○クラーレ
南アメリカ大陸の熱帯低地、アマゾン川やオリノコ川流域などで原住民が矢毒として用いていた黒褐色の植物性毒物のことをいう。各地域で毒物の貯蔵容器が異なるため、その容器によりアマゾン川流域の竹筒クラーレ(tubo-curare)、オリノコ川流域の壺クラーレ(pot-curare)、ギアナ、コロンビア地方の瓢箪クラーレ(gourd-curare)に区別される。
これらの基原植物はひとつではなく、マチン科の植物Strychnos castelnaei、ツヅラフジ科の植物Chondrodendron tomentosumなどが知られている。竹筒クラーレはツヅラフジ科の植物、壺クラーレはツヅラフジ科やマチン科の植物、瓢箪クラーレはマチン科の植物を用いている。これらの樹皮や材をよく煮詰めた煮汁がクラーレで、これを狩猟の際の矢の先に塗る。この毒を射込まれた動物は痛むことなく筋肉が弛緩して動かなくなり、呼吸麻痺で死亡する。しかもこの動物をすぐに食べても、有毒物質は消化管から吸収されないため中毒を起こさない。
これらのクラーレから多数のアルカロイドが分離されているが、ツヅラフジ科の植物から得られたツボクラリンが有名である。ツボクラリンは運動神経の伝達物質であるアセチルコリンと拮抗し、アセチルコリンの作用を失活させる。ツボクラリン塩化物(アメリゾール)は手術時の筋弛緩薬として用いられている。