○貝母(ばいも)
中国原産で日本でも切り花や鉢植えに栽培されているユリ科の多年草アミガサユリ(Fritillaria verticillata)の鱗茎を用いる。貝母という名は2つの厚い鱗片が、母貝が小貝を抱いたように合わさっていることに由来する。日本の古名のハハクリ(母栗)の語源も形が栗のようで、子を抱く母の姿に似ていることによる。また花の内側に紫色の網目模様があるためアミガサユリ(編笠百合)の名がある。
日本産の貝母は奈良県で栽培され、大和貝母と呼ばれている。中国では貝母は川貝母と浙貝母に区別され、浙貝母は日本産と同じアミガサユリの鱗茎であるが、川貝母はその他の同属植物、巻葉貝母、烏花貝母、稜砂貝母などの鱗茎である。ただし日本の輸入されているほとんどは浙貝母である。
浙貝省象山県を原産とするため浙貝母といい、また象貝母ともいわれる。川貝歯は四川省を主産地とする。いずれの貝母も化痰・止咳の効能があり、咳嗽、喀痰、咽頭痛などに用いる。川貝母のほうが薬性は穏やかで、潤す性質があるため、慢性化した気管支炎や痰の少ないときに用いる。浙貝母は清熱作用にすぐれ、急性の気管支炎やなどで炎症が激しく粘稠痰の出るときに適している。なお土貝母というのはウリ科の植物の塊茎で薬材の形は似ているが貝母とは全く別の生薬である。