○橘皮(きっぴ)
中国ではミカン科のオオベニミカン(Citrus tangerina)やコベニミカン(C.erythrosa)などいくつかの柑橘類の成熟果実の果皮を橘皮という。日本ではウンシュウミカンの成熟果実の果皮を陳皮あるいは陳橘皮といい、とくに新鮮なものを橘皮という。
一般に橘皮の古くなったものを陳皮というが、中国では陳皮とあまり区別していない。日本でも橘皮はあまり用いられず陳皮で代用されることが多い。現在、流通している橘皮のほとんどは中国産であるが、日本産の陳皮のほうが中国産の橘皮よりも新しいことがしばしばある。橘皮の成分や効能はほとんど陳皮と同じである。
金匱要略には橘皮の配合される処方として胸が苦しいときに用いる橘皮枳実生姜湯、しゃっくりに用いる橘皮竹茹湯などがある。なお中国では成熟した果実の皮の白い肉質を除いた外側だけの果皮を橘紅、その白い肉質の部分を橘白、内果の周囲にある網状の維管束の部分を橘絡、種子を橘核といい、別々に使用される。
橘紅は橘皮よりも香りと温燥の性質が強く、おもに肺寒の咳嗽に用いられる。橘白は健胃薬として、橘絡は去痰薬として、橘核は止痛薬として応用されている。ちなみにウンシュウミカンの果肉に含まれる色素、βクリプトキサンチンに抗腫瘍作用、脂質代謝改善作用のあることが報告され、注目されている。