○エキナセア
エキナセア(エキナケア、エヒナセアとも呼ばれる)は、北アメリカ平原一帯に分布するキク科の多年草植物で、和名をムラサキバレンギクという。夏から秋にかけて紫色の美しい花を咲かせ、観賞用ハーブとしても人気が高い。
ネイティブ・アメリカンの間では古くから薬草としてつかられてきた歴史があり、根の部分を噛んで風邪の予防や歯痛・喉の痛みを治したり、石ですりつぶして液上にしたものを傷・火傷の外用薬として用いてきた。19世紀末になって、その薬効は医療関係者にも広く知られるようになり、20世紀初頭にはアメリカの医者が最も良く購入する薬草にまでなった。
エキナセアはヨーロッパで知られるようになったのは1895年頃で、ドイツの科学者が自国へ持ち帰り、ヨーロッパでの栽培が始まってからである。その後、ミュンヘン大学などが中心になって臨床研究を実施、経験的に知られていた風邪やインフルエンザなど感染症の予防と治療、抗菌性などから、気管支炎、尿路感染症、疝痛、浮腫、鼻粘膜の乾燥、アレルギーなどに対する作用、免疫力賦活作用、抗バクテリア、抗ウイルス作用(抗生物質作用)、抗炎症作用などが認知された。
含有成分の分析も早くから行われており、今日では、エキナセアの有効成分としてシコリック酸(多糖類)、アルカミド(ドデカ四酸イソブチルアミド)、ポリサッカロイド、フラボノイド、グリコプロティン、コーヒー酸などが同定されている。特に免疫促進作剤としての可能性に焦点を当てた成分研究では、ミュンヘン大学薬学部のH・ワグナーらによって、エキナセアに含まれるフコガラクトキシログルカンと酸性アラビノガラクタンの2の多糖が、好中球やマクロファージなどの免疫細胞を活性化させ、免疫応答物質として知られるインターロイキンなどの産生を促進することが報告されている。
現在、エキナセアはドイツで最も人気のあるメディカルハーブとして、280種類を超える関連製品が作られている。ドイツではハーブから抽出した成分が規格に定める量含まれる製品をフィト(植物性)医薬品と呼び、適応症に対する効能が認められているが、エキナセアのエキスやチンキ製剤は風邪やインフルエンザ、感染症の緩和と予防に、また、細胞の免疫力を促進し安定させる非特異的免疫作用促進剤として感染症の治療にも使われている。エキナセアの軟膏は、傷やただれ、湿疹や火傷、日焼けなど炎症性の皮膚疾患に良く使われている。
エキナセアは原産国アメリカでの人気も高く、ハーブ市場では風邪予防や免疫力向上に有効なハーブとして売り上げトップの位置を維持している。最近は、わが国でもメディカルハーブとしての地歩を固めてきており、1997年にはH・ワグナーが来日し、日本薬学会で特別講演を行っている。
フィト医薬品は品種やエキスの抽出法によって効果が大きく異なるため、ドイツでは成分含有量の厳格な規格化が行われているが、エキナセアについても1990年代に規格化の検討が開始され、97年には一連の検討結果が公表されている。
エキナセアの商品一覧