○山葵根(さんきこん)
北海道から九州に分布するアブラナ科の多年草ワサビ(Wasabia japonica)の根茎を用いる。山間の谷川に群生し、古くから長野や静岡県をはじめ日本各地の渓流で栽培されている。
ワサビの学名をワサビ・ヤポニカというように、日本特産の植物であり、葉が葵に似ているため山葵(さんさ)と称している。ワサビは日本料理に不可欠な香辛料で、独特の風味を有している。刺身、寿司、茶漬け、そば、わさび漬けなどと広く用いられている。
市販のワサビ粉はおもに欧州原産のワサビダイコン(Armoracia rustucana)の根の粉末を葉緑素で着色したものである。英語ではワサビダイコンをホースラディッシュ(horseradish)というのに対して、ワサビはジャパニーズホースラディッシュという。
ワサビの辛味成分は配糖体のシニグリンであるが、酵素のミロシナーゼによって加水分解されて刺激性のあるアリルイソチオシアナートを生じて辛味を呈する。ワサビには食欲増進、防腐・殺菌作用があり、芳香性健胃薬とされる。民間では搾り汁を魚肉や鶏肉の中毒の予防に用いたり、すりおろしたものを布に薄く延ばして患部に貼り、リウマチや神経痛の治療に用いる。