〇キクカ(菊花)
キクカ(菊花)はキク科の植物で、釣藤散、菊花散などに配合されるなど、生薬として用いられている。日本薬局方外生薬規格集が規定する基原は「Chrysanthemum indicum又はそれらの種間雑種の頭花」とされている。中国の中華人民共和国薬典ではこの2つを区別し、キクおよびその品種の頭状花を乾燥したものを「菊花」、シマカンギクまたはその近縁種の頭状花を乾燥したものを「野菊花」としている。
菊花は味が甘く料理や喫茶用にも用いるが、野菊花は味が苦く食用には用いられない。中国では神農本草経の上薬に収載されるほか、唐代の「新修本草」、明代の「本草綱目」にも記載されている。日本では「本草和名」「医心方」にも記載されており、古くから薬物と考えられてきた。薬能としては「菊花は能く頭目風熱解し、肝を平らにし、目を明らかにする効がある」と言われ、風邪をひいて熱のある者、頭痛でフラフラする者、目が充血して痛む者、あるいは目がかすむ者に用いるとされる。特に野菊花については清熱、解毒の効に優れており、悪性のおでき、目の充血や腫れ、あるいは頭が痛くてフラフラするときによいとされる。含有成分は精油、セスキテルペン、フラボノイドおよびその配糖体が知られている。
近年の研究では、菊花には抗原抗体作用および毛細血管抵抗力増強作用が、また野菊花には降圧作用および抗菌・ウイルス作用が報告されている。京都薬科大学生薬学教室では、野菊花に糖尿病合併症予防が期待できるアルドース還元酵素阻害活性と、血管内皮機能を調節するNOの産生抑制活性を見出している。また抗アレルギー作用のある新規成分型として、3種のオイデスマン型セスキテペンと5種のゲルマクラン型セスキテルペン、2種のフラバノン配糖体、1種のフェニルブタノイド配糖体を単離し化学構造を決定するとともに、野菊花の抗アレルギー作用成分を見出し、フラボノイド類における構造と活性、アレルギー反応を有意に抑制する作用機序を明らかにしたことを報告している。