○菟絲子(としし)
日本の各地、朝鮮半島、中国に分布するヒルガオ科のつる性一年草ネナシカズラ(Cuscuta japonica)の種子を用いる。そのほかハマネナシカズラ(C.chinensis)およびマメダオシ(C.australis)の種子も用いる。日本では中国産のハマネナシカズラを小粒菟絲子と呼んで区別している。
ネナシカズラは寄生植物で他の植物にからみつき、吸盤で養分を吸収しながら成長する。宿主植物が決まると根に続くころが枯れて根がなくなるためネナシカズラの名がある。
種子の成分にはカロテンやタラキサンチン、ルテインなどが含まれる。漢方では補陽・固精・明目・止瀉・強壮の効能があり、足腰の酸痛、遺精、消渇(糖尿病)、視力低下、排尿障害などに用いる。おもに滋養強壮剤として腎陰虚や腎陽虚になどに用いる。
疲労、腰痛、耳鳴、胃腸障害には熟地黄・山薬・枸杞子などと配合する(左帰飲・右帰飲)。インポテンツや遺精、頻尿、下肢倦怠感などには鹿茸・附子などと配合する(大菟絲子丸)。視力低下や白内障には石斛・菊花などと配合する(石斛夜光丸)。日本でも滋養強壮の薬用酒として菟絲子酒が知られている。