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火曜日, 1月 28, 2014

当帰






○当帰(とうき)

 日本では奈良県や北海道で栽培されているセリ科の多年草トウキ(A.acutiloba)の根を用いる。日本の本州中部より北の山地にはミヤマトウキ(var.iwatensis)が自生しており、日本で栽培されているのはこの栽培種のトウキ(日本当帰・東当帰)である。中国産のものはカラトウキ(A.sinensis)といわれ種類が異なっている。

 日本で栽培されている当帰には昔から吉野地方で栽培されてきた大和当帰(別名:大深当帰)と昭和になって北海道で作られた北海当帰の2種類がある。品質は大和当帰、収量は北海当帰が優れているため、現在では北海当帰が多く出回っているが、交配種も多く栽培されている。

 当帰は甘味のある甘当帰系と辛味のある辛当帰系があり、大深当帰は甘当帰系であるが、北海当帰や中国産・韓国産は辛当帰系といわれている。日本では根の全体、すなわち全当帰を用いるが、中国では根の頭部を当帰頭、主根部を当帰身、支根部を当帰尾あるいは当帰鬚として区別することもある。日本薬局方では中国産のカラトウキは除外しているが、近年、日本のトウキを中国や韓国で栽培加工した生薬も日本で流通している。

 根には精油成分としてリグスチライド、サフロール、ブチリデンフタライド、そのほかクマリン誘導体のベルガプテン、ファルカリノール、脂肪酸などが含まれている。薬理作用として鎮痛・消炎作用や中枢系や循環器に対する効果が報告されている。漢方で重視されている作用は明らかではない。

 漢方では補血・活血・調経・潤腸の効能があり、月経不順、虚弱体質(血虚)、腹痛、腹腔内腫瘤、打撲傷、しびれ、皮膚化膿症、便秘などに用いる。

 トウキは婦人科領域の主薬であり、また「血中の気薬」ともいわれ、中国医学では当帰頭は補血、当帰身は養血、当帰尾は破血、全当帰には活血の効能があるといわれているが、日本では区別することは少ない。また中国では当帰の味を甘・辛としているが、日本産の大深当帰には辛味がほとんどない。

 近年、米国のハーバリストは当帰のことを”Dong Quai”とか、”Chinese angelica”と呼んで、月経不順や月経前症候群、更年期障害などの治療に用いている。一方、西洋では西洋アンゼリカ(A.archangelica)が、婦人病などの治療に用いられている。