○大黄(だいおう)
中国などに分布するタデ科の多年草ダイオウ類の根茎を用いる。ダイオウはおもに中国西北部の海抜2000~3000mの高山に自生し、ギシギシとよく似た植物であるが草丈は2mにも及ぶ。
中国、朝鮮産のダイオウの基原植物にはショウヨウダイオウ(Rhcum palmatum)、ヤクヨウダイオウ(R.offcinale)、タングートダイオウ(R.tanguticum)、チョウセンダイオウ(R.coreanum)などがある。日本産のダイオウには、シベリア原産で江戸時代に渡来したカラダイオウ(R.undulatum)というのがあり、奈良県で古くから栽培されていた。このカラダイオウの根茎は、とくに和大黄という。現在では、武田薬品が信州八ヶ岳山麓で50年の年月をかけて開発した大黄の品種を信州大黄と呼んで、さかんに北海道で栽培が行われている。
大黄は古くから世界中で用いられた下剤であり、中国の神農本草経、インドのチャラカ本草、欧州のギリシャ本草にも記載されている。大黄はその薬効が激しいため将軍という別名もあり、とくに有名な四川省のものを川軍という。また生のものを生軍というのに対し、酒と混ぜて加熱し後に乾燥したものを酒軍という。
大黄の断面には多数の放射状に走る旋紋があり、これを錦紋大黄といい、旋紋のみられないものを品質の劣る土大黄として区別する。ちなみに和大黄はこの土大黄色ひとつである。一般に錦紋系の重質品である西寧大黄が良品とされているが日本では江戸時代からおもに雅黄といわれる軽質品が輸入されている。
大黄の下剤成分としてセンノシド類が知られており、センノシドは腸内細菌によってレイン・アンスロンという活性成分に変換されて大腸で効果を発現する。またアントラキノン類の抗菌・抗炎症作用、リンドレインの抗炎症作用、ラタンニンの血清BUN低下作用なども明らかにされている。
漢方では通便・清熱・瀉火・活血化瘀の効能があり、熱性疾患、興奮症状、瘀血、腹部腫瘤、無月経などに用いる。大黄の瀉下成分は熱に不安定であるため30分以上煎じるとその効果は激減するため、下剤として用いるときには一般に後から煎じる。一方、清熱・活血薬として用いるときには長時間煎じる方が効果は強くなり、、瀉下作用は緩和される。
また酒軍にして用いれば瀉下作用は弱まり、抗炎症作用や駆瘀血作用が強くなる。ただし大黄には子宮収縮作用があり、また母乳に移行するため、妊娠中や授乳中の服用は控えるべきとされている。