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水曜日, 7月 30, 2014

蓖麻子

○蓖麻子(ひまし)

 北部アメリカを原産とするトウダイグサ科の木質の草本トウゴマ(Ricinus communis)の種子を用いる。ヒマやカラエとも呼ばれ、日本では冬に枯れるので一年草とされるが、熱帯では多年にわたり生長を続けて草丈が6mを越えることがある。

 種子の大きさは長さ15mm、直径8mmくらいの扁平楕円形で、種皮には光沢があり、暗褐色の斑紋が見られる。古代エジプトの最古の医学書にも薬物として収載されているもので、日本には中国から9世紀ころに渡来した。このため唐胡麻という名がある。種子を圧搾して得られる脂肪油をヒマシ油という。

 現在ではブラジルやインドなど世界各地で栽培され、その油は印刷用インクなどの工業用や化粧品原料などに利用されている。かつては航空エンジンの潤滑油としても利用されたことがある。

 種子には30~50%の脂肪油が含まれ、成分としてリシノール酸やステアリン酸などのグリセリドのほか、毒性タンパクのリシン、有毒アルカロイドのリシニンなどが含まれている。リシンやリシニンには催吐、降圧、呼吸中枢麻痺などの毒性があり、小児では5~6個、成人では20個より多く食べると死亡するといわれる。

 リシノール酸のグリセリドが腸管の中で分解されてリシノール酸ナトリウムを生じ、これが小腸粘膜を刺激して腸管の蠕動を亢進させる。それと同時に油やグリセリンの粘滑作用も加わり、2~4時間で排便がみられる。このため食中毒のとき、あるいは検査や手術の前処置として健やかな便の排出を目的として利用される。

 漢方ではあまり用いられず、民間療法では生のまま削ったり、炒ったものを瀉下剤として単独で服用する。しかし、一般にはおもに殻を除いて泥状につぶしたものを外用薬として用いる。たとえば腫れ物の初期や火傷、犬の噛傷の患部に塗布する。

 また独特の治療法として顔面神経麻痺には患部および手掌、子宮下垂や脱肛には百会、難産の時には湧泉といった経穴に塗布する方法がある。