スポンサーリンク

月曜日, 7月 27, 2015

仙鶴草

○仙鶴草(せんかくそう)

 日本全土およびアジアに分布しているバラ科の多年草キンミズヒキ(Agrimoniapilosa)の全草を用いる。細長い穂に黄色い花が咲く様子が「水引」に似ているためキンミズヒキの名がある。なおミズヒキ(Polygonumfiliforme)はタデ科であり、花のつきかたは似ているが赤い花をつける。キンミズヒキは春先に柔らかい若葉と若芽を摘み、おひたしや和え物にして食べることができる。

 キンミズヒキの根にはアグリモノリドやタンニンのアグリモニインなどが含まれ、止血、抗菌、抗炎症作用がある。漢方でも止血・健胃・強壮の効能があり、鼻出血、吐血、血便、血尿、性器出血など全身の出血や下痢、倦怠感、精力減退に応用する。

 民間では下痢止めや口内炎、歯肉炎などに用いる。湿疹やかぶれには煎液を冷やして患部を冷湿布する。中国では実験的に癌の抑制効果が認められ、癌治療の臨床研究も報告されている。ヨーロッパでは近縁種のアグリモニー(Agrimony)を止血薬として消化性潰瘍などに用いるほか、胆石や肝硬変、痛風などにも利用している。

金曜日, 7月 24, 2015

川烏頭

○川烏頭(せんうず)

 キンポウゲ科の多年草トリカブト類の母根をいい、とくに四川省などの栽培品種であるカラトリカブト(Aconitumcarmichaeli)の母根のことを川烏頭という。川烏頭とは四川省で産する烏頭という意味で、専ら栽培品種のものをいい、野生種の草烏頭(そううず)と区別して扱われている。

 現在、日本ではトリカブト類の塊根はすべて附子として扱われているが、本来は母根と烏頭、子根を附子と呼ぶ。ただし中国では減毒処理したものを附子、ほとんど減毒処理をしていないものを烏頭として区別することが多い。とくに日本では中国産からトリカブトの子根でも減毒処理をせずにそのまま乾燥したものを川烏頭と称している。

 ところで金匱要略に収載されている烏頭湯の中に川烏という生薬名がみられるが、宋代以前にトリカブトが栽培されていたという証拠はなく、野生種のものと考えられている。川烏頭と草烏頭の効能はほぼ同じであるが、草烏頭のほうが総アルカロイド量が多くて鎮痛作用や毒性が強いとされている。

木曜日, 7月 23, 2015

セネガ

○セネガ

 北アメリカの山林に自生しているヒメハギ科の多年草セネガ(Polygalasenega)およびヒロハセネガ(P.var.latifolia)の根を用いる。日本では明治以降に北海道でヒロハセネガが栽培され、日本産セネガの名でヨーロッパにも輸出されている。

 セネガは古くからアメリカインデイアンのセネガ属が毒蛇に咬まれたときに治療に用いた民間薬で、そのためセネガとかスネイク・ルートという名がある。北米産セネガには北部セネガと南部セネガ根の2種類があるが、北部セネガはセネガ、南部セネガはヒロハセネガといわれている。

 セネガの根にはトリテルペンサポニンであるセネギンⅠ~Ⅳやサリチル酸メチルが含まれ、セネガサポニンは気道の粘膜を刺激して分泌を促進する。なおセネギンⅢ・Ⅳは遠志の成分であるオンジサポニンB・Aと同一である。

 セネガはセネガシロップやセネガ・キキョウ水などの製剤にして感冒・気管支炎、喘息などの鎮咳・去痰薬として用いられている。咽頭の炎症による痛みや嗄声には甘草・桔梗などと配合する(龍角散)。

火曜日, 7月 21, 2015

接骨木

○接骨木(せっこつぼく)

 日本の各地に自生するスイカズラ科の落葉低木ニワトコ(Sambucussieboldiana)の茎を接骨木という。中国産の接骨木は同属植物のトウニワトコ(S.williamsii)の茎枝を用いている。ニワトコ属は古くから世界各地で薬用とされ、ヨーロッパではセイヨウニワトコ(S.nigra)は薬用ハーブ(エルダー:Elder)として有名である。

 接骨木のいわれはニワトコの枝を黒焼きにして、うどん粉と酢を加えて練ったものを骨折した患部に塗布し、副木を当てておくという治療をしていたことによる。

 ニワトコの成分には硝酸カリウムやトリテルペノイドのアミリンなどが含まれ、利尿、鎮痛作用が認められている。セイヨウニワトコの花や葉には青酸配糖体サンブニグリンが知られているが、日本のニワトコには含まれていない。

 漢方では去風湿・活血・止痛の効能があり、関節や筋肉の疼痛、打撲傷、骨折、浮腫などに内服する。民間では、ニワトコの枝や葉を煮だしたものを風呂に入れて神経痛やリウマチ、外傷の治療に用いたり、接骨木の粉末と黄柏末を合わせてねったものを打撲した患部に塗布する。また小鳥の病気にニワトコの煎じた汁が効果があるといわれている。

月曜日, 7月 20, 2015

石斛

○石斛(せっこく)

 日本の本州、四国、九州、朝鮮半島南部、中国などに分布するラン科の多年草セッコク(Dendrobiummoniliforme)およびその同属植物の茎を用いる。セッコクには「スクナヒコグスリ(少名彦薬)」とか「イワグスリ(岩薬)」などという和名があり、日本でも古くから薬用にされたと考えられている。中国ではコウキセッコク(D.nobile)、ホンセッコク(D.officinale)などが用いられている。

 セッコク属は熱帯アジアの高山帯に多くの種類がみられ、樹上や岩石などに着生している。生薬では鉄皮石斛がもっとも良品とされ、高貴薬として扱われている。

 石斛には粘液質やデンドロビン、ノビロビンなどが含まれ、デンドロビンには解熱、鎮痛作用が、煎液には胃液分泌や胃腸蠕動の促進作用が認められている。官報では清熱・滋陰・生津・強壮の効能があり、発熱時の口渇や糖尿病、陰虚による発熱、食欲減退、インポテンツなどに用いる。

 石斛は生(鮮石斛)で用いたほうが清熱・生津の効力は強く、熱性疾患による口渇には鮮石斛、一般的な陰虚による口渇には乾石斛を用いる。また慢性胃炎で嘔吐や乾嘔があり、舌苔が剥落している胃陰虚や糖尿病にみられる食欲亢進や口渇などの胃熱にも用いる。

 口腔内がただれて痛むときには地黄・枇杷葉などと配合する(甘露飲)。視力低下や夜盲症などには菊花・決明子などと配合する(石斛夜光丸)。なおセッコク属の茎を加工してバネや螺旋形に曲げたものは耳環石斛とか楓斗と呼ばれ、滋養・強壮薬として茶の代わりに飲まれている。

土曜日, 7月 18, 2015

石膏

○石膏(せっこう)

 天然の硫酸塩類鉱物セッコウの鉱石を用いる。日本でもわずかに産するが、専ら湖北・湖南・山東省を主産地とする中国から輸入している。石膏は白ないし灰白色の光沢のある結晶塊で、主として含水硫酸カルシウム(CaSO4・2H2O)からなる。

 石膏の鉱石には軟石膏と硬石膏とがあり、軟石膏には繊維石膏と雪花石膏とがある。薬用には主に繊維石膏が用いられ、雪花石膏は彫刻材として用いられる。

 硬石膏は無水硫酸カルシウムの結晶であるが、正倉院薬物にある石膏は硬石膏であり、古代にはこの硬石膏を石膏として使用していたと考えられる。かつて理石、長石、方解石と呼ばれた生薬に関して、今日では理石は繊維石膏、長石や方解石は硬石膏のこととされている。

 石膏は110~120℃くらいで数時間焼くと結晶水が半減して白い粉末になるが、これを焼石膏という。この加熱には湿式と乾式とがあり、焼石膏はそれぞれα半水石膏とβ半水石膏に区別される。いずれも水を加えると固まる性質があり、β半水石膏は整形外科で固定に用いるギプスに、α半水石膏は歯科の印象彩得に利用される。さらに200℃で加熱しすぎると結晶水が全部なくなり、無水石膏(生薬名:椴石膏)となる。この粉末を押し固めたものがチョークである。

 天然の石膏には硫酸カルシウムのほか、SiO2、MgO、Al2O3、Fe2O3などが含まれている。薬理実験では解熱、止渇、利尿作用などが報告されているが、石膏は離溶性であり、大量に用いなければ解熱作用は発現しないといわれている。詳細は不明であるが、胃酸によってイオン化されたCa2++や微量に含まれる夾雑物の作用が推測されている。

 漢方では清熱・止渇・除煩の効能があり、熱性疾患に見られる高熱や煩躁、口渇、咽痛、譫妄、炎症性の浮腫、搔痒感、歯痛などにも用いる。日本漢方では陽明病気の裏熱証、中国医学では肺胃における気分の実熱証の要薬である。石膏の1日の常用量は10~20gであるが、症状に応じて100g以上用いることもある。なお椴石膏は火傷や湿疹の分泌を抑え、皮膚潰瘍を収斂する作用がある。

水曜日, 7月 15, 2015

石決明

○石決明(せきけつめい)

 ミミガイ科のアワビ類、九孔鮑(Haliotisdiversicolor)や番大鮑(H.giganteadiscus)などの貝殻を用いる。日本ではアワビ(H.gigantea)やトコブシ(Sulculusaquatilis)の貝殻などを用いる。石決明や千里光の名は目疾患の治療薬であったことを意味する。

 これらの貝は夏に捕獲した後、肉を除き、殻をよく洗って乾燥する。薬剤には生で用いる生石決明、るつぼの中で灰色~灰白色になるまで焼いた煅石決明がある。

 成分は主として炭酸カルシウム(CaCO3)であり、有機酸、鉄、マグネシウムケイ酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ヨウ素なども含まれるが、焼くと酸化カルシウムを生じ、有機酸は破壊される。漢方では平肝・鎮静・明目の効能があり、陰虚陽亢による眩暈や頭痛、肝火上炎による目の充血や痛み、角膜混濁に用いる。日本の経験方では下肢の筋力低下に対し、四物湯に亀板とともに加味する(亀板湯)。ちなみに決明子とはエビスグサの種子のことである。

金曜日, 7月 10, 2015

石決明

○石決明(せきけつめい)

 ミミガイ科のアワビ類、九孔鮑(Haliotisdiversicolor)や番大鮑(H.giganteadiscus)などの貝殻を用いる。日本ではアワビ(H.gigantea)やトコブシ(Sulculusaquatilis)の貝殻などを用いる。石決明や千里光の名は目疾患の治療薬であったことを意味する。

 これらの貝は夏に捕獲した後、肉を除き、殻をよく洗って乾燥する。薬剤には生で用いる生石決明、るつぼの中で灰色~灰白色になるまで焼いた煅石決明がある。

 成分は主として炭酸カルシウム(CaCO3)であり、有機酸、鉄、マグネシウムケイ酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ヨウ素なども含まれるが、焼くと酸化カルシウムを生じ、有機酸は破壊される。漢方では平肝・鎮静・明目の効能があり、陰虚陽亢による眩暈や頭痛、肝火上炎による目の充血や痛み、角膜混濁に用いる。日本の経験方では下肢の筋力低下に対し、四物湯に亀板とともに加味する(亀板湯)。ちなみに決明子とはエビスグサの種子のことである。

木曜日, 7月 09, 2015

石灰

○石灰(せっかい)

 方解石を主とする石灰岩(ライムストーン:Limestone)を過熱し焼成した生石灰および消石灰を用いる。石灰岩は炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とし、焼くと二酸化炭素が発生して酸化カルシウム(CaO)の生石灰ができる。

 生石灰は白色の不規則な塊状あるいは粉末で、酸に溶けやすく、水にもわずかに溶ける。生石灰に水を加えると激しく反応して熱を発生して水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の消石灰(熟石灰)となる。また放置するだけで空気中の水分を吸収して次第に消石灰になる。

 消石灰も白色の粉末である。さらに生石灰や消石灰を長い間空気に晒しておくと、二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムに変化する。有毒であるため、漢方では内服に使用せず、外用のみに用いる。

 消石灰には解毒・止血・収斂の作用があり、生石灰には悪肉を除く腐食作用があり、火傷や出血、下肢潰瘍、疣贅、痣、悪瘡などに用いる。

水曜日, 7月 08, 2015

セージ

○セージ

 ヨーロッパ南部を原産とするシソ科の多年草ヤクヨウサルビア(Salvia pfficinalis)の葉を用いる。ヨーロッパでは古くからハーブとして、観賞用として家庭でもよく栽培されている。また香辛料としてよく知られ、葉には強い香りと爽やかな苦さがある。肉の臭みを消すので、特に豚肉料理によく合い、ソーセージの中にセージの名がみられる。

 セージの語源はサルビアであり、ラテン語のサルバーレ(救う)に由来する。セージは園芸栽培されているサルビア(S.splendens)と同属植物であり、実際よく似ている。またセージは中国のタンジン(S.miltiorrhiza)とも同属植物である。

 葉にはαおよびΒツヨン、シネオール、ボルネオール、リナロール、ピネン、チモールなどの精油成分が含まれる。欧米ではハーブ・ティーとして知られ、咽頭炎のうがい薬や胃腸薬として、あるいは生理通や無月経の治療に用いる。そのほか発汗を抑え、更年期障害のほてりを改善する効果や母乳の分泌過多を抑える作用なども報告されている。またセージの芳香は歯の病気予防に効果があるとされ、歯磨き粉ができるまではセージの葉で歯をこする習慣があった。

 近年、セージのアルコール抽出物が記憶力を高め、アルツハイマー病に効果があると報告されて注目されている。ちなみに濃縮サルビアと称される幻覚薬が日本にも出回って問題となった。これはメキシコ奥地に生息するメキシコサルビアのことで、その有効成分はサルビノリンAであり、2006年に脱法ドラッグとして規制されるようになった。

火曜日, 7月 07, 2015

石榴皮

○石榴皮(せきりゅうひ)

 小アジア地方を原産とするザクロ科の落葉高木ザクロ(Punicagranatum)の果皮または根皮を用いる。ザクロは漢代に張塞が安石国から中国に種を持ち帰ったもので安石榴と呼ばれた。日本には平安時代以前に渡来している。

 石榴には種子が多いため、古代ヨーロッパでは豊穣のシンボルとして、中国では子孫繁栄の象徴として考えられていた。平安朝のころザクロの種子や果汁は有機酸を多く含むため、銅鏡を磨くのに用いられた。日本で一般に石榴皮といえば根皮のことであるが、中国では果皮すわなち石榴果皮のことである。ただし、近年では日本の市場に石榴根皮はみられなくなった。

 樹皮にはアルカロイドのペレチエリンやイソペレチエリン、タンニンが含まれ、イソペレチエリンには条虫を麻痺させる作用がある。イギリスやドイツでは条虫駆除に用いられていた。樹皮には毒性があり、普通量でもめまいや震えなど副作用がみられるため、最近は使用されない。果皮にはガラナチンなどのタンニンが多く含まれる。いずれも駆虫・止瀉の効能があり、とくに細菌性、アメーバ性腸炎の下痢や条虫などの寄生虫症に用いる。

 駆虫作用は根のほうが強いが、下痢症状には専ら果皮が用いられる。虫下しには苦楝皮と配合する(石榴根湯)。また果皮には止血・止痒作用もあり、性器出血や帯下、脱肛にも用いる。民間療法では口内炎や扁桃炎、歯痛などに果皮の煎液でうがいをする。

 近年、ザクロに女性ホルモン様作用があることで話題になった。事実、ザクロの種子にはヒトのエストロゲンと同じ構造を有するエストロンとエストラジオールが含まれていることが報告されている。しかし、2000年4月、ザクロ果汁に女性ホルモン物質は検出されなかったことが国民生活センターによって発表され、ザクロブームは下火になった。なお番石榴とはグァバのことである。

日曜日, 7月 05, 2015

菥蓂

○菥蓂(せきめい)

 ヨーロッパ原産とされ、日本をはじめ世界各地に分布するアブラナ科の越年草グンバイナズナ(Thlaspiarvense)の全草を用いる。種子は菥蓂子という。神農本草経の上品に収載されているが、現在ではあまり用いられていない。

 中国の市場ではグンバイナズナの果実のついた全草が敗醤として扱われていることもある。ちなみに敗醤はオミナエシ科のオトコエシやオミナエシを正条品としている。グンバイナズナはナズナより少し大きく、その名は果実の形が軍配の形に似ていることに由来する。

 全草や種子にはシニグリンが含まれ、シニグリンは酵素によって加水分解されると刺激性の強いアリルイソチオシアネートとなり、強い殺菌作用を有する。また尿酸の排泄を促進する効果もある。

 菥蓂は腎炎や子宮内膜炎、痛風などに有効である。また種子の菥蓂子は目の痛みや流涙症に用いる。菥蓂を細かな粉末にして点眼するという方法もある。

金曜日, 7月 03, 2015

浙貝母

○浙貝母(せきばいも)

 中国原産で日本でも切り花や鉢植えに栽培されているユリ科の多年草アミガサユリ(Fritillariaverticillata)の鱗茎を用いる。日本ではこれを単に貝母というが、中国では川貝母と区別して浙貝母という。

 中国の浙江省象山県が原産とされているため浙貝母あるいは象貝母と呼ばれる。18世紀の初めに日本に渡来し、今日でも奈良や兵庫で栽培され、奈良県産のものは大和貝母と称されている。これまで日本の国内需要を上回る生産高があり、輸出もされていたが、近年では円高のため輸出できなくなった。

 アミガサユリの鱗茎にはペイミン、ペイミニン、ペイミジン、ペイミノシド、フリチリンなどのアルカロイド類やジテルペン類などが含まれている。ペイミンはペイミノシドには顕著な鎮咳作用や降圧作用が認められている。また貝母のメタノール画分には冠血管拡張作用や強心作用、抗セロトニン、抗コリン作用がある。ただし多量に用いる毒性が現れるので注意が必要である。

 漢方では清熱・化瘀・散結・解毒の効能があり、咳嗽、肺癰、腫れ物などに用いる。止咳・化痰薬として呼吸器疾患にみられる咳嗽や喀痰、とくに黄色い粘稠痰のときに用いる。また頸部リンパ腺結核やリンパ腺炎、乳腺炎などの化膿症にも用いる。

木曜日, 7月 02, 2015

石南葉

○石南葉(せきなんよう)

 日本の東北地方よりも南の地方に自生しているツツジ科の常緑低木シャクナゲの葉を用いる。日本では通常、アズマシャクナゲ(Rhododemdron degronianum)、ホンシャクナゲ(R.var.hondoense)、ツクシシャクナゲ(R.subsp.heptamerum)をシャクナゲと呼んでいる。

 ツツジとは近縁植物であるが、一般にツツジは落葉樹であるのに対し、シャクナゲは常緑樹である。ところで日本では石楠あるいは石南花と書いて「しゃくなげ」と読むが、これは中国語の石楠、つまりバラ科のオオカナメモチ(Photinia serrulata)の誤用である。日本の民間ではシャクナゲの葉を石南葉というがね中国では石楠葉といえばオオカナメモチの葉のことである。

 シャクナゲの葉にはジテルペン化合物のグラヤノトキシンⅠやロドデンドリンなどが含まれる。グラヤノトキシンⅠは痙攣性の有毒物質で、中毒量では嘔吐、痙攣、麻痺を生じ、昏睡から死に至ることもある。

 日本漢方では強壮・鎮痛の効能をいうが、これは中国の石楠葉の誤解という説もある。日本の民間では利尿薬として浮腫やリウマチ、痛風の治療に茶として用いている。オオカナメモチの葉(石楠葉)にき去風湿・止痛・強筋骨の効能があり、リウマチ、頭痛、下肢の痙攣や足の萎弱に用いる。

水曜日, 7月 01, 2015

石菖蒲

○石菖蒲(せきしょうぶ)

 日本の各地や中国、ヒマラヤなどに分布し、おもに山間の渓流沿いに生えるサトイモ科の多年草セキショウ(Acorusgramibeus)の根茎を用いる。同じサトイモ科でよく似た植物にショウブ(A.calamus)があり、生薬名を水菖蒲という。

 日本で菖蒲湯や菖蒲根として利用されているのは、おもにショウブである。ちなみに中国で菖蒲といえばセキショウ(石菖蒲)のことであるが、岩場に生えていることから石菖蒲と呼ばれることが多い。

 古来より「一寸九節のものがよい」といわれるように、根に多くの節のあるものが好まれ九節菖蒲という別名もある。ただし、今日の市場で九節菖蒲というのはキンポウゲ科のキクザキイチリンソウ(Anemonealtaica)の根茎のことであり、全く別の生薬である。

 セキショウの前走には精油が含まれ、芳香がある。精油成分にはアサロンやカリオフィレン、フムレン、セキショーンなどが含まれ、鎮静、健胃作用などが認められている。漢方では芳香性開竅薬に分類され、開竅・鎮静・健胃・解毒の効能があり、高熱時の意識障害や小児のひきつけ、癲癇、精神不安、健忘、耳鳴、耳聾などに用いるほか、腹痛や下痢、食欲不振、腫れ物、打撲傷などにも用いる。

 脳卒中などによる言語障害や顔面麻痺などには全蝎・附子などと配合する(神仙解語湯)。精神的なうつや興奮、眩暈には半夏・遠志などと配合する(清心温胆湯)。耳鳴りや耳聾、眩暈などには山梔子・羚羊角などと配合する(耳聾丸)。