○糖質
糖質は、デンプンや砂糖に代表される炭水化物(糖類)と、これに関連する有機化合物の総称で、植物や動物、菌類などに広く存在する物質である。
炭水化物は、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)の3元素からなり、分子の構造が「炭素」と「水」が化合した「Cm(H2O)n」をしていることから、こう呼ばれている。従来は「糖=炭水化物」とされてきたが、糖の中には、多糖類のキチンのように窒素(N)を含み、炭水化物とは異なる構造を持つものも多数存在することがわかってきた。そのため現在は、炭水化物以外の糖も含め、それらを広く糖質として扱っている。
糖質は脂質・タンパク質と共に三大栄養素の一つであり、主に動物のエネルギー源として利用される。ショ糖やデンプンなど、小腸で消化吸収される糖質1gから得られるエネルギー(熱量)は約4kcalである。これに対し、難消化性オリゴ糖や食物繊維(多糖類)などは消化吸収されずに大腸へ達し、腸内細菌による発酵をうけて短鎖脂肪酸を生産し、0~2kcalのエネルギーとなる。「日本人の食事摂取基準・2005年度版」では、成人が1日に必要とするエネルギー量は、中程度の身体活動レベルで男性が2400~2650kcal、女性が1950~2050kcalとされ、この内、50~70%を糖質(炭水化物)から摂取することを目標量としている。
糖質は単糖類・少糖類・多糖類に分類される。単糖は分子構造的にこれ以上分解されない最小単位の糖で、グルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)などがある。少糖は単糖が2~10個程度結合したもので、オリゴ糖とも呼ばれる。スクロース(ショ糖)やマルトース(麦芽糖)、ラクトース(乳糖)などのほか、これらを材料に酵素の働きを利用してできた高分子化合物で、デンプンやグリコーゲンのように生物のエネルギー源になるもの、セルロースやペクチンのように植物の骨格材料として存在するものなど、数多くの種類がある。
単糖類や少糖類、多糖類には、それぞれに異なった健康機能性がある。食物として摂取した糖質は消化酵素によって最小単位の単糖にまで分解され、小腸壁で吸収される。これらの単糖は門脈を経て肝臓に運ばれ、すべてがグルコースに変えられてエネルギー源となり、一部はグリコーゲン(多糖)に合成されて貯蔵される。また、中性脂肪やアミノ酸に変えられ、貯蔵エネルギーやタンパク質の合成にも利用されている。このほか、一部の単糖はタンパク質などと結合して糖鎖の形になり、血液型の決定や免疫反応、細胞を識別する情報の担い手としても働いている。
少糖は主に甘味料の成分として利用されるが、近年新たに開発される各種オリゴ糖の中には、腸内の有用細菌を増殖させる作用や血糖値低下作用、歯の抗う蝕作用を持つものがある。
また多糖類の内、セルロースやペクチンなどはヒトの消化液では分解されず、消化も吸収もされないことから長らく栄養的に重要視されていなかったが、近年、これらの難消化性多糖類にコレステロールの上昇を抑制する作用や血糖値の上昇を抑える作用、腸の蠕動運動を活発化して排便を促進させる作用のあることがわかり、食物繊維として一躍注目されるようになった。