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日曜日, 3月 02, 2008

エスピニェイラ・サンタ

〇エスピニェイラ・サンタ

 わが国で漢方薬に使われる生薬は200種ほどだが、「ブラジル産薬用植物事典」(橋本梧郎著)には2168種も収載されている。そのような生薬の宝庫の国から送り届けられてきたのがエスピニェイラ・サンタ(意味は聖女の棘)という薬用植物である。現地で別名「神の棘」「救命の木」などと呼ばれるこの植物はブラジル(特に南部地方)に自生するニシシギ科の灌木で、互生する葉は我が国のヒイラギに似て鋭い棘をもつ。古くから原住民の間で、、胸やけや吐き気を伴う胃酸過多や腸内異常発酵の防止、利尿や緩下剤、虚弱体質の改善などの目的で愛用されてきた。

 近年の研究では内臓の腫れ、肝炎、肝機能障害、膀胱炎、静脈瘤、子宮筋腫、子宮ガンなどへの効果が見いだされているが、なによりも顕著なのは即効性を持つ鎮痛薬としての働きである。向精神薬への関心が高いといわれる現地においてもこのエスピニェイラ・サンタの鎮痛作用はモルヒネやコカインに匹敵するとまで評価されており、胃痙攣、頭痛、神経痛などに葉の煎じ液を飲むだけで劇的な効果を示すという。さらに特徴的なのは単に麻酔性の鎮痛効果ではなく、痛みの原因となる潰瘍などの疾患を修復する作用を併せ持つことである。従って、切り傷、可能、皮膚病などに葉や樹皮の粉末を外用することもお行われてきた。

 ペインクリニック(痛みの療法)への関心が日毎に高まりを見せるわが国にとって、上記のような薬効は座視できるものではない。最近のわが国での実験によれば、ラットを拘束ゲージに入れて浸水を浸すことで生ずるストレス性胃潰瘍に対し、エスピニェイラ・サンタ(以下、ESと省略)のエタノール抽出エキス(500mg/kg)経口投与群は未投与群に比して43.4%も潰瘍発生を抑えた。さらに、ラットに塩酸とエタノールを強制的に投与して胃潰瘍を起こさせた潰瘍モデルに対して、ES抽出エキスの使用性画分、水溶性画分はいずれも潰瘍治療薬であるセトラキサートと同等、またはそれ以上の潰瘍発生抑制効果を示し、その抗潰瘍活性成分がβ-シトステロール及びその誘導体であることも突き止められている。

 また、マウスに刺激性の強いホルマリンを注射すると、最初は直接的な痛みのため(この痛みを一相反応といい、モルヒネで抑えられる)、次いで炎症による痛み(これは二相反応で、アスピリンで抑制できる)のために患部を舐めるしぐさを繰り返すが、この一、二相反応に対してES(とくに脂溶性画分)が優れた鎮痛効果を示すことが確認されており、その活性本体の有効成分がフリーデラン-3-β-オールという物質であることが解明されている。