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水曜日, 9月 14, 2011

脂肪酸

 脂肪酸は脂質を構成する基本成分で、8~22個程度の炭素が鎖状に結合して末端にカルボキシ基を持つ化合物(カルボン酸)である。炭素の数や結合の仕方の違いによって性質や機能の異なるさまざまな脂肪酸が存在する。脂肪酸は2炭素単位で生合成されるため、ほとんどの脂肪酸の炭素数は偶数個である。炭素数が6個以下のものを短鎖脂肪酸、8~12個のものを中鎖脂肪酸、14個以上のものを長鎖脂肪酸という。また、炭素数18個以上のものをまとめて高級脂肪酸ともいう。脂肪酸の構造は炭素(C)が鎖状につながり、それぞれの炭素に2個の水素(H)が結合した形をしているが、なかには炭素同士が二重に結合する箇所を持つものがある。二重結合を持たない脂肪酸を飽和脂肪酸、持つものを不飽和脂肪酸といい、性質や機能が大きく異なっている。

○飽和脂肪酸

 炭素原子は他の原子と結びつく手が4本、水素原子には1本ある。飽和脂肪酸では炭素原子は前後の炭素原子と手を結び合って、余った残り2本の手で上下に1個ずつの水素と手を結び合い、すべて炭素原子に水素が結合している。飽和では”水素をもうこれ以上受け入れることができない”という意味である。

 飽和脂肪酸は融点が高いため、常温で固体である。融点は炭素数が増えるに従って高くなる。ヒトよりも体温の高い牛や豚などの体内では液状になるものもあるが、ヒトの体内では凝固しやすく、血液の粘度が増して血行を悪くさせる。飽和脂肪酸を多く摂りすぎると、血中のコレステロールや中性脂肪が増えて動脈硬化の原因となる。「日本人の食事摂取基準・2005年度版」では、飽和脂肪酸エネルギー比率(総エネルギーに占める飽和脂肪酸の割合)の目標値を男女とも4.5~7%未満としている。

 飽和脂肪酸にはカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などがある。これらは動物性脂肪やパーム油、ヤシ油などに含まれているが、含有量が多いのはパルミチン酸とステアリン酸である。また、ヒトの体内でも合成される。

○不飽和脂肪酸

 炭素と炭素が2本の手でつながることを二重結合といい、この結合を持つ脂肪酸を不飽和脂肪酸という。二重結合が一つの単価不飽和脂肪酸、2つ以上の多価不飽和脂肪酸がある。不飽和脂肪酸はいずれも炭素数が18個以上の長鎖脂肪酸だが、二重結合があるために融点が低く、常温で液状である。不飽和脂肪酸の融点は二重結合の数が増えるに従って低くなる。オリーブオイルに含まれるオレイン酸(炭素数18、二重結合数1)の融点は14℃だが、魚油に含まれるDHA(炭素数22、二重結合数6)の融点はマイナス78℃である。

 飽和脂肪酸は血漿コレステロール濃度を上昇させるが、不飽和脂肪酸は低下させる作用を持つ。また、生理活性物質(プロスタグランジン、ロイコトリエン)の合成材料になるものもあり、生体にとって重要な物質である。その反面、不飽和脂肪酸は酸化されやすいため過酸化脂質を生成して動脈硬化や発ガン、老化の原因物質となる指摘もある。