○あり(蟻)
中国南部の広西省、雲南省に分布するアリ(Polyrhachis vicina)を用いる。アリは南極と北極を除いて世界中に分布し、現在約8800種が知られており、日本でも277種のアリが報告されている。
中国南部や東南アジアではツムギアリを、オーストラリアのアボリジニはミツツボアリを食用にする習慣がある。日本ではアリを薬用に用いた記録が名類聚抄(932年)にあり、中国の本草書、本草綱目(1578)にも記載されている。中薬大辞典には、四川中薬誌を出典として黒蟻(Formica fusca)を黒螞蟻として収載されている。擬黒多刺蟻は、中国政府衛生部が唯一、食用と薬用に認定している種類といわれている。
アリには、タンパク質と脂肪、ビタミンB1・B2・B12、Eなどのビタミン類、蟻酸、クエン酸、酢酸などの有機酸のほか、亜鉛、カルシウム、鉄、マンガン、セレンなどのミネラルのほか、昆虫脱皮ホルモンのエクジステロンなどが含まれている。
中国では補腎、扶正、止痛、安神などの効能があるとして、滋養強壮、免疫機能の改善、抗炎症、老化防止などの目的で用いられている。臨床的には、リウマチ、関節痛、神経痛、生活習慣病、慢性肝炎、性機能減退などに効果があると謳われている。中薬大辞典では黒螞蟻を蛇咬傷や腫れ物の外用薬として紹介している。