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火曜日, 4月 10, 2012

海狗腎

○海狗腎(かいくじん)

 アシカ科のオットセイ(Callorhinus ursinus)もしくはアザラシ科のゴマフアザラシ(Phoca vitulina)の雄の陰茎と睾丸を乾燥したものを用いる。オットセイやゴマフアザラシは、北太平洋北部、ベーリング海、オホークツ海に分布し、冬季には日本海や銚子沖まで来遊する。かつていずれも乱獲のため絶滅が危惧されたが、各国の保護政策により頭数はかなり回復している。

 膃肭臍とは本来、膃肭獣(おっとじゅう)の臍(ペニス)という意味であり、日本では生薬の名がオットセイという動物名になっているるこれらの動物は一夫多妻であり1頭の雄が数十頭の雌を占有し、ハーレムを作ることでよく知られている。近年、オットセイの骨格筋の分解産物であるカロペプタイドに抹消血管を拡張する効果があることが報告されている。薬材は30cm前後、直径1~2cmの棒状をした茶褐色のペニスに2個の睾丸がついている。

 漢方では温腎・補陽の効能があり、全身疲労、精力減退、インポテンツ、足腰の萎弱などに用いる。日本にも海狗腎の配合された滋養・強壮薬が中国から輸入されている(至宝三鞭丸海馬補腎丸)。日本の津軽藩の秘薬といわれた一粒金丹には、アイヌ人が狩猟したオットセイのペニス(膃肭臍)が配合されていた。