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木曜日, 9月 26, 2013

草豆蔲

○草豆蔲(そうずく)

 台湾、海南島など中国南東部に分布するショウガ科の多年草アルピニア・カツマダイ(Alpinia katsumadai)の成熟した種子塊(果実)を用いる。従来、「名医別録」などに記載されている豆蔲は草豆蔲のこととされているが、形態から検討すれば別の植物という説もある。現在、豆蔲とか蔲仁と称されているものは白豆蔲のことである。

 草豆蔲の果実は直径約2cmの球形をした団塊上で三部に分かれ中に3mm前後の多数の種子がびっしりついている。種子には精油成分のαフムレンやカンフェン、フラボノイドのアルピネチンやカルダモミンが含まれ、芳香性の健胃作用が認められている。

 簡保では健脾・止嘔の効能があり、腹痛、嘔吐、下痢、食欲不振、唾液過多などの症状に用いる。急性胃炎などで胸や心窩部が痛んで嘔吐するときには枳実・縮砂などと配合する(枳縮二陳湯)。腹が冷えて脹満したり、痛むときには厚朴・乾姜などと配合する(厚朴温中湯)。

火曜日, 9月 24, 2013

桑椹子

○桑椹子(そうじんし)

 クワ科の落葉高木クワの花穂についたままの果実を用いる。中国ではおもにトウグワ(Morus alba)を用い、日本ではヤマグワ(M.bombycis)を用いる。クワの葉は桑葉、根の皮は桑白皮、幼枝は桑枝という。

 果実は多汁で甘酸っぱく、欧米ではアカミグワ(M.rubra)やクロミグワ(M.nigra)などが食用に栽培され、マルベリー(Mulberry)と呼ばれている。また欧米では果実をジャムのほか、ブドウ酒と同様に発酵させた桑実酒がつくられている。日本でも生のまま焼酎に漬けたクワの実酒がよく知られている。薬用には紫紅色に熟したときに採取される。

 果実には有機酸や糖類、ビタミンB1・B2・C、カロテンが含まれる。漢方では肝腎、特に血分を補う補養薬の効能があり、口渇や便秘、体力の低下、眩暈などに用いる。

 高齢者にみられる眩暈や視力低下、口渇、盗汗などには何首烏・女貞子などと配合する(首烏延寿丹)。老人の便秘や眩暈になどには単独で煮つめて膏剤とする(桑椹子膏)。焼酎につけた桑椹酒には五臓を補い、耳や目の機能を強めるといわれている。

月曜日, 9月 23, 2013

蒼朮

○蒼朮(そうじゅつ)

 中国大陸に分布するキク科の多年草ホソバオケラ(Atractylodes lancea)やシナオケラ(A.chinensis)などの根茎を用いる。中国から輸入されている唐蒼朮のうちホソバオケラの根茎をとくに古立蒼朮あるいは茅朮という。

 日本ではオケラ(A.japonica)を和白朮と称しているが、中国の地方によってはオケラも蒼朮のひとつとされている。もともと日本にはオケラ一種しかなかったが、江戸時代に中国から渡来してホソバオケラを栽培して佐渡蒼朮と称している。古立蒼朮は密閉貯蔵すると白い毛状の結晶が析出し、良品とされている。

 朮には蒼朮と白朮があるが、その区別に関して日本薬局方にはアトラクチロジンを多く含んで、アトラクロチンを主成分としてアトラクチロジンを含まないものを白朮と規定している。ただしシナオケラ(商品名:西北蒼朮)にはアトラクチロンが少量含まれている。そのほか蒼朮の成分にはヒネソールやβオイデスモールも含まれ、これらの結晶の断面から白い綿のように析出している。

 漢方では白朮には主に胃腸の湿を除いて健胃・滋養する作用があるのに対し、蒼朮には体内の湿(内湿)だけでなく、体表の湿(外湿)を除いて関節の腫脹や疼痛を改善する作用がある。

土曜日, 9月 21, 2013

蒼耳子

○蒼耳子(そうじし)

 日本各地に自生するキク科の一年草オナモミ(Xanthium strumarium)の果実を用いる。オナモミはユーラシア大陸に広く分布し、日本にも古くから帰化して普通に見られる植物である。近年では北米原産の帰化植物であるオオオナモミ(X.occidemtale)が多くなっている。

 トゲのある果実は衣服によくひっ付くが、オナモミの「ナモミ」とは引っかかるという意味の「ナゴム」に由来する。また蒼耳とは婦人の耳飾りに似ていることによる。果実を包む総苞には多数のかぎ状の刺があり、動物に付着して分散される特徴がある。

 果実の成分としてキサントール、キサンツミンが知られ、キサンツミンには中枢神経の抑制作用があり、有毒である。果実のほかに葉や茎にも神経毒が含まれ、中毒症状として眩暈、頭痛、嘔吐、下痢、蕁麻疹、さらには意識障害や痙攣、肝機能障害などが出現する。

 漢方では鼻孔(窮)を通じ、風湿を去る効能があり、感冒による頭痛、鼻炎、歯痛、四肢のしびれや痛み、皮膚病などに用いる。急性・慢性鼻炎や蓄膿症、アレルギー性鼻炎などには辛夷などと配合する。炎症性の鼻づまりには菊花・金銀花と配合する(鼻淵丸)。鼻がつまって頭痛がするときには辛夷・白芷などと配合する。

金曜日, 9月 20, 2013

桑枝

○桑枝(そうし)

 日本産は北海道から九州、朝鮮半島、中国に分布するクワ科の落葉高木ヤマグワ(Morus bomnycis)の幼枝を用いる。中国産は中国、朝鮮半島を原産とするトウグワ(M.alba)を用いる。クワはおもに養蚕用に栽培され、毎年刈り込まれているため低木になっているが、自然状態では樹高は10mに達する。

 生薬ではクワの葉を桑葉、根の皮を桑白皮、果実を桑椹子という。桑枝は晩秋から初夏に採取し、葉を取り除いた直径0.5~1cmくらいの枝を用いる。

 漢方では去風湿の効能があり、関節の痛みや四肢のひきつり、搔痒感、浮腫などに用いる。関節リウマチや関節炎などで腫れて痛むときには羗活・独活などと配合する(程氏蠲痺湯)。上海の民間療法では関節痛に虎杖湯や臭梧桐根などと配合して用いる(桑枝虎杖湯)。

 桑枝のみを濃く煎じた液に砂糖を加えて膏剤にした桑枝膏は四肢の関節痛や麻痺に用いられている。ちなみに日本では桑枝をクワ茶として飲用している。

木曜日, 9月 19, 2013

皂莢

○皂莢(そうきょう)

 日本産のものはマメ科のサイカチ(Gleditsia japonica)、中国産(G.sinensis)のものはトウサイカチの果実を用いる。日本の本州、四国、九州に分布するサイカチの豆果は長さ25cmくらいでねじれている。

 トウサイカチの豆果の長さは同じくらいであるが、まっすくで肉厚である。熟すと濃く褐色になり、中には扁平楕円形な種子が多数入っている。中国では小形の果実を特に猪牙皂というが、これはトウサイカチの木が衰えたときなどにできたものといわれている。

 果皮にはサポニンが多く含まれ、石鹸の代用として利用されていた。莢や種子にはサポニンのグレジシアサポニンやグレジニン、スチグマステロールなどが含まれ、去痰作用や抗菌作用が報告されている。ただしサポニンには溶血作用や胃腸粘膜の刺激作用があり、過量に服用すると嘔吐、下痢が出現し、さらには中枢神経にも影響する。

 漢方では開竅・去痰・止瀉の効能があり、脳卒中や顔面神経麻痺、発作性の頭痛、咳嗽、喀痰、下血、下痢などに用いる。猪牙皂は開竅の作用が強いとされている。

 脳卒中や失神などで急に意識不明となったときには細辛と共に粉末にしたものを鼻に吹き込んで覚醒させる(通関散)。明礬と共に粉末にしたものを口に流し込んで嘔吐させる方法もある(稀涎散)。痰が多く、胸に痰が痞え苦しく、横にもなれないときに細辛・麻黄などと配合する(冷哮丸)。なお皂莢子には潤腸・解毒・消種の効能があり、便秘や皮膚疾患などに用いる。

水曜日, 9月 18, 2013

蚤休

○蚤休(そうきゅう)

 中国各地に分布しているユリ科の多年草、金線重(Paris polyphylla)や七葉一枝草(P.polyphylla var.chinensis)、そのほか数種類の同属植物の根茎を用いる。ただし、蚤休草河車と称されている基原植物は混乱しており、しばしばタデ科のイブキトラノオ(Polygonum bistorta)の根が流通している。このイブキトラノオの根は、本来、拳参という。

 蚤休の成分にはパリフィリン、パリジン、バリスチニンなどが含まれ、鎮咳・去痰作用や抗菌作用などが知られている。毒性もあり、過量に服用すれば悪心、嘔吐、頭痛がみられ、ひどければ痙攣が現れる。近年、成分のステロイド様サポニン、ポリフィリンDに癌細胞に対してアポトーシスを誘導する抗癌作用が認められ、肝癌や乳癌など様々な悪性腫瘍に対する研究が行われている。

 漢方では清熱・解毒・止咳・鎮驚・消種の効能があり、小児の熱性痙攣、肺炎、気管支炎、喘息、マラリア、脳炎、扁桃炎、腫れ物や蛇咬傷などに用いる。たとえば毒蛇に咬まれた時には内服と併せて創口の周囲に湿布する。また腫れ物や乳腺炎、耳下腺炎、神経性皮膚炎などの患部にも湿布する。

月曜日, 9月 16, 2013

桑寄生

○桑寄生(そうきせい)

 さまざまな樹木に規制するヤドリギ科の常緑小低木ヤドリギ(Viscum album var.coloratum)やオオバヤドリギ(Taxillus yadoriki)、桑寄生(Scurrula parasitica)などの茎葉を用いる。日本では、近年までサルノコシカケ科の菌体も桑寄生と呼ばれ、断面の赤黒いものを梅寄生、白いものを桑寄生と称して誤用されていた。

 ヤドリギ科の植物は半寄生性の植物で、樹木に寄生するが葉緑体も有している。たとえばヤドリギはニレ科、ブナ科、バラ科、クワ科などの植物に寄生する。本来、桑寄生とはクワの老大木に寄生するものを指している。日本のヤドリギ科の植物にはヤドリギやアカミヤドリギのほか、マツ科に寄生するマツグミ(Taxillus kaempferi)などがある。ヤドリギは鳥が果実を食べて種子を運ぶ鳥散布型で、鳥の消化管を通過しても種子に粘着性が残っており、その種が他の樹木に付着する仕組みになっている。

 宿木の茎葉にはオレアノール酸、アビクラリン、イノシトール、ケルセチン、ルペオールなどが含まれている。漢方では補肝腎・去風湿・強筋骨・安胎の効能があり、肝腎を補って筋骨を強め、風湿を除いて腰や関節の痛みを和らげ、胎動不安や妊娠時の出血を治す。

 腰痛には独活・防風などと配合する(独活寄生湯)。近年、桑寄生は高血圧や狭心症の治療にも応用されている。また日本の民間療法ではマツグミをマツの緑と称し、糖尿病や高血圧などに用いている。ヨーロッパでは古くからセイヨウヤドリギ(V.album)を躁鬱病や癲癇、高血圧などに用いている。

金曜日, 9月 13, 2013

皂角刺

皂角刺(そうかくし)

 日本においてはマメ科のサイカチ(Gleditsia japonica)、中国ではトウサイカチ(G.sinensis)の刺を用いる。サイカチは日本の中部以南、四国、九州に分布し、川原など水辺に生える落葉高木で、カワラフジノキともいわれ、サイカチの名は種子の皂角子に由来する。

 サイカチの幹や枝には太くて鋭い刺があるが、刺は枝が変化したものである。かつては日本でも採取していた。サイカチの果実は皂筴、種子は皂角子といい薬用にする。

 樹皮や刺にはアルカロイドのトリアカンチンやタンニンが含まれているる。トリアカンチンにはパパベリン様作用があり、高血圧や喘息、潰瘍などに有効といわれている。

 漢方では消腫・解毒・排膿の効能があり、腫れ物やでき物、ハンセン病(癩病)、乳腺炎などに用いる。皮膚化膿症の初期には金銀花や生甘草を配合して消退させ、腫張しているときには黄耆・当帰などを配合して自壊を促進して治す(皂裏消毒飲)。

木曜日, 9月 12, 2013

草果

○草果(そうか)

 中国の雲南・広西・貴州省に分布するショウガ科の多年草アモムム・ツァオコ(Amomum tsao-ko)の果実を用いる。果実は褐色の長さ2~3cm、直径1~2cmの楕円形で、中が三室になり、各室には10個前後の多年体の小さな種子が固まって入っている。果実には特徴的なにおいと辛味があり、中国ではアヒルや鶏の煮込み料理などの香辛料として用いている。

 果実には精油のピネン、ボルネオール、カンフェンなどが含まれる。漢方では芳香化湿・消食・健胃・抗瘧の効能があり、消化不良による腹部膨満感や悪心、嘔吐、胸の痞え、下痢、マラリアなどに用いる。草果は温性の芳香健胃薬であり、とくに肉食の消化不良に効果がある。

 胃腸型感冒などで発熱と下痢のみられるときには藿香・蒼朮などと配合する(人参養胃湯)。マラリアなどで高熱が続くときには柴胡・黄芩などと配合する(九味清脾湯)。またマラリアの治療に常山の補助薬として用いられ、常山の副作用である嘔気を抑制する。

水曜日, 9月 11, 2013

草烏頭

○草烏頭(そううず)

 キンポウゲ科の多年草トリカブト類の母根を烏頭といい、とくにカラトリカブト(Aconitum carmichaeli)やエゾトリカブト(A.kusnezoffii)などさまざまな野生種のトリカブト類の根を総称して草烏頭という。つまり四川省などで産する栽培品種の川烏頭と区別された呼称である。

 日本では佐渡島などに産する野生種のトリカブトを草烏頭と称して扱っている。また韓国産の草烏頭はミツバトリカブトである。川烏頭と草烏頭は明代以前には烏頭と総称されており、本草綱目ではじめて区別されたといわれる。またトリカブト類が栽培されるようになったのは、宋代以降と考えられている。

 一方、中国で一般に附子といえば減毒処理されたものをいうが、これに対して烏頭はほとんど減毒処理を受けていない。このため附子より烏頭のほうが毒性が強い。しかも川烏頭と草烏頭とを比較すれば、草烏頭のほうが毒性が強い。そのほか性味や効能は川烏頭とほぼ同じである。

 1804年、華岡青洲が乳癌の手術に用いた全身麻酔薬、通仙散の中には曼荼羅華・天南星などとともに草烏頭が配合されていた。

火曜日, 9月 10, 2013

川楝子

○川楝子(せんれんし)

 中国の四川・河北・湖南・河南省などに分布するセンダン科の落葉高木トウセンダン(Melia toosendon)の果実を川楝子という。センダンは日本だけでなく世界各地で公園樹や街路樹として利用されているが、変種が多くて分類が困難である。

 一般に中国ではセンダンを楝樹といいい、タイワンセンダンを苦楝、トウセンダンはその主産地の四川省の名を冠して特に川楝という。しかし市場では習慣的にトウセンダン(川楝)の樹皮は苦楝皮として、一方、タイワンセンダン(苦楝)の果実は川楝子として扱われている。日本ではおもにタイワンセンダンの果実が流通している。タイワンセンダンの果実はやや小型で、毒性が強いといわれている。

 トウセンダンの果実にはトウセンダニン(メルソシン)、タンニン、リンゴ酸などが含まれ、トウセンダニンには回虫に対する殺虫効果がある。漢方では理気・止痛・駆虫の効能があり、さまざまな腹痛、例えばストレスや情緒と関係した腹痛や脇通で、張ったような重苦しい間欠的な痛みや、陰囊などの下腹部痛(仙痛)、寄生虫による腹痛に用いる。

 腰や股間に響くときには当帰・附子・茴香などと配合する(当帰四逆湯)。回虫による腹痛には烏梅・花椒などと配合する(椒梅湯)。このほか川楝子をあぶって粉にしたものを急性乳腺炎のときに服用したり、シラクモ(頭部白癬)などに外用する。

月曜日, 9月 09, 2013

仙芧

○仙芧(せんぽう)

 本州の中国地方以南、東アジア、オーストラリアなどに広く分布するキンバイザサ科の多年草キンバイザサ(Curculigo orchioides)の根茎を用いる。葉は笹に似て、花が黄色くて金梅を思わせるため金梅笹という名がある。

 一方、仙芧といのは葉がカヤ(茅)に似て、長く服用すれば体が軽くなるということより名づけられたという。バラモンの僧が唐の皇帝玄宗に仙茅を献上したことから娑羅門参という名もある。

 漢方では腎陽を温め、筋骨を壮んにする効能があり、腰痛、下肢萎弱、インポテンツ、尿失禁、耳鳴りなどに用いる。更年期障害や眩暈、高血圧、自律神経失調症に威霊仙・巴戟天などと配合する(二仙湯)。日本では一般薬のナンパオなどに配合されている。ただし毒性があり、過量に服用するのはよくないとされている。

土曜日, 9月 07, 2013

センブリ

○センブリ

 日本の各地や朝鮮半島などにも分布するリンドウ科の1~2年草センブリ(Swertia japonica)の全草を用いる。一般には開花期に採取する。

 センブリは日本以外にも分布するが、日本独自の民間薬である。中薬大辞典では同属植物の当薬(S.diluta)を淡味当薬の生薬名で収載しているが、中国ではほとんど用いられていない。ちなみにカシミールからブータンにかけて分布する同属植物のチレッタ草(S.chirata)をインドやチベットでは古くから健胃薬、解熱薬として用いている。日本では室町時代末期から薬草として知られ、千回振り出しても苦味があることからセンブリといわれる。

 苦味成分としてスウェルチアマリン、スエロサイド、ゲンチオピクロサイトなどの配糖体が含まれ、スウェルチアマリンには胆汁、膵液、唾液などの分泌を促進する作用がある。古くは殺虫剤として肌着の染料にして蚤や虱の虫よけや、屏風やを張る糊に混ぜて虫よけに用いられた。その後、苦味の強い胡黄連の代用として利用されていたらしい。ただし代用品になるかどうかの定説はない。

 蘭方のゲンチアナと同じ苦味健胃薬として使われ始めたのは江戸時代末で、西洋医学の影響があったとも考えられる。明治25年には竜胆の代用品として日本薬局方にも収載され、苦味健胃薬として今日でも家庭薬に配合され、胃痛、消化不良、食欲不振の治療に応用されている。

 近年ではセンブリのエタノール抽出エキス(スエルチオール)が育毛剤として注目されている(薬用紫電改)。民間療法ではセンブリの煎液を頭虱を除去するための洗髪料や結膜炎の洗浄液としても利用している。

金曜日, 9月 06, 2013

旋覆花

○旋覆花(せんぷくか)

 日本の各地、朝鮮半島、中国に分布するキク科の多年草オグルマ(Inula japonica)および同属植物の頭花の部分だけを用いる。またオグルマの全草は金沸草として薬用にする。

 オグルマは野原や田畑などの湿ったところに生え、夏から秋にかけて黄色い花が咲く。花は中央の管状花の周りを整然と一列の舌状花が取り囲み、これを小さな車に見立ててオグルマという名がある。旋覆花という名も、周囲の舌状花が花序を覆うことを意味する。

 花の成分にはブリタニン、イヌリシン、クロロゲン酸などが含まれるが、詳細は不明である。漢方では去痰・止咳・止の効能があり、胸の痞塞感や咳嗽、喀痰、オクビ、嘔吐、しゃっくりなどに用いる。

 このように旋覆花には痰を除き、気を降ろす作用があり、嘔気や咆逆などの消化器症状、咳嗽、喀痰などの呼吸器症状に応用される。ただし、そのまま使用するとかえって嘔気や嘔吐を催すこともあるので蜜炙して用いたほうがよい。

 胸が痞えてオクビがでたり、嘔気や嘔吐のある場合には代赭石などと配合する(旋覆花代赭石湯)。粘稠な痰が胸に凝結して食べ物が下がらないときに附子・細辛などと配合する(旋覆花湯)。

木曜日, 9月 05, 2013

川貝母

○川貝母(せんばいも)

 中国では貝母を浙貝母と川貝母に区別する。浙貝母は、ユリ科のアミガサユリ(Fririllaria veticillata)の鱗茎であるが、川貝母にはアミガサユリと同属植物の巻葉貝母(F.cirrhosa、烏花貝母F.cirrosa var.ecirrhora、稜砂貝母F.delavayi)の鱗茎を用いる。

 川貝母の基原植物は一般に四川省をはじめ、雲南省、チベット自治区の高山地帯に分布している。これらの鱗茎(川貝母)はアミガサユリの鱗茎(浙貝母)よりも小さい。

 川貝母にはペイミン、ペイミニン、フリチミンといったアルカロイドが含まれ、鎮咳、去痰、排膿作用が知られている。漢方では止咳・化瘀・潤躁・散結の効能があり、咳嗽、喀痰、喀血、胸の塞がり、瘰癧(頸部リンパ腺腫)、扁桃炎、乳腺炎などに用いる。

 適応は浙貝母とほぼ同じであるが、浙貝母が急性の咳嗽に適しているのに対し、やや慢性化した呼吸器感染症に用いる。一般に川貝母は虚証に、浙貝母は実証に用いる。また川貝母には潤肺作用があるので、痰が少ないとか痰に血が混じっているような肺陰虚の症状に適している。さらに去痰すると同時に痰の分泌を抑制する作用もあり、痰の多いときにも使用できる。気分が落ち込み、胸が塞がり、食欲がないときにも川貝母が適する。ただし、日本では一般に貝母といえば、浙貝母のことをいう。

水曜日, 9月 04, 2013

センナ

○センナ

 アフリカを原産とする常緑低木、マメ科のセンナ(Cassia acutifolia)やホソバセンナ(C.angustifolia)の小葉を用いる。中国では異国の瀉下薬という意味で番瀉葉と呼ばれている。

 センナはアレキサンドリアセンナとも呼ばれ、ナイル川流域で栽培されるもので、アレキサンドリアとはエジプトの集散地の名前である。ホソバセンナはチンネベリセンナとも呼ばれ、アフリカ東岸やアラビア、インドなどに産するもので、チンネベリはインド南部の栽培地の名前である。現在、中国の海南島や雲南省でもアレキサンドリアセンナが栽培されている。現在、日本に輸入されているのはおもにチンネベリセンナである。

 センナは最古の医学書である「エーベルス・パピルス」にアロエなどとともに収載されている下剤であり、古くからアラビア医学で使用されていた生薬である。今日でも欧米諸国で繁用され、日本には明治以降に西洋医学の薬物として導入されたものである。

 成分にはアントラキノンのレイン、アロエエモジン、ジアンスロン配糖体のセンノサイドA~Dなどが含まれる。センノサイド類は経口では強い瀉下作用があるが、静脈内投与では効果がみられない。センノサイドA・Bは腸内細菌によりレインアンスロンが生じ、これにより瀉下作用が発現する。

 センナは少量で苦味健胃薬となり、消化を促進する。適量を用いれば緩下作用を起こす。センナの成分を製剤化したものがプルゼニドである。漢方処方に配合されることは余りないが、家庭用の下剤には単独で、あるいは配合されて用いられている。センナには子宮収縮作用もあり、妊婦には用いない。ちなみにセンナ、大黄、アロエなどの生薬などのアントラキノン系下剤を連用すると大腸に色素沈着(大腸メラノーシス)が発現する。

火曜日, 9月 03, 2013

蝉退

○蝉退(せんたい)

 中国ではセミ科のクマゼミによく似た黒蚱(Cryptotympana atrata)の羽化後の抜け殻、日本ではアブラゼミやクマゼミの抜け殻を用いる。ただし市場品の種類は多く、黄金色で透明なものを金蝉衣、灰褐色で光沢のないものを土蝉衣という。

 成分は明らかではないが、抗痙攣鎮静作用、神経節遮断作用が報告されている。漢方では散風熱・透疹・止痒・退翳・解痙の効能があり、熱性疾患、咽頭腫脹、嗄声、発疹、掻痒症、目の翳障、ひきつけ、腫れ物などに用いる。とくに小児科領域で用いることが多い。

 麻疹の透疹を促進するために葛根・牛蒡子・薄荷などと併用する。炎症性の目の充血や角膜混濁などには菊花などと配合する。湿疹や皮膚掻痒症には荊芥・防風などと配合する(消風散)。破傷風の痙攣には天麻・全蝎・白僵蚕などと配合する(五虎追風散)。夜泣きや小児のひきつけには釣藤・薄荷などと併用する。化膿症や中耳炎には粉末にして塗布する治療方法もある。近年、中国では破傷風、慢性秦麻疹、化膿性中耳炎などに対する臨床研究が報告されている。

月曜日, 9月 02, 2013

茜草根

○茜草根(せんそうこん)

 日本をはじめ中国・東南アジアからヒマラヤにかけた広く分布するアカネ科の多年草アカネ(Rubia cordifolia)の根および根茎を用いる。

 根が赤いことからアカネという名があるが、アカネは古くから茜染めの染料として有名である。茜染めはあらかじめ灰汁につけて乾かした布を、根を煎じた液で数十回も浸して染めるもので、灰汁の濃さで赤から黄色になる。色素成分のアリザリンが合成されるようになってから染料としての栽培はすたれてしまった。現在、工芸染料としては専らセイヨウアカネ(R.tinctorum)が用いられ、日本のアカネは用いられていない。

 アカネの根にはオキシアントラキノン誘導体のプルプリン、ムンジスチンなどが含まれ、止血、抗菌、去痰作用などが認められている。漢方では止血・活血の効能があり、子宮出血や鼻出血、吐血、あるいは無月経や産後の悪露に用いる。生で用いると活血作用が強く、炭にしたものは止血作用が強い。

 喀血や吐血、鼻血、歯肉出血などには大薊・小薊などとともに炭にして用いる。(十灰散)。ヨーロッパでは古くから赤色染料の原料として栽培されているセイヨウアカネも黄疸、浮腫、無月経、尿路結石などの治療に用いられていた。2004年、厚生労働省はセイヨウアカネから抽出されたアカネ色素の発癌性が報告されたため、食品添加物としての使用を禁止した。