○現之証拠(げんのしょうこ)
日本各地、台湾、朝鮮半島、中国などに分布するフウロソウ科の多年草ゲンノショウコ(Geranium thunbergii)の全草を用いる。日本の代表的な民間薬であるが、中国では知られていない。
江戸時代初期から民間で用いられ、ゲンノショウコという名は下痢にはっきりとした効果があることを意味し、イシャイラズやイシャナカセといった別名もある。かつて中国の牛扁がゲンノショウコとされたこともあるが、牛扁はキンポウゲ科の別の植物である。ちなみに津田玄仙の牛扁丸はゲンノショウコの黒焼きを原料にしたものである。
中国の救荒本草にあるフウロソウ科のキクバフウロ(Erodium stephanianum)がゲンノショウコに似ていることから混同され、これが民間薬として利用されるきっかけになったと考えられている。中国には類似植物としてミツバフウロ(G.wilfordii)として薬草があるが、止瀉の効能はあまり知られていない。日本のゲンノショウコを中国ではネパール老鸛草と称している。
葉には多量のタンニンが含まれ、その約2/3はゲラニインである。健胃・整腸・止瀉作用があり、あらゆる下痢に応用されるが、とくに赤痢など裏急後重を伴う下痢に効果がある。下痢止めを目的とするときは、タンニン類がよく抽出されるように半量になるまで煎じる。短く煎じると緩や下剤になり、便秘にも応用される。胃・十二指腸潰瘍などには決明子と配合する。医療用の整腸薬としてベルベリンと配合されている(フェロベリンA)。そのほか民間では強壮、保健のお茶として飲まれたり、煎じた液が腫れ物や霜やけに外用されている。