 12月 13, 2011

色々な野菜類(6)

※菜花

 アブラナ科の一、二年草で、ナタネ、ナノハナ、ナタネナの別名がある。春に黄色の小花を房状につけ、2~3月ごろには九州や房総半島など温暖な土地で栽培したものが出回る。食用には黄色い花が蕾のものがよく、葉も茎も柔らかくクセがない。さっと茹でてお浸しや辛し和えにするほか、軽い塩漬けなども美味である。春らしい色彩から、ひな祭りの頃にはうってつけの一品になる。種子からは菜種油を採り、油かすは肥料になる。

 菜花の栄養価は高く、ホウレン草に比べてカロテンこそ約半分(100g中2200ug)だが、カルシウムは3倍、ビタミンCは生では4倍近くにもなる。そのほかビタミンB1、B2、ナイアシンなどをバランスよく含み、食物繊維も豊富だ。浅漬けや和え物は栄養素を失わずに食膳を飾るので積極的に食べるようにしたい食材である。若々しい肌を保ち、ストレス・自律神経失調症・便秘・風邪の予防などに有効である。

※かぶ(蕪)

 アブラナ科の一、二年草で、白菜やツケナ類と同種である。日本最古の野菜の一つとされ、春の七草のスズナとしても知られている。食用の主体は白い根部分であるが、アクが少ないので一夜漬けや糠漬けにすれば、ビタミンC(生100g中19mg)も増加する(皮むき塩漬けで21mg、皮つき糠漬けで28mg)。デンプン類の消化を助けるジアスターゼやアミラーゼなどの酵素が含まれているので、カブのおろし汁は食べ過ぎや胸やけ、胃炎などに効く。また胃腸を温める効用があり、この場合はみぞれ煮や粕煮など熱を加えた調理法が適している。このほか咳を鎮め、声がれを治すともいわれている。

人参

 セリ科の一、二年草で、緑黄色野菜の代表である。人参の赤い色素カロテンは体内でビタミンAに変わり、皮膚の細胞を強くし粘膜を丈夫にして病気への抵抗力をつける。また夜盲症や口角炎を防ぐ働きがあることもよく知られている。人参のカロテン量は生100g中に9100ug(760ugRE)と、ホウレン草の2倍以上である。ただビタミンB1は0.05mg、Cは4mgというよにそれほど大きい数字ではないので、無理に生ジュースなどの形で摂ることにこだわる必要はない。

 カロテンは脂溶性で熱に強いので、適量の油を使って食べやすいように調理して十分な量を摂るようにしたい。ニンジンには補血効果があり、貧血を改善し冷え性や低血圧を治すと共に、疲労回復、体力づくりにも有効である。また最近の研究では肺ガンや膵臓ガンなど、悪性腫瘍を抑制する効能のあることが報告されており、これは人参に含まれるβ-カロテンの働きによると考えられている。

月曜日, 12月 12, 2011

色々な野菜類(5)

※ズッキーニ

 ウリ科つる性一年草で、外観はキュウリに似ているがカボチャ(ペポカボチャ)の仲間である。キュウリよりも一回り大きく、皮には光沢があり、濃緑色のものと黄色のものがある。カボチャは塾果を食べるが、ズッキーニは実をつけて3~4日で収穫した未熟果を食べる。ヨーロッパ、特に南フランスからイタリアにかけて普及し、その後アメリカにも広まった。

 栄養的にはカロチンとビタミンCが豊富で、糖質が少なく(100g中2.8g)、カロリーは低い(14kcal)。ズッキーニは生食は不向きで、熱を加えて調理するのが基本。歯ごたえ、味ともにナスに似ている。南フランス料理やイタリア料理に欠かせない野菜で、スライスしてバターで炒めて食べたり、油で炒めてから煮物の材料とする。中をくり抜いて詰め物にしても良い。最近は、花ごと採取した花ズッキーニも料理素材として注目されている。花の中にキノコやトマト、鶏肉、魚介類などを詰めて蒸し、バターソースをかけて食べる。

※さやいんげん(莢隠元)

 マメ科インゲン属の一品種で、未成熟の若いインゲンを莢ごと食べることからサヤインゲンという。丸莢のドジョウインゲン、細莢のサーベルインゲン、平莢のモロッコインゲンなどがある。

 サヤインゲンの栄養成分はバランスよく、乾燥種に欠けているビタミンCのほか、カロテンも多い(100g中590ug)。カロテンは油を使うと吸収がよくなるので天ぷらや炒め物などにするとよい。視力回復や皮膚のかさつきを改善する効果もある。また莢の部分にはインスリンの産生に関与する亜鉛を多く含むので、糖尿病によいといわれる。

※グリーンピース

 エンドウ豆の野菜種で、4~5月ごろ、未熟の内に収穫される。缶詰冷凍品で一年中手に入るが、生のものは春から初夏にしか市場に出ない。莢から出して生の実と炊き込んだ豆ご飯は、春を感じさせる旬のご馳走のひとつである。

 グリーンピースは発芽途上を収穫するのでタンパク質や糖質、ビタミンB群をはじめ、ビタミンCやカロテン、葉緑素などが豊富に含まれている。ビタミンB群はB1・B2・B6・ビオチン、コリンを多く含み、体の代謝を円滑にし疲労物質を分解するのに役立っている。カロテンも100g420ugとかなり多いので、貧血・冷え性・便秘・肌荒れなどに効果的である。食物繊維も100g中7.7gと、枝豆の5gを上回っている。

土曜日, 12月 10, 2011

色々な野菜類(4)

※スプラウト

 植物の新芽を英語でスプラウトというが、最近、各種野菜の新芽が健康野菜としてスーパーの店頭に並びだした。ブロッコリーやマスタードなどの新芽があり、目新しさも手伝ってちょっとしたブームにもなっている。

 スプラウトの人気の発端は、米国のジョンズ・ポプキンズ大学の研究者らがブロッコリーの新芽に優れた抗ガン作用があると発表したことによる。発芽3日目の新芽には、成長したブロッコリーの20~50倍のサルフォラフェインという抗ガン成分があるという。また、スプラウト類は全般に植物性タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維に富み、ローファット・ノンコレステロールというのが健康志向の強い米国人に受けたようだ。

 スプラウト野菜はブロッコリーのほか、小豆や蕎麦クローバー、レンズ豆、ラディッシュ、ヒマワリ、レッドキャベツ、マスタード、クレス、小麦など種類が多彩だ。サンドイッチの具やサラダ、スープの材料など食べ方の自由度も高い。過程でも栽培できるようにスプラウトの栽培キットも販売されている。

※トマピー

 トマピーは、トマトに似た扁平な形をした新種のパプリカで、鮮やかな濃い赤色をし、肉厚で甘味があり、ピーマンのように苦味や臭みがないために食べやすい野菜である。

 栄養面では特にビタミンCとカロテンに富む。100g中にビタミンCが200mg含まれ、同じ仲間の青ピーマンの2.6倍、赤ピーマンと比べても1.2倍ある。カロテンは100g中1900ugで、青ピーマンの4.8倍、赤ピーマンの1.7倍になる。このほかクセがないのでサラダなど生で食べても美味しい。油との相性もよく、天ぷらやスープ類、ピザなどにもよい。トマピーに含まれるカプサイシンに発ガンプロモータ活性抑制作用のあることが第56回日本癌学会総会(1997年)で発表されている。

※ししとう(獅子唐)

 ナス科トウガラシの甘味種でピーマンと同系種。南米が原産。栽培には温度を要するが、流通の発達で初夏から秋頃まで出回っている。ビタミン類を多く含み、とりわけカロテンは青と黄のピーマンを上回る。油で炒めるとカロテンが生きるが、この時あまり加熱し過ぎると栄養価も色も風味も損なってしまうので注意したい。天ぷらにしてさっと揚げると彩りも美しく食欲も増す。

 食物繊維もピーマンより多い。またカリウムも多く含むので塩分過多による高血圧の予防にもなる。シシトウを選ぶときは緑が濃く、細く小さめのものがよい。つやがあり、匂いの強いほうが良質である。

金曜日, 12月 09, 2011

色々な野菜類(3)

※つるな(蔓菜)

 わが国の太平洋岸の砂地に自生しており、レタスやサラダ菜と同じくチシャの仲間であることから浜ヂシャの呼び名もある。レタスはキク科だが、ツルナはツルナ属に属する多肉質の葉を持つつる性植物である。日本ではあまり食用にされなかったが、世界各国、特に欧米では好まれ、広く栽培されている。

※にら(韮)

 ニラはネギやニンニクと同じユリ科の植物で、この仲間のように強い臭気を持ったものは葷菜と呼ばれ、いずれもその精力増強効果が尊ばれてきた。古事記に記載のあるほど、中国からの渡来は古いが、当時は薬草として扱われていたようでミラ、コミラなどと呼ばれた。その後、いかにもスタミナがつく強精野菜らしく起陽草という別名を与えられている。

 ビタミンA・B群を多く含むが、特徴的なのは臭気成分のアリシンで、この物質には抗菌性と共にビタミンB1の腸内での吸収利用率を高める働きがある。また、体内に吸収されて自律神経を刺激しエネルギー代謝を高め、内蔵を温めて消化を促進する作用がある。そのため冷え性の人は体が温まってくる。

 ニラの種子を乾燥したものを漢方薬では韮子といい、強壮・強精のほか、頻尿・下痢などに用い、根と鱗茎は韮菜と呼んで胃炎・鼻血はもとより、解毒などにも処方している。

※こごみ(屈)

 シダ科の植物でクサソテツともいう。東北地方で雪解けと共に収穫される代表的な山菜。本州から九州まで分布し、木漏れ日の当たる山地などでも自生しているものをよく見かける。ソテツに似た姿で4~5月に根株からワラビのような新葉が伸び、その葉が巻き込んだ形の柔らかいものを収穫する。

 ワラビよりやわらかくクセが少ないので食べやすい。お浸しやゴマ和え、天ぷらなどが一般的である。カロテン、ビタミンB群・C・Kなどのほか、ミネラルもたっぷり含んでいる。カロテン(100gあたり1200ug)は赤ピーマンなみで、ビタミンCの抗酸化活性を守り、皮膚粘膜の再生と維持に役立つ。また消化器や呼吸器の感染症への抵抗力を高めるなどの効用がある。加えて食物繊維がワラビよりも多く、便秘の改善なども期待できる。

水曜日, 12月 07, 2011

色々な野菜類(2)

○おかひじき(尾鹿尾菜)

 シベリア、中国、日本のを原産地とするアカザ科の一年草で、わが国では各地の海岸の砂地に自生しており古くから食用にされてきた。明治以降、目新しい野菜が紹介されるにつれて市場を追われるようになったが、近年、健康野菜として見直されて復活した。

 海藻のヒジキを緑色にしたような姿をしている。若い茎葉を熱湯で4~5分間茹でて、お浸し、辛し和え、酢味噌などで食べるが、シャキッとして歯ざわりが好まれている。カロテンが多いので、油で効率よい活用が期待できる天ぷら料理にも適している。

 栄養的には生100gにつきカロテン3300ug(280ugRE)とホウレン草なみに高いのが特徴で、カルシウムは約3倍の150mgも含む。ビタミンB類は少ないが、Cは21mgと枝豆なみにある。これらの成分と葉緑素の相乗効果で皮膚が丈夫になって風邪をひきにくくなるほか、ビタミンAの働きで気管や胃腸の粘膜の上皮組織に抵抗力がつき、ガンの発生を抑えることが期待できる。

※エンサイ

 ヒルガオ科の一年生つる性草木で、中国名は蕹菜(ヨウサイ)、空芯菜。花がアサガオに似ているので朝顔菜という別名もある。東南アジアでは水生野菜として広く栽培されており、茎葉が広東料理などに使われている。最近はわが国でも栽培されるようになり、6~9月にはスーパーなどにも並んでいる。

 空芯菜という名が示すように、茎は中空で水に浮く。アクのない若い茎葉は味が淡白なので煮物、お浸し、油炒め、汁の実などに使われる。栄養的にはカロテンが特に多く、生100g中に4300ug(360ugRE)含まれている。またビタミンB1や鉄も多い。夏場の健康維持に活躍が期待される新顔の野菜である。

※春菊

 キク科の一年草でヨーロッパの地中海沿岸が原産地であるが、欧米人は食べる習慣を持たず、もっぱら東洋人の食材となっている。日本へは中国を経由して戦国時代に伝来したとも、また江戸初期に招来されたともいわれ、特に西日本を中心に菊菜の名で親しまれてきた。

 特有の香りを好まない人もいるが、日本の緑黄色野菜としてはホウレン草、小松菜と並ぶ代表格で、栄養的にもカロテンが4500ug(380ugRE)もあり、ホウレン草の4200ugを凌いでいる。カロテンは脂溶性なので、茹でたり加熱しても失われることが少ない点も見逃せない。カルシウム120mgという数字は牛乳110mgを上回る数字である。造血に必要な鉄分も1.7mgとホウレン草なみである。

 春菊は料理法次第で100gなど簡単に食べられるから、他の成分も考え合わせるとミネラルの補給源として好適であるというる。天ぷらにして油と共に摂るとカロテンの吸収がよく、特有のクセも気にならなくなる。春菊の濃い緑色は豊富なクロロフィル(葉緑素)のためであるが、クロロフィルには血中コレステロールを下げる働きがある。

※エンダイブ

 キク科キクニガナ属の一、二年草で、同属のチコリと野菜のキクニガナの交配でできたとされ、菊チシャ、苦チシャともいう。エンダイブは英名で、仏名はシコレだが、チコリと混同されやすいためフランスではエスカロールと呼ばれることも多い。日本で普通見られるのは葉に切れ込みの多いものだが、広葉のもの(スカロール)もある。

 春播き、秋播きがあり、いずれね歯切れがよく少し苦味があってサラダに適する。サニーレタスに近い栄養素を含み、カロテンは100g中1700ug(140ugRE)とサラダ菜には及ばないが、亜鉛は0.4mgとサラダ菜の2倍含み、食物繊維も多い。便秘を防ぎ、新陳代謝を盛んにして高血圧の予防に有効である。ドレッシングなど油と共に食べることでビタミンAの吸収を良くし、さっと炒めると量的にも多く摂取することができる。

火曜日, 12月 06, 2011

色々な野菜類(1)

※からしな(芥子菜)

 アブラナ科の一年草。葉カラシナ類、タカナ(高菜)類、茎タカナ類、根ガラシ類など多種類ある。この内、葉が食用とされるのは葉カラシナとタカナ類で漬け物にして食べられることが多い。葉タカナの肥大した茎を漬け物にしたのが、中国料理で使われる搾菜(ザーサイ)である。

 カラシナやタカナには葉カラシナ、山潮、大葉タカナ、カツオ菜などがあるが、いずれも特有の辛味がある。この辛味成分はシニグリンという配糖体である。栄養成分としてはカロテン、ビタミンC、鉄分を多く含む。

 カラシナ、タカナの漬け物はチャーハンやラーメンに入れても美味い。ピリッとした辛味が食欲をそそぎ、暑い夏の季節の一品として最適である。

※なずな(薺)

 アブラナ科の越年草で、道端や土手など日当たりのよい場所に生えている。果実が三味線の撥に似ているのでバチグサやペンペン草ともいわれる。春の七草の一つで七草粥の材料になる。お浸しや和え物にして食べる。カロテンの含有量が多く、100g中5200ug(430ugRE)と野菜類の中でも特に多い。また、ビタミンC(110mg)はレモン以上であり、ビタミンK(330ug)や葉酸(180ug)も多い。ミネラル類ではカルシウムが多く含まれる。

※ルッコラ

 ヨーロッパの地中海沿岸地方を中心に分布するアブラナ科の一年草。ルッコラは伊名、英名はロケット、和名はキバナスズシロという。繁殖力が旺盛なためアジアやアメリカなどで帰化植物になっている。ギリシャ時代には腎臓病や消化器疾患の治療に使われたという記録もある。

 大根のようなロゼット状の根生葉が広がり、開花期が近づくと茎を伸ばして草丈50cm~1mくらいになる。夏に咲く花は淡黄色または白色で紫の筋があり、大根や菜の花によく似ている。

 葉にはゴマとコショウをミックスさせたような独特の香りと辛味、苦味があり、若い葉を摘んでサラダなどに使う。ロケットサラダなどともいわれ、最近わが国でも食べられるようになった。花も生食でき、種はマスタードの代用になる。

※つるむらさき

 ツルムラサキ科のつる性一年草で、別名バセラ、フジナ、オチアオイ。かつては観葉植物として赤紫色の葉や茎を楽しんだが、近年、その栄養価が見直され食用として家庭菜園などで手軽に栽培されるようになった。もともと東南アジアの特に暑い国では古くから健康野菜として食べられていたようである。旬は夏。蔓が巻きついて1~5mにも伸びるが、蔓先から15cmくらいまでの茎と若葉が好んで食されれる。

 色の濃い葉が栄養素の宝庫で、花や実も天ぷらやサラダに適している。味はやや埃くさい感じだが、ホウレン草のようなアクはなく、茹でてゴマやカラシで和えると埃くささも気にならない。葉の栄養成分はカルシウム150mg、カリウム210mg、カロテン300ug(250ugRE)、ビタミンC41mg(いずれも100g中)などだが、ほかにリン、ナトリウム、鉄、亜鉛などのミネラルを含む。カルシウムが多いので骨折や虫歯予防のほか、神経を鎮めて蕁麻疹などにも効く。

月曜日, 12月 05, 2011

DHA

DHA

 ドコサヘキサエン酸。炭素数22個、二重結合6ヵ所のn-3系不飽和脂肪酸。融点はマイナス78℃。イワシやタラ、ニシンなどの魚油に多く含まれる。ヒトでは脳細胞の尖端のニューロンという神経突起に多く分布しており、情報伝達や記憶の保持に関与している。そのため”頭のよくなる脂肪酸”として話題になった。

 DHAはEPAと同様、血液中の中性脂肪やコレステロール濃度の低下作用、血小板凝集能の抑制作用などが認められている。特に血液の凝集を抑制して虚血性心疾患を予防し、、動脈硬化の原因となるLDLコレステロールが血管に付着するのを防ぐ働きがEPAよりも強い。健康食品素材としても広く使われており、(財)日本健康栄養食品協会による「ドコサヘキサエン酸(DHA)含有生成魚油加工食品規格基準」(1986年8月公示、96年6月一部改正)がある。

土曜日, 12月 03, 2011

EPA

EPA

 かつてはエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid)と呼ばれていたが、近年、イコサペンタエン酸に改められた。ただし略称のEPAはそのまま使われている。炭素数20個、二重結合5ヵ所のn-3系不飽和脂肪酸で、融点はマイナス54℃。イワシやタラなどの魚油に多く含まれる。血液中の中性脂肪やコレステロール濃度の低下作用、血小板凝集能の抑制作用等が認められている。

 EPAが注目されるようになったのは、1970年代にデンマーク・オールボア病院のダイアベルグがイヌイット(エスキモー人)を対象に行った疫学的調査の結果によってである。それによると、魚やアザラシを主食とするイヌイットは肉食中心にデンマーク人に比べて動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの生活習慣病が大幅に少なかった。例えばデンマーク人の死亡原因が心筋梗塞だけで40%以上も占められているのに、イヌイットは発症率が高い60歳以上だけを対象にしても3.6%でしかなかった。その原因がイヌイットの食生活にあると考えて研究の結果、魚魚肉に含まれるEPAの有効作用にあるとわかったのである。

 最近の研究では、横山光宏(神戸大学)日本人約2万人を対象にした大規模臨床試験(5年間の追跡調査)で、EPA薬の摂取により心臓病のリスクが19%減少したという試験結果を発表している(2005年、米国心臓協会学術集会)。EPAは健康食品素材としても広く使われており、(財)日本健康栄養食品協会による「イコサペンタエン酸(EPA)含有精製魚油加工食品規格基準」(1986年6月一部改正)がある。日本水産は中性脂肪が気になる人向けの飲料としてEPAとDHAを関与成分として初のトクホ「イマーク」を販売している。

木曜日, 12月 01, 2011

魚介タンパク質

○魚介タンパク質

 魚介肉の筋肉(食用部位)には15~25%程度のタンパク質が含まれている。乳タンパク質に匹敵する高い消化吸収率が特徴で、アミノ酸スコアも魚類ではほとんどが100である。アミノ酸組成はグルタミン酸、アスパラギン酸、リジンなどが多い。魚介タンパク質には、筋原繊維タンパク質のミオシン、アクチン、トロポニン、トロポミオシン、筋形質タンパク質のミオグロビン、筋基質タンパク質のコラーゲンなどがある。このほか、魚類の白子の精子核内に存在する塩基性タンパク質のプロタミンなどがある。

※プロタミン

 塩基性の単純タンパク質で、アルギニンを多く含み、魚類の白子の精子核内で核酸と結合している。プロタミンはトリプシン(タンパク質分解酵素)の作用を受けて分解される前に、食品由来の油滴と結合し、リパーゼによる脂肪分解を阻止して脂肪の腸管吸収を低下させる作用がある。また、プロタミンから生じたアルギニンは血管内皮細胞にあるNO(酸化窒素)合成酵素の基質になり、NOを産生して血管を拡張し抹消循環を改善する。魚類プロタミン配合の健康食品がある。