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水曜日, 12月 14, 2005

シルク(絹)について

○シルク(絹)

 シルク(絹)が優れた天然素材であることはことを俟たないが、本来の繊維としての需要は、このところ他の素材に追われて低迷を続けてきた。しかし、あまりにも伝統的に完璧な繊維素材であったために、タンパク質の宝庫であることは分かりながら、絹を繊維以外の分野で新たに復活させようという発想は、なかなか生まれるものではなかった。この壁をクリアして、絹の機能性食品化に道を開いたのは平林潔(信州大学教授)らである。

 蚕が作る絹糸は、二条の絹フィブロン(絹糸フィブロイン)という水溶性の繊維タンパク質を、セリシンという水溶性のタンパク質が被覆する形をとっている。全体の80%を占めるこの絹フィブロンは、分子量が30万以上もある高分子であるため、食べても消化吸収することはできない。しかし、希薄な炭酸水素ナトリウム溶液で外側のセリシンを取り除いたあと、アクチナーゼなどの酵素、もしくは塩化カルシウム、酸による加水分解などを行うことによって、絹フィブロインは飛躍的に分子量の小さいアミノ酸やオリゴペプチド(10個未満程度のアミノ酸が連なった比較的小さいタンパク質)にまで分解され、爽やかな甘みを有する水溶液、または粉末が得られる。これによって消化率は90%台にまで向上するため、機能性成分としての食効が期待されるのである。

 絹フィブロインは、バリン、フェニルアラニン、スレオニン、イソロイシン、ロイシン、リジン、トリプトファン、メチオニンという必須アミノ酸(重量比合計7.7%)のほか、グリシンの重量比35.5%を筆頭に、アラニン、セリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、シスチン、ブロリン、ヒスチジンなど計18種のアミノ酸からなるが、食べるシルクはこれら貴重なアミノ酸の集合体ということになる。

 従来のアミノ酸研究によって、例えばアラニンのアルコール代謝促進(悪酔いの防止効果)、グリシンやセリンの血中コレステロール低下、チロシンの痴呆症予防効果などが報告されているが、平林らは水溶性シルク粉末を用いたラットの実験によって、いずれの効果も確認している。

 とりわけ注目すべきは、生活習慣病の中でも圧倒的に患者または予備軍の多い糖尿病に対し、シルク粉末投与が血中のインスリン濃度をほぼ倍増させる(例えば5.33mg/kg→11.43mg/kg)ことが実証されたことであろう。これは絹ペプチドのアミノ酸構造が、細胞壁のインスリンレセプターの構造に似ているため、速やかに吸収され、その活性を高めるためと考えられている。

 また、アトピー性皮膚炎への効果は、シルク粉末の主要な機能成分であるオリゴペプチドが、過敏な自己免疫作用を抑制するためと見られる。さらに、痴呆症の予防効果は、ドーパミンなど脳内伝達物質の調整作用によると考えられている。いずれの働きも現代人特有の肉体的悩みを癒す働きを持つものであり、繊維の王者・絹にふさわしい見事な復活として歓迎されることであろう。

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