○通草(つうそう)
中国南部の各地方に自生するウコギ科の常緑低木カミヤツデ(Terapanax papyriferum)の幹の白い髄を用いる。日本でも温暖地で観賞用に栽培されている。和名のカミヤツデは「紙八手」と書き、ヤツデによく似た茎や掌状の葉を有している。
茎の幹を30cmほどに切り出し、幹の髄を新鮮なうちに取り出し、特殊な刃物で紙のように薄く四角くのばして日干しにする。これはチャイニーズライスペーパー(通草紙)といわれ、かつて造花の材料にも利用された。薬用にも方通草といって、このような薄片を用いることもある。
ところで神農本草経にある通草とは木通のことで、傷寒論の当帰四逆湯に配合されている通草も一般には木通が使用されている。カミヤツデの髄にはリグニン、ペントサン、ガラクタンなどが含まれているが、薬理作用に関しては不明である。漢方では利水・通淋・通乳の効能があり、膀胱炎などの排尿異常や浮腫、母乳不足などに用いる。