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木曜日, 6月 25, 2015

石蒜

○石蒜(せきそう)

 日本の本州以南、中国の温帯に分布するヒガンバナ科の多年草ヒガンバナ(Lycorisradiata)の鱗茎を用いる。9月下旬、秋の彼岸のころに鮮やかな赤い花をつけるので彼岸花と呼ばれる。赤い花を意味するマンジュシャゲ(曼珠沙華)の別名もあるが、本来、サンスクリット語のマンジューシャカは別の植物の名前である。

 有毒植物ではあるが、鱗茎をすりつぶして水にさらし、毒抜きをすると食べられるため救荒食物として利用されてきた。日本には縄文時代に食用として中国から渡来したと考えられている。また鱗茎をすりつぶして海苔状にしたものは防虫の目的で衣類や襖の下張りなどに用いられた。

 ヒガンバナにはリコリン、ホモリコリン、ガランタミンなどのアルカロイドが含まれ、誤って食べると強い苦味があり、嘔吐、下痢、流涎、神経麻痺などが起こる。これらのアルカロイドには鎮痛、降圧、催吐、去痰作用がある。リコリンはアメーバ赤痢や喀痰の治療薬、ガランタミンは小児麻痺後遺症、アルツハイマー病の治療薬としても知られている。

 石蒜には去痰・利尿・解毒・催吐る効能があるが、日本でも中国でも専ら民間療法として用いられている。一般に催吐の目的で内服させる以外は外用し、鱗茎をすりおろしたもので肩こりや乳腺炎、乳房痛などの湿布薬とする。また腎炎などによる浮腫に石蒜を単独あるいは唐胡麻(蓖麻子)と混ぜたものをすりおろして足裏の涌泉穴に塗布する方法がよく知られている。

 ちなみに欧米ではヒガンバナ科のスノードロップ(Galanthusworonowill)やスノーフレーク(Leucojumaestivum)から抽出されたガランタミンがアルツハイマー病の治療薬として用いられている。