○商陸(しょうりく)
中国を原産とし日本でも野生化しているヤマゴボウ科の大型多年草ヤマゴボウ(Phytolacca esculenta)の根を用いる。ヨウシュヤマゴボウ(P.americana)のほうがよく見られるが、この根は美商陸という。
ヤマゴボウの葉は食用にされるが、多量に食べないほうがよい。漬け物で「やまごぼう(山牛蒡)」と称されているものは、キク科のモリアザミなどの根を漬けたもので、ヤマゴボウとはまったく別の植物である。
根には多量の硝酸カリウムや有毒な配糖体のフィトラッカトキシン(フィトラッカサポニン)が含まれる。硝酸カリウムには利尿作用があり、古くから利尿薬として利用されてきた。しかし、有毒成分のフィトラッカトキシンのため、食べると嘔吐や下痢が出現し、さらには中枢神経麻痺から痙攣、意識障害が生じ、ひどければ呼吸障害や心臓麻痺により死亡することもある。
漢方では逐遂・消種の効能があり、水腫、腹水、脚気、腫れ物などに用いる。逐水とは瀉下と利尿作用で腹水や胸水、浮腫などを治療することである。
全身性浮腫を伴う喘息症状には木通・沢瀉などと配合する(疏鑿飲子)。肝硬変などによる腹水に牡蠣・沢瀉などと配合する(牡蠣沢瀉散)。ただし毒性が強いため、慎重に投与する必要がある。
外用として新鮮な商陸に塩を加えてつきつぶしたものを頑固な腫れ物に用いる。アメリカではヨウシュヤマゴボウの根を扁桃炎や耳下腺炎、乳腺炎、水腫などの治療に用いていたといわれる。