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月曜日, 6月 29, 2015

赤小豆

○赤小豆(せきしょうず)

 中国南部原産のマメ科の一年草アズキ(Phaseplusangularis)やツルアズキ(P.calcaratus)の成熟した種子を用いる。ツルアズキはアズキに似ているがつるがあり、インドや東アジアで栽培されている。

 アズキは古くから食用としてアジアを中心に栽培されているが、日本での栽培量が最も多い。アズキは世界中で日本人だけに好まれる特異な存在で、アズキを米とともに炊いて赤飯や小豆粥にしたり、餡にして和菓子の原料として広く利用している。

 アズキの成分にはフラボン配糖体のロビニンや結晶性サポニンなどが含まれている。漢方では清熱燥湿・利水消腫の効能があり、腎炎や脚気、栄養障害にみられる浮腫、下痢、下血、黄疸、癰腫に用いる。

 脚気や肝硬変の腹水、腎炎による浮腫には赤小豆と鯉魚を一緒に煮込んで服用する(赤小豆鯉魚湯)。黄疸や浮腫、蕁麻疹などに麻黄・連軺などと配合する(麻黄連軺赤小豆湯)。民間療法でも水だけで煮たあずき粥を脚気の浮腫や母乳の出が悪いとき、便秘や二日酔いに用いている。

土曜日, 6月 27, 2015

石松子

○石松子(せきしょうし)

 日本、北半球の温帯・暖帯に広く分布する常緑シダ植物ヒカゲノカズラ科のヒカゲノカズラ(Lycopodiumclavatum)の胞子を用いる。全草は石松あるいは伸筋草という生薬名で呼ばれる。

 ヒカゲノカズラは産地の林緑などの日当たりのよいところに自生し、太い針金状の茎が長く地上を這う。この茎葉は花束や花輪などの装飾用に用いられている。胞子は微細なさらさらとした淡黄色の粉末で、吸湿性がない。このため線香花火に混ぜたり、レンズ磨きや塗料に混ぜ、のびをよくするのに利用されていた。

 胞子には脂肪を約50%含み、この主成分はリコポジウムオレイン酸である。全草にはアルカロイドのリコポジンやトリテルペノイドのαオノセノンなどが含まれている。薬用としては吸湿性が全くないため、丸薬の衣や、汗疹や湿疹などの散布薬として用いられていた。

 伸筋草には去風湿・舒筋活絡・活血などの効能があり、リウマチなどの関節痛、麻痺やしびれ、打撲傷、水腫などに用いる。西洋の民間療法では全草を利尿薬として膀胱炎や尿路結石の治療に用いている。近縁植物であるトウゲシバ(L.serratum//Huperziaserrata)の全草は千層塔と呼ばれ、アルツハイマー病に効果があると期待されている。

金曜日, 6月 26, 2015

赤芍

○赤芍(せきしゃく)

 中国北部を原産とするボタン科の多年草シャクヤク(Paeonia lactiflora)の根の外皮のついたままのものを用いる。外皮を除いたものを白芍という。また赤芍には野生種のベニバナヤマシャクヤク(P.obovata)やセンセキシャク(P.veitchii)などの根も用いられている。これに対し白芍といえば栽培品種のみが用いられている。赤芍は日本薬局方による芍薬の規格に適合したないため、中国産では白芍のみを芍薬として用いている。

 芍薬の根にはペオニフロリンが含まれ、鎮痙、鎮痛、鎮静、抗炎、抗潰瘍、降圧作用など報告されている。中国医学では白芍に補血・止痛の効能があるのに対し、赤芍には清熱涼血・活血の効能があると区別し、温熱病、無月経、腹部腫瘤、腹痛、出血、腫れ物などに用いる。ちなみに同じボタン科のボタン(P.suffruticosa)の根である牡丹根には清熱涼血・去瘀の効能があるが、日本漢方的にいえば、赤芍はちょうど芍薬(白芍)と牡丹皮との中間的な生薬と考えられる。このため瘀血による疼痛や内出血などには白芍よりも赤芍を用いたほうが効果的である。

木曜日, 6月 25, 2015

石蒜

○石蒜(せきそう)

 日本の本州以南、中国の温帯に分布するヒガンバナ科の多年草ヒガンバナ(Lycorisradiata)の鱗茎を用いる。9月下旬、秋の彼岸のころに鮮やかな赤い花をつけるので彼岸花と呼ばれる。赤い花を意味するマンジュシャゲ(曼珠沙華)の別名もあるが、本来、サンスクリット語のマンジューシャカは別の植物の名前である。

 有毒植物ではあるが、鱗茎をすりつぶして水にさらし、毒抜きをすると食べられるため救荒食物として利用されてきた。日本には縄文時代に食用として中国から渡来したと考えられている。また鱗茎をすりつぶして海苔状にしたものは防虫の目的で衣類や襖の下張りなどに用いられた。

 ヒガンバナにはリコリン、ホモリコリン、ガランタミンなどのアルカロイドが含まれ、誤って食べると強い苦味があり、嘔吐、下痢、流涎、神経麻痺などが起こる。これらのアルカロイドには鎮痛、降圧、催吐、去痰作用がある。リコリンはアメーバ赤痢や喀痰の治療薬、ガランタミンは小児麻痺後遺症、アルツハイマー病の治療薬としても知られている。

 石蒜には去痰・利尿・解毒・催吐る効能があるが、日本でも中国でも専ら民間療法として用いられている。一般に催吐の目的で内服させる以外は外用し、鱗茎をすりおろしたもので肩こりや乳腺炎、乳房痛などの湿布薬とする。また腎炎などによる浮腫に石蒜を単独あるいは唐胡麻(蓖麻子)と混ぜたものをすりおろして足裏の涌泉穴に塗布する方法がよく知られている。

 ちなみに欧米ではヒガンバナ科のスノードロップ(Galanthusworonowill)やスノーフレーク(Leucojumaestivum)から抽出されたガランタミンがアルツハイマー病の治療薬として用いられている。

水曜日, 6月 24, 2015

石韋

○石韋(せきい)

 日本の関東以南及び朝鮮半島や台湾、中国南部、インドシナに分布するウラボシ科の常緑シダ植物ヒトツバ(Pyrrosia lingua)などの同属植物の葉を用いる。ヒトツバは暖地の乾燥した岩や葉に群生し、普通にみられる常緑のシダである。根は石韋根という。

 ヒトツバの全草には配糖体、フラボノイド、サポニンなどが含まれるが、詳細は明らかではない。漢方では清熱・利水・通淋・止血の効能があり、淋病、血尿、腎炎、子宮出血、下痢、気管支炎、癰疽などに用いる。とくに通淋薬として有名であり、熱淋、石淋、血淋などの膀胱炎や血尿に滑石・瞿麦などと配合する(石葦散)。また気管支炎や喘息などの治療に効果がある。

 日本ではほとんど利用されていないが、中国では今日でも尿路結石や腎炎などによく用いている。石韋根の粉末は止血薬として傷に散布する。

火曜日, 6月 23, 2015

西洋トチノキ

○西洋トチノキ

 バルカン半島のトチノキ科の落葉高木セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum)の種子を用いる。欧米では街路樹として広く植栽され、パリのマロニエとして知られているのはこのセイヨウトチノキのことである。ちなみに英語名はホース・チェスナット(栗)、その翻訳名のウマグリ(馬栗)という和名もある。仏語名のマロニエもマロン(栗)に由来し、かつてマロングラッセもマロニエの実が使われていたといわれる。

 種子にはトリテルペン系サポニンのエスシンのほか、クマリン、エスクリンなどが含まれ、静脈壁を強化し、静脈の透過性を下げる作用のほか、血流促進、凝固抑制、抗炎症、抗潰瘍作用などが知られている。

 外傷や炎症による腫張を緩和し、静脈の血流を改善視することが認められており、ドイツなどでは静脈瘤や下肢血流障害(足のだるさ、こむら返り)、痔核の治療、手術後の浮腫の回復などに用いられ、日本でも軟部腫張の治療薬として用いられ、市販の痔治療薬や湿布薬、化粧品などに配合されている。ちなみに生の種子にはエスクリンが含まれるため、過量に用いると死に至ることがあり、一般にはエスクリンを除去した種子エキスのみを利用する。副作用として消化器症状や痒みの出ることがある。

 日本のトチノキ(A.turbinata)も民間薬として知られ、種子の栃の実を乾燥粉末にして胃痛や打ち身、痔などに用いている。また樹皮を煎じて痔や子宮出血、蕁麻疹、下痢等に用い、葉を煎じて咳の治療に用いている。

西洋参

○西洋参(せいようじん)

 北アメリカ原産で、カナダやアメリカの肥沃な森林に自生しているウコギ科のアメリカニンジン(Panax quinquefolis)の根を用いる。

 17世紀末に薬用人参の効能がヨーロッパに紹介され、18世の初めにその論文を目にしたカナダの宣教師がよく似た植物として見出し、薬用として広まったのがアメリカ人参である。この人参は星条旗を意味する花旗を冠して花旗参とも呼ばれている。アメリカで栽培されたものが広東経由で東南アジアに輸出されるため広東人参という名もある。現在では中国でも栽培されている。

 根にはサポニンのパナキロンやジンセノサイドなどが含まれ、人参と同様な中枢神経に対する刺激や血圧降下、疲労回復などの作用が認められている。官報でも補気・滋陰清熱・止渇の効能があり、人参の代用として用いられる。

 人参に比べれば補気の力は弱いが、滋陰清熱の作用はかえって優れている。このため熱証の患者の滋養・強壮に適しており、高熱のために脱水となり、体力が弱ったとなどには西洋参を用いる。

 暑気あたりや夏かぜには石斛・麦門冬などと配合する(王氏清暑益気湯)。また最近の中国では白虎加人参湯の人参の代わりにしばしば西洋参が用いられているる

日曜日, 6月 21, 2015

青木香

○青木香(せいもっこう)

 関東以西、四国、九州及び中国に分布するウマノスズクサ科のつる性多年草ウマノスズクサ(Aristolochiadebilis)などの根を用いる。

 日当たりのよい山野に自生するつる性の植物で、つるからぶらさがった果実の形が馬の首にかける鈴に似ていることからウマノスズクサとか馬兜鈴という名が付けられている。ウマノスズクサの葉をつけた茎は天仙藤、果実を馬兜鈴という。キク科の植物の根にも青木香という生薬があるが、全く別のものである。

 ウマノスズクサの根にはアリストロキア酸やアリストロン、マグノフロリンなどが含まれ、降圧、鎮静、気管支拡張作用が報告されている。漢方では止痛・理気・解毒・消腫の効能があり、胸腹部の張痛みや下痢、腫れ物、湿疹などに用いる。

 夏季の下痢や腹痛、暑気あたりには青木香の粉末を服用する。腫れ物や咬傷、湿疹には粉末をゴマ油などで練って塗布する。近年、中国では青木香に降圧作用があることから高血圧の治療にも使用されている。ただし、アリストロキア酸は腎障害を引き起こすことが指摘されており、使用には注意が必要である。

青風藤

○青風藤(せいふうとう)

 ツヅラフジ科のオオツヅラフジ(Sinomenium actum)や華防己(Diploclisia chinensis)、アワブキ科のアオカズラ(Sabia japonica)などのつる性の茎をいう。

 オオツヅラフジは単にツヅラフジともいい、日本の関東以西、四国、九州、台湾、中国などに分布するつる性落葉低木で、その茎を日本では防己あるいは漢防己と称している。つまり日本産の防己を中国では青風藤として扱っている。

 中国産の防己の基原とされるツヅラフジ科のシマハスノハカズラ(Stephania tetrandra)はオオツヅラフジによく似ているため、日本では江戸時代の前から防己と称してオオツヅラフジで代用していたと考えられる。一方、中国では青風藤はあまりよく知られていない生薬であるが、民間では脚気などによる浮腫やリウマチなどの関節痛の治療薬として用いている。成分や効能に関しては防己の項に記す。

土曜日, 6月 20, 2015

青木香

○青木香(せいもっこう)

 関東以西、四国、九州及び中国に分布するウマノスズクサ科のつる性多年草ウマノスズクサ(Aristolochia debilis)などの根を用いる。

 日当たりのよい山野に自生するつる性の植物で、つるからぶらさがった果実の形が馬の首にかける鈴に似ていることからウマノスズクサとか馬兜鈴という名が付けられている。ウマノスズクサの葉をつけた茎は天仙藤、果実を馬兜鈴という。キク科の植物の根にも青木香という生薬があるが、全く別のものである。

 ウマノスズクサの根にはアリストロキア酸やアリストロン、マグノフロリンなどが含まれ、降圧、鎮静、気管支拡張作用が報告されている。漢方では止痛・理気・解毒・消腫の効能があり、胸腹部の張痛みや下痢、腫れ物、湿疹などに用いる。

 夏季の下痢や腹痛、暑気あたりには青木香の粉末を服用する。腫れ物や咬傷、湿疹には粉末をゴマ油などで練って塗布する。近年、中国では青木香に降圧作用があることから高血圧の治療にも使用されている。ただし、アリストロキア酸は腎障害を引き起こすことが指摘されており、使用には注意が必要である。

木曜日, 6月 18, 2015

青皮

○青皮(せいひ)

 日本ではミカン科の常緑高木ウンシュウミカン(Citrus unshiu)のまだ青い、黄熟する前の果皮を青皮という。成熟果実の果皮は陳皮といい、未熟な果実は枳実としても用いられる。中国ではオオベニミカン(C.tangerina)やコベニミカン(C.erythrosa)などの未成熟果実の皮を青皮として用いている。今日、日本の市場品は全て中国産である。

 青皮には疏肝・理気・消積化滞の効能があり、胸や腋の張ったような痛み、肩や乳房の痛み、消化不良による下腹部痛などに用いる。青皮の性質は陳皮よりも激しく、陳皮の理気作用よりも強い疏肝・破気の効能があるといわれている。

 脇腹の痛みには柴胡・川芎などと配合する(柴胡芎帰湯・疏肝湯)。ストレスによる肩こりには香附子・莪朮などと配合する(治肩背拘急方)。

青黛

○青黛(せいたい)

 キツネゴマ科のリュウキュウアイ(Strobilanthes cusia)、マメ科のタイワンコマツナギ(Indigofera tinctoria)、アブラナ科の植物のホソバタイセイ(Isatis tinctoria)などの葉や茎に含まれる色素を用いる。

 リュウキュウアイはインドからインドシナ半島、中国南部、台湾、小笠原諸島や沖縄などで藍の原料として栽培されている。リュウキュウアイやホソバタイセイの葉は大青葉、根は板藍根という。これらの葉や茎を数日間水に浸して発酵させ、石灰を加えてかき混ぜ、浸出液が紫色になったら液面の泡を掬いとり、これを日干ししてできた藍色の粉末を青黛という。つまり葉や茎に含まれるインジカンが発酵やアルカリを加えることにより加水分解されてインドキシルとなり、次に空気による酸化をうけて藍色のインジゴに変わる。

 青黛にはおもにこのインジゴが含まれている。一般にはインジゴは藍染めの染料として用いられている。薬理的には種々の細菌に対する静菌作用が知られている。漢方では清熱涼血・解毒の効能があり、大青葉や板藍根と同様に清熱薬として幅広く用いられ、丹毒などの発疹や発斑を伴う熱病、仕様煮のひきつけ、吐血や喀血、鼻血などの出血、湿疹、腫れ物、蛇噛傷などに応用する。

 小児の栄養不良で、発熱や腹水のみられるときには柴胡・莪朮などと配合する(消疳退熱飲)。高血圧や熱性疾患などで大便が秘結して眩暈やひきつけ、精神変調などがみられ、脇腹の痛むときには当帰・竜胆・芦薈などと配合する(当帰竜薈丸)。

 中国では肝炎や脳炎、耳下線炎、心筋炎などに対する臨床研究が行われている。口内炎や咽頭炎、耳漏、湿疹などには外用薬として用いる。鼻血には青黛の粉を直接出血部に当てて止血する。潰瘍性大腸炎に対する効果が検討されている。

火曜日, 6月 16, 2015

青葙子

○青葙子(せいそうし)

 熱帯の荒地に広く分布するヒユ科の一年草ノゲイトウ(Celosia argentea)の種子を青葙子という。ただし習慣的なケイトウ(C.cristata)の種子(生薬名:鶏冠子)も青葙子として市場に出ている。また神農本草経には青葙子を草決明と記している。ノゲイトウは日本でも本州西部、四国、九州南部などに帰化し、切花用にも栽培されている。

 青葙子にはセロシアオールを主成分とする脂肪油が含まれ、降圧作用や瞳孔散大作用が知られている。漢方では降圧・明目・止痒の効能があり、高血圧、眼科疾患、鼻血、皮膚掻痒症などに用いる。決明子と同様におもに眼疾患に用いられ、眼の充血や疼痛などを伴う急性結膜炎や慢性ブドウ膜炎、視力障害、飛蚊症などに用いる。また頭痛や頭暈などを伴う高血圧症や皮膚掻痒症には単独で煎じて服用する。鼻血には青葙子の汁を点鼻する。

月曜日, 6月 15, 2015

蠐螬

○蠐螬(せいそう)

 コフキコガネ科のチョウセンクロコガネ(Holotrichia diomhalia)などの昆虫の幼虫を乾燥して用いる。この幼虫は体長1.5~2cmくらいでカブトムシの幼虫によく似ている。

 中国では黒龍江省から長江以南に至る広い地域に分布している。しかし生薬の蠐螬にはさまざまな昆虫の幼虫が含まれ、コフキコガネ科、スジコガネ科、ハナムグリ科、カブトムシ科の幼虫も報告されている。台湾ではコフキコガネの幼虫が用いられている。

 これらは日本ではジムシ(地虫)、ネキリムシ(根切虫、スクモムシ)などと呼ばれているものに相当する。成分は不明だが、家兎の子宮を興奮させ、腸管を抑制し、血管を収縮させる作用がみられ、有毒とされている。

 漢方では活血化瘀・通乳の効能があり、打撲や骨折、瘀血による痛み、関節痛、乳汁不足などに用いる。金匱要略に収載されている駆瘀血剤の大黄シャ虫丸の中にも配合されている。

日曜日, 6月 14, 2015

薺菜

○薺菜(せいさい)

 日本の各地をはじめ北半球に広く分布しているアブラナ科の越年草ナズナ(Capsella bursa-pastoris)の全草を用いる。ナズナは春の七草の一つで、1月7日の朝に七草粥に入れる風習が残っている。

 ナズナの語源は「撫菜」で、「めでる菜」の意味といわれ、果実が三味線のバチに似ていることからペンペングサという呼び名もある。かつては七草粥以外にも和え物やおひたしにして食べていた。

 成分にはフラボノイドのジオスミンやコリン、アセチルコリン、ブルシン酸などが含まれ、子宮収縮、降圧、利尿、止血作用が認められている。戦前には、止血剤として用いていたこともある。

 漢方では利水・止血・明目の効能があり、浮腫、淋病、下血、産後の出血、目の充血、翼状片に用いる。日本でも中国でもおもに民間療法として用いられ、近年では緩下、利尿、血圧効果の目的で単独で煎じて服用する。目の炎症には煎じた液で洗浄する。欧米ではシェパーズパース(Shephard's Purse)と呼ばれ、止瀉、利尿、止血薬として用いられている。

木曜日, 6月 11, 2015

青蒿

○青蒿(せいこう)

 本州、九州、四国、朝鮮半島、中国に分布するキクカの二年草カワラニンジン(Artemisia apiacea)の全草を用いる。このほかアジア、ヨーロッパに広く分布するクソニンジン(A.annua)の全草を用いることもある。ただしクソニンジンの全草はとくに黄花蒿とも呼ばれている。

 葉の形がニンジンに似ていて、よく川原にみられるのでカワラニンジンというながある。一方、クソニンジンのなはその悪臭にちなむ。カワラニンジンは中国から薬用植物、すなわち神麹の原料の一つとして日本に渡来し、その後に野生化したといわれている。

 カワラニンジンの成分にはαピネン、カンフェンのほか、クマリン類のスコポレチン、ダフネチン、ヘルニアリンなど、クソニンジンの成分にはアルテミジアケトン、ヘキサナール、シネオールなどが含まれ、抗真菌、解熱作用などが知られている。

 漢方では清熱・解暑・退虚熱の効能があり、日射病や熱射病、結核やマラリアなどの慢性消耗性疾患の発熱、潮熱、盗汗などの症状に用いる。肺結核などで熱が続き、痩せて全身倦怠感のあるときには知母・別甲などと配合する(青蒿別甲湯)。また鼻出血には新鮮な青蒿の汁に水を加えて服用する。

 近年、クソニンジンを原料とした抗マラリア薬、アーテスネート(アーテミシニン)が中国の製薬会社によって開発され、世界的に広く普及している。

火曜日, 6月 09, 2015

西河柳

○西河柳(せいかりゅう)

 中国北部及びモンゴルを原産とするギョリュウ科の落葉小高木ギョリュウ(Tamarix chinensis)の葉のついた細い幼枝を用いる。日本には江戸時代に渡来し、切花や庭園樹として植栽されている。

 水湿地を好み、枝は細く垂れ下がって全体の形はヤナギに似ている。5月と8月頃の年2回に淡桃色の小さな花が咲くといわれ、三春柳の名もある。楊貴妃が非常に愛したため御柳と呼ばれ、神聖な木という意味で檉柳ともいう。

 成分は明らかでないが、止咳・抗菌・解熱作用が報告されている。漢方では発表・透疹の効能があり、専ら麻疹の治療に用いる。日本にも麻疹の薬として導入された。麻疹で発疹が遅く、高熱、煩躁、口渇、咽頭痛のみられるときには淡竹葉・葛根・蝉退などと配合する(竹葉柳蒡湯)

月曜日, 6月 08, 2015

西瓜

○西瓜(すいか)

 熱帯アフリカ原産のウリ科のつる性一年草スイカ(Citrullus vulgaris)の果実を用いる。中国へは中央アジアを経て11世紀に、日本には寛永年間に渡来したといわれている。スイカの果肉部分を西瓜といい、その汁を服用する。また厚皮の最外層の部分を乾燥したものを西瓜皮あるいは西瓜翠衣という。

 果肉の90%は水分で、果汁には約8%の糖質のほかアミノ酸のアルギニンやシトルリン、色素成分のリコピンやカロテンなどが含まれる。シトルリンは西瓜の果汁から発見されたアミノ酸の一種で、強力な抗酸化作用があり、利尿作用や血管拡張作用などにも関与していると考えられており、欧米では疲労回復、血流改善、動脈硬化予防、精力増強のサプリメントとして利用されている。

 漢方では解暑・止渇・利水消腫の効能があり、暑気あたり、口渇、排尿減少、浮腫に用いる。一般に果汁にして100~300mlを1日に数回飲む。。成熟した果実の果汁を土鍋に入れてとろ火で煮つめ水飴状にしたものを西瓜糖と称し、腎炎や浮腫に用いる。これにキササゲ、南蛮毛を配合した薬用西瓜糖が腎炎や脚気の利尿薬として市販されている。ただ寒の性質があるため、体内の冷えたものには用いない。

 西瓜皮も西瓜と同様の効能があり、暑気あたりや夏風邪による浮腫に用いる。暑気あたりや夏風邪には西洋参・石斛など配合する(王氏清暑益気湯)。また皮を焼いて灰にしたものを口内炎や歯痛に塗布する。このほかも成熟の果実のヘタの部分を切って壺を作り、中に天然の芒硝を入れてヘタで蓋をして密封し吊るしておくと皮の外側に白色顆粒状の結晶が透析してくるが、これを西瓜霜といい、咽頭炎や口内炎、咽頭の嗄れや腫痛に用いる。

 ちなみに地中海で栽培されているスイカの同属植物コロシントウリ(C.colocynthis)の果実は苦くて食用にならないが、コロシンチンという苦味配糖体を含み、ヨーロッパでは緩下薬として利用されている。

金曜日, 6月 05, 2015

鈴蘭

○鈴蘭(すずらん)

 北海道や本州の長野県・群馬県・朝鮮半島、中国、シベリアなどに分布するユリ科の多年草スズラン(Convallaria majalis var.keiskei)の根及び全草を用いる。

 高山や山地の湿地帯に群生し、キミカゲソウ(君影草)という別名もある。現在、園芸的に栽培されているものはおもにヨーロッパ産のドイツスズラン(C.majalis)である。花には芳香があり、ドイツスズランは香水の原料にもされる。

 全草、とくに根茎や根には強心配糖体のコンバラトキシン、コンバラトキソール、コンバロサイドなどが含まれ、ジギタリスと類似の強心、利尿作用がある。コンバラトキシンの強心作用はジギタリスの10~15倍の強さがあり、中毒症状として流涎、悪心、嘔吐、頭痛などを起こし、多量に摂取すると呼吸停止、心不全に陥る。またコンバロサイドには血液凝固作用がある。

 ヨーロッパや日本でも強心利尿薬として利用されていたが、毒性が強いため用いないほうがいい。

豆豉

○豆豉(ずし)

 マメ科ダイズのの種子(Glycine max)を蒸して麹菌を用いて発酵させたものを乾燥して用いる。中国では淡豆豉あるいは香豉、淡豉などという。漢方生薬では一般に「豆豉」と称しているが、最近、健康食品として「豆鼓」という名称でも扱われている。

 豉は「くき」ともいい、大豆を発酵させたものを指し、日本の浜納豆や大徳寺納豆などに似たものである。蒸して発酵させるときに桑葉や青蒿を用いたり、蘇葉や麻黄を用いるなどいくつかの異なる加工方法がある。

 豆豉には鹸豉と淡豉との区別があり、塩を加えたものを鹸豉といい、塩を加えていないものを淡豉という。かつて鹸豉は醤油や味噌よりも古い調味料として利用されていた。薬用には塩を加えない淡豉を用いる。淡豆豉では豆の表面は黒く、縦横にしわがあり、質はもろくて砕けやすい。かび臭いにおいがあり、甘い味がする。

 成分には脂肪やタンパク質、酵素などが含まれている。近年、豆豉から抽出した成分(トウチエキス)が、αグルコシダーゼを阻害して、糖の吸収を遅らせ、血糖値の上昇を抑えることが明らかとなり、特定保健用食品として認められている。

 漢方では解表・除煩の効能があり、熱性疾患や熱病後の不眠、煩躁などに用いる。軽い風寒型の感冒などで発熱、悪寒、頭痛のみられるときには葱白などと配合する(葱豉湯)。熱感や咽痛がある風熱型の感冒には薄荷・金銀花などと配合する(銀翹散)。この際、麻黄や蘇葉とともに加工した豆豉は風寒型の感冒、桑葉や青蒿を用いた豆豉は風熱型の感冒に適しているといわれている。また熱病の後で胸中が煩悶したり、不眠が続くときには山梔子と配合する(梔子豉湯)。

水曜日, 6月 03, 2015

津蟹

○津蟹(ずがに)

 日本から台湾にかけて生息するイワガニ科のモズクガニ(Eriocheir japonicus)を用いる。中国の近縁種のシナモクズガニ(E.sinensis)を蟹として薬用にする。

 モズクガニは河口の泥地や磯辺に生息する蟹で、甲羅は5cmくらいの四角形で体色は暗緑色をしており、鋏脚は大きく房状の毛が生えている。肉が多くて食用にもされる。薬用には薬性を残す程度に黒焼きにしたものを用いる。

 漢方では清熱・消腫・生肌の効能があり、筋肉や骨の損傷、疥癬、火傷、漆かぶれなどに用いる。日本では排膿・強壮の目的で反鼻・鹿角の黒焼きとともに配合し(伯州散)。皮膚化膿症や痔などに内服・外用し、火傷や漆かぶれなどには生のカニをつぶして塗布する。日本の民間でも漆かぶれに淡水産のサワガニをつぶして外用すると効果があるといわれているる。

火曜日, 6月 02, 2015

水蓼

○水蓼(すいりょう)

 日本をはじめ北半球に広く分布するタデ科の一年草ヤナギタデ(Polygonum hydropiper)の全草を用いる。果実は蓼実という。河川や湿地など水辺に生え、中国名は水蓼という。

 ヤナギタデはホンタデ、マタデとも呼ばれ、一般にタデといえばこのヤナギタデのことである。蓼食う虫も好き好きの名のように、葉は非常に辛くて口の中がタダレルということから、タデの名がある。

 奈良・平安時代よりタデは香辛料のひとつとして用いられている。この栽培品種にアオタデ(青蓼)とベニタデ(紅蓼)があり、アオタデの葉をすりつぶして酢と合わせたものを「たで酢」、深紅色のベニタデの芽を「芽たで」といい、さしみのつまとして用いている。

 辛味成分はタデオナールやポリゴディアールで、葉茎にはケルセチン、ピネンなどが含まれており、血液凝固促進作用や降圧作用が報告されている。漢方では去風湿、止瀉・消腫の効能があり、脚気、リウマチ、下痢、打撲傷などに用いる。

 日本の民間療法として暑気あたりで倒れたときに飲ませる方法が知られている。また虫さされや腫れ物、打撲傷に生の葉の汁や煎じた液で外用する。蓼実には明目、温中、利水の効能があり、胃腸炎の腹痛や顔面浮腫などに用いる。