○鉛(なまり)
鉛は重くて柔らかい金属で展性・延性に富み、ローマ時代には水道管や浴場、食器や壺として使用されていた。おもな原鉱石は方鉛鉱(PbS)であり、そのほか白鉛鉱(PbCO3)や硫酸鉛鉱(PbSO4)などもある。
生薬に用いる鉛には金属の黒鉛のほか、鉛の化合物として一酸化鉛(PbO)の密陀僧、四三酸化鉛(Pb3O4)の鉛丹(別名:光明丹)、酢酸鉛の鉛霜(別名:鉛糖)、塩基性炭酸鉛(2PbCO3・Pb(OH)2)の鉛粉(別名:鉛白)などがある。
鉛中毒は急性の場合は急性胃腸炎の症状を呈するが、ほとんどが慢性であり、腹痛や口内炎、脱力感が現れ、皮膚が蒼白になり、歯茎が鉛緑といわれる灰白色に変化する。また鉛毒性痛風や鉛毒性脳炎なども知られている。
漢方では性味は甘・寒、有毒で、鎮逆・堕痰・殺虫・解毒の効能がある。腎不納気による喘息や胸に痰が詰まった状態、気の上衝、腹が冷えて痛むときなどに用いられる黒錫丹が有名である。しかし、毒性があるので近年は用いられない。