○自然銅(じねんどう)
漢方生薬でいう自然銅とは硫化鉄鉱石である黄鉄鉱(Pyrite)のことである。鉱物学では自然に産する銅の単体を自然銅というが、生薬の自然銅にはほとんど銅は含まれていない。
自然銅は比較的ありふれた鉱物であるが、真鍮色をしているため黄銅鉱や金などと間違えられやすい。黄鉄鉱は結晶しやすいが、その形はさまざまで典型的なものは立方体か五角正十二面体である。
組成は二硫化鉄(FeS2)のほか、微量の銅、ニッケル、ヒ素、アンチモンなどを含むこともある。動物実験では骨折癒合を促進する作用が認められている。漢方では活血・止痛・接骨の効能があり、打撲傷、骨折、瘀血、疼痛、腫瘤などに用いる。
一般に焼いて硫黄分を除いて薬用にする。打撲や骨折による腫痛には自然銅を強火で焼いた後、乳香・没薬・当帰などと配合する(自然銅散)。骨折や捻挫などの外傷には骨砕補・続断などと配合する(接骨Ⅱ号方)。