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木曜日, 2月 28, 2013

刺五加

○刺五加(しごか)

 北海道、朝鮮半島根中国北部、シベリアに分布するウコギ科の落葉低木エゾウコギ(Acanthopanax senticosus)の根及び根茎を用いる。従来、エゾウコギは中国では五加皮の基原植物の一つとされていたが、近年、とくに刺五加あるいは五加参という名で区別され、黒龍江省で良品が栽培されている。ウコギには刺がないため、トゲのあるエゾウコギを刺五加という。

 1960年代、旧ソ連の保健省はエゾウコギの根の液状エキスを強壮薬として認可し、またソ連化学アカデミーの研究でも人参サポニンより優れていると発表して世界中で注目された。

 成分には各種ビタミン、ミネラルのほか、トリテルペノイド系配糖体のエレウテロサイドA~G、イソフラキシジン、クロロゲン酸、サポニン配糖体、多糖類などが含まれ、免疫力の強化、抗疲労、抗ストレス、鎮静、降圧、抗アレルギー作用、滋養強壮作用などが知られている。

 漢方では五加皮と同様に去風湿・強筋骨・強壮の効能があり、リウマチなどによる関節痛や筋肉痛、腰や膝の筋力低下、インポテンツなどに用いる。製剤されたものに五加参精、狭心症、足腰の萎弱、性機能低下などに用いる。

月曜日, 2月 25, 2013

嗜好料

○嗜好料(しこうりょう)

 一般に刺激や芳香、爽快感、催酔性を楽しむためのもので、とくに栄養価や薬用的な目的を持たずに習慣的に利用されるものを嗜好料という。本来は宗教的、儀礼的な目的や、薬用的な意味を持ったものが、いつの間にか嗜好品になったものがほとんどである。ガムや噛みタバコのような噛み料、タバコなどの嗅ぎ料がある。

 現在、世界中で利用されている嗜好料にはアジア原産の茶、エチオピア原産のコーヒー、南アメリカ原産のタバコやカカオなどがある。また東アフリカ海岸部からインド、東南アジア、オセアニアにかけては檳椰子を石灰にまぶし、キンマの葉で包んで噛むという、ベテル・チューイングの習慣がある。そのほか南アメリカにはモチノキ科のマテの葉を乾燥したマテ茶、ムクロジ科の種子を砕いて練り固めたガラナを飲料として飲む風習、またコカの葉を噛む習慣がある。

 中東のイエメンやソマリア、エチオピアなどでは、興奮作用のあるカーと(アラビアチャノキ)を集まって噛む風習がある。西アフリカにはアオギリ科の高木、コーラの実を噛み砕いて食べる習慣がある。またオセアニア地域にはコショウ科の低木、カバカバ(カワカワ)の根を乾燥させ、砕いて混ぜて搾り出したものを飲む習慣がある。

土曜日, 2月 23, 2013

紫梗

○紫梗(しこう)

 インドやビルマなどに産するカイガラムシ科(アリマキ科)のラックカイガラムシ(Laccifer lacca)が樹木に分泌した膠物質を用いる。中国でも雲南省や四川省に産し、一般に紫草茸といわれている。日本ではこれを没薬あるいは花没薬といい、正倉院にも没薬の名で収蔵されている。

 ラックカイガラムシの雄は体長2~3mmくらいで朱紅色をしているが、雌には肢がなく円球状をしている。孵化した後に寄生している樹木の枝葉に集まり、雌は樹液を吸って紫色の膠質のものを分泌する。最初は半流動体であるが、乾燥すると固くなる。次第に枝はこの膠質物質で取り巻かれ、十分に形成された頃に収穫する。これをスティック・ラックといい、紫梗として用いる。

 外観は紫色で堅く、熱にあうと軟化して粘る。これからアルカリ性水溶液で抽出された赤色染料はラック色素(胡臙脂)であり、絵の具や食品の着色料などに用いられる。残りを精製したものからセラックができるが、これはワニスや絶縁材料、錠剤などのコーティング剤として用いられる。紫梗の色素成分はアントラキノン化合物の一種であるラッカイン酸である。

 漢方では清熱解毒の効能があり、麻疹や斑疹、月経過多、帯下などに用いる。粉末を外用薬として出血や湿疹、潰瘍に用いる。近年、紫梗エキスが皮膚ケラチノサイトからのサイトカイン産生を抑制し、皮膚症状を改善する効果があると報告されている。ちなみに中南米ではウチワサボテンに寄生するエンジムシ(臙脂虫:コチニールカイガラムシ)に由来するコチニール色素が染料などとして同様に利用されている。

金曜日, 2月 22, 2013

使君子

○使君子(しくんし)

 熱帯アジアに分布するシクンシ科のつる性常緑低木シクンシ(Quisqualis indica)の果実を用いる。日本では石垣島西表島などで植えられ、半野生化している。果実の形はクチナシに似て紡錘形で五稜を有し、中に紡錘形の種子がひとつ入っている。

 種子にはキスカル酸カリウムが含まれ、薬理的に駆虫作用および皮膚真菌の抑制作用が認められている。漢方では駆虫・消積の効能があり、寄生虫症や消化不良、疳積などに用いる。毒性が少なく甘い味なので古くから小児の駆虫薬としてよく知られ、単独あるいは檳椰子と配合して回虫症などに用いる。多量に服用すると悪心や眩暈の服作用が現れる。また服用時に熱い茶で飲むと下痢を起こす。

 寄生虫症で壁土などを欲しがるときには黄芩・胡黄連などと配合する(治小児愛吃泥方)。小児の疳積といわれた寄生虫症や消化不良症などの治療薬として肥満丸や如聖丸が中国ではよく知られている。

木曜日, 2月 21, 2013

紫金牛

○紫金牛(しきんぎゅう)

 日本全土や朝鮮半島、中国に分布するヤブコウジ科の常緑小低木ヤブコウジ(Ardisia japonice)の茎葉を用いる。日本の民間薬ではヤブコウジの根を用いる。中国では根を紫金牛根というが、茎葉を薬用とすることが多い。冬に赤い実をつけるので盆栽として、また正月の床の間に飾る植物として親しまれている。

 成分にはベンゾキノン誘導体のラパノン、ベルゲニンなどが含まれ、ラパノンは回虫、条虫に対して強力な殺虫作用があり、ベルゲニンは鎮咳作用が報告されている。紫金牛は中国の民間薬として有名で、かつては牛馬の駆虫薬として知られていた。

 中国医学では止咳・利水・活血の効能があり、慢性気管支炎や肺結核などによる咳嗽のほか、黄疸、膀胱炎、慢性腎炎、下血、打撲傷などにも用いる。咳嗽や喘息などに用いる中成薬の中に平地木の名でしばしば配合されている。

 日本では胸の痞えを捕る効能があるとして消化不良や腹痛に用いたり、湿疹や腫れ物、膀胱炎、咳止めなどに用いる。小児の頭にできた湿疹に煎液で患部を洗う方法もある。

水曜日, 2月 20, 2013

ジギタリス

○ジギタリス

 ヨーロッパ南部原産のゴマノハグサ科の多年草ジキタリス(Digitalis purpurea)の葉を乾燥させたものを用いる。一般に内服には葉を粉末にしたジギタリス末を用いる。

 和名のキツネノテブクロという名は英語のフォックス・グローブ(Fox-glove)を訳したものである。日本には明治12年に薬用として渡来したが、赤紫色をした釣鐘状の多数の花が連なって咲くので観賞用としても栽培されている。

 1775年、英国で民間療法によって改善した浮腫の症例からウィザリング博士がジギタリスに利尿作用のあることを発見した。ジギタリスの葉にはプルプレアグリコシドA・Bの形で存在するが、採取後にそれが酵素により分解されてジトキシンなどの強心配糖体を生じる。

 ジギタリス強心配糖体には心筋に直接作用して収縮力を強め、排出量を増やし、脈拍数を減少させる作用がある。かつてうっ血性心不全にはジギタリス末が用いられていたが、今日では有効成分が抽出され、錠剤や注射剤の形で強心利尿薬として用いられている。

 ジギタリスは劇薬に指定されている薬物である。適量を間違えると危険である。中毒症状には黄視症、嘔吐、不整脈、頻脈、頭痛、眩暈、耳鳴り、痙攣などがあり、さらには心停止を来たして死亡することもある。ジギタリスのほか強心配糖体を有する植物としてスズラン(鈴蘭)、フクジュソウ(福寿草)、キョウチクトウ(夾竹藤)、オモト(万年青)、トウワタなどがあり、一般に有毒植物として扱われている。

火曜日, 2月 19, 2013

糸瓜絡

。○糸瓜絡(しからく)

 ウリ科のヘチマ(Luffa cylindrica)のよく熟した果実の網状繊維を糸瓜絡という。枯れた果実をとり、揉んで外皮と果肉を取り去ったり、水に長く漬けて果皮と果肉を腐らして洗い流し、種子を除いて日干しにして網状の繊維だけを残す。これはヘチマたわしと同じもので、そのまま垢すりやタワシの代わりに用いることができる。成分にはキシランおよびセルロースが含まれる。

 漢方では去痰・止痛・活血・消腫の効能があり、気管支炎や肺炎による咳嗽や打撲、捻挫による腫張疼痛、リウマチなどによる関節痛に用いる。また乳が腫れて痛むときや下血、痔出血などの出血に糸瓜絡を黒焼きにしたものを服用する。

月曜日, 2月 18, 2013

紫河車

○紫河車(しかしゃ)

 ヒトの胎盤を乾燥したものを用いる。人胞・胞衣・胎衣・混沌衣・佛袈裟・混元衣などの別名もある。また新生児の臍帯も利用されることがあり、生薬名を坎気という。紫河車は健康な産婦の分娩時に排出された胎盤の血管を切り、何度も水で洗い、煮たり、蒸したりした後に乾燥したものである。

 薬材は直径10~15cmくらいの皿状で、一面は全体が凹凸があり、もう一面は半膜に覆われて平滑で、中央に臍帯の残りがある。かつて胎盤埋没療法が旧ソ連で研究され、リウマチやアレルギー疾患などに効果があると注目された。日本では医療用としてヒトプラセンタに由来する胎盤製剤(メリスロン注、プラセンタ注)が更年期障害や乳汁不足、肝機能障害の治療に用いられている。

 胎盤には糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル、核酸物質、ムコ多糖体、ヒアルロン酸、酵素類などが含まれ、そのほか、さまざまな活性ペプチド、細胞増殖因子(グロースファクター)、サイトカイン、ホルモン成分などが含まれている。ただし、製造中に数回の高圧蒸気滅菌などの工程があり、ホルモンなどは分解されていると説明されている。

 健康食品や化粧品に用いられているプラセンタエキスは、牛や豚などの胎盤から抽出したものであり、BSEの影響で、専ら豚プラセンタが利用されている。自律神経・内分泌調整、免疫賦活、基礎代謝向上、細胞の増殖再生、抗炎症・抗アレルギー、抗酸化、美白・保湿作用などが報告されている。

 漢方では補気・補血・補養の効能があり、不妊症、習慣性流産、インポテンツ、虚弱体質、結核、喘息、神経衰弱などに用いる。一般に滋養強壮薬として長期間服用すると効果がみられる。肺結核や慢性気管支炎、慢性腎炎など慢性の消耗性疾患には杜仲・亀板などと配合する(河車大造丸)。また坎気には補陽・止汗の効能があり、腎虚による喘息や盗汗に用いる。

土曜日, 2月 16, 2013

紫花地丁

紫花地丁(しかじちょう)

 スミレ科の多年草ノジスミレ(Viola yedoensis)やスミレ(V.mandshurica)などの全草を用いる。紫花地丁の別名を地丁ともいうが、単に地丁といえばスミレ科の植物以外にもマメ科やリンドウ科の数種類の植物も基原として含まれる。

 ノジスミレの根にはフラボン配糖体やセロチン酸、粘液質が含まれているが、詳細は不明である。漢方では清熱解毒・消腫の効能があり、皮膚化膿症や瘰癧(頸部リンパ腺腫)、下痢、結膜炎などに用いる。皮膚化膿症で腫れて痛むときには金銀花・蒲公英などと配合する(五味消毒飲)。

 日本の民間でも癤や癰などの腫れ物の妙薬として知られており、とくに頭や背中の腫れ物に効果がある。また新鮮な全草をすりつぶした汁を服用したり、患部に外用することもある。蛇に噛まれたときにも同様に用いる。

 なお地中海沿岸地方を原産とするニオイスミレ(スイートバイオレット・Sweet V.odorata)は、ヨーロッパではよく知られたハーブである。上品な香りの花は香水の原料であり、その芳香成分としてパルモンやオイゲノールなどの精油が知られている。花には鎮静作用や去痰作用があり、不眠や癲癇、呼吸器疾患の治療のほか、浄血薬として、また歯肉炎や咽頭炎の口内洗浄液やうがい薬として用いられている。葉には炎症を抑える作用があり、罨法として眼炎や乳頭のただれに、浸剤は消化不良などに用いられている。

木曜日, 2月 14, 2013

糸瓜

○糸瓜(しか)

 熱帯アジア原産であるウリ科のつる性一年草ヘチマ(Luffa cylindrica)の新鮮で柔らかい果実を用いる。また果皮は糸瓜皮、果実内の繊維を糸瓜絡、種子を糸瓜子、茎の中の水は天羅水(和名:ヘチマ水)という。

 日本には江戸時代初期に渡来し、観賞用やヘチマたわし用などに栽培されている。熟した果実を水につけ、外皮や果肉を腐らせて洗い去り、乾かすとヘチマたわしができる。またヘチマの若い果実は似て食べられ、沖縄県や鹿児島では繊維の少ない品種を食用ヘチマとして栽培している。

 果実にはサポニン、苦味質のルフェイン、多量の粘液、シトルリン、ククルビタシンなどが含まれ、鎮咳作用や利尿作用がみられる。漢方では清熱・去痰の効能があり、熱病による口渇、化膿、痘疹、下痢、咳嗽、喘息、乳汁が出ないときなどに用いる。煎じて内服するだけでなく、焼いて灰にしたものを粉末にして服用する。また虫歯に乾燥粉末を擦り込む方法もある。

水曜日, 2月 13, 2013

紫苑

○紫苑(しおん)

 朝鮮半島から中国北部、モンゴル、シベリアにかけて分布するキク科の多年草シオン(Aster tataricus)の根を用いる。中国では軟紫菀ともいう。これに対しキク科のオタカラコウ(Ligularia fischeri)などの根を硬紫菀あるいは山紫菀といつて区別する。

 シオンは日本にも古くから伝えられ、平安時代にすでに観賞用として植えられており、また九州や中国地方では野生化している。一般に中国では薬用として、日本では観賞用として栽培されている。秋に直径2.5cmくらいの藤紫色の花が咲き、また根が紫色がかっているため紫苑という。朝鮮では若芽を煮て乾燥し、野菜として利用している。

 根にはサポニンのシオンサポニンやフリーデリン、シオノンなどが含まれ、薬理的に鎮咳・去痰作用、抗菌作用が認められている。漢方では止咳・去痰の効能があり、咳嗽や喘息、血痰、喉痺に用いる。おもに慢性の咳嗽に用い、とくに痰が多く、痰の喀出が悪かったり、血痰の混じるときに応用される。慢性気管支炎や気管支喘息などで呼吸困難や喘鳴のみられるときは射干・麻黄などと配合する(射干麻黄湯)。風邪や気管支炎などで咳嗽が強く、痰の多いときには百部・桔梗などと配合する(止嗽散)。

木曜日, 2月 07, 2013

地黄

○地黄(じおう)

 中国原産のゴマノハグサ科の多年草ジオウ(Rehmannia glutinosa)の根を用いる。ジオウにはアカヤジオウ(R.glutinosa var.purpurea)とカイケイジオウ(var.hueichingensis)の2つの系統がある。

 カイケイジオウは河南省懐慶を主産地とする品種で、アカヤジオウよりやや大型であり、根の一部が肥大するという特徴がある。日本で単にジオウといえばアカヤジオウのことをいい、古名をサオヒメともいう。日本でも、古くはアカヤジオウが栽培されていたが、昭和30年代よりおもにカイケイジオウが栽培されるようになり、必要量のほとんどを国産品で賄っていた。しかし、現在では北海道、奈良、長野県などで僅かに栽培されているのみである。近年、武田薬品によってアカヤジオウとカイケイジオウを交配した新品種、フクチヤママジオウが開発されている。

 現在、日本市場に流通している地黄のほとんどは輸入品で、その多くは中国産の懐慶地黄である。ところで生薬としての地黄は、修治により生地黄、乾地黄、熟地黄に大別される。生地黄は採取後3ヶ月以内の新鮮な根のことで、乾燥した砂の中で保存したものであり、乾地黄は日干し、あるいは過熱した乾燥させたものであり、熟地黄は新鮮な根を酒などで蒸した後で乾燥させたものである。

 日本産の新鮮なものを生地黄というが、市場には出回っていない。現在、日本薬局方ではジオウのみ規定しているが、生地黄は流通しておらず、乾地黄と熟地黄の2種類が流通している。かつて日本漢方ではあまり熟地黄を用いなかったため、地黄といえば乾地黄のことを指す。一方、中国では生地黄と熟地黄が流通しているが、中国では生地黄を鮮地黄(鮮生地)と干地黄(干生地)に区別しており、中国で流通している生地黄と日本に輸入されている乾地黄は、ほぼ同じものと考えられている。ちなみに金匱要略では生地黄と乾燥地黄のみが用いられており、熟地黄は宋代の本草図経(1058)において初めて登場する。

 地黄の成分にはイリドイド配糖体のカタルポール、レオヌライド、レオニオサイド、糖類のスタキオース、マンニトール、アミノ酸のアルギニンなどのほか、βシトステロール、カロテノイドなどが含まれている。地黄エキスやカタルポールには血糖降下作用や緩下、利尿作用などが認められている。生地黄から熟地黄へ修治の過程でカタルポールなどのイリドイド配糖体が消失し、フェネルアルコール配糖体のアセトサイドやプロサイドが生成され、生地黄のスタキオースが分解して果糖などの単糖類が増加する。

 漢方的にも区別され、生地黄、乾地黄、熟地黄へ移行するにつれ、性味は苦甘から甘へ、大寒から微温へと変化し、効能に関しても生地黄は清熱・涼血、乾地黄は清熱・養血、熟地黄は滋陰・補血と移行する。

水曜日, 2月 06, 2013

雌黄

○雌黄(しおう)

 温泉や火山付近の低温熱水鉱脈に産出する硫化ヒ素鉱、雌黄(Orpiment)である。通常、雄黄や輝安鉱などとともに産する。

 雄黄と雌黄はいずれも硫化ヒ素であるが、雄黄はAs4S4であるのに対し、雌黄はおもに三硫化ニヒ素As2S3を含む。しかし従来、雄黄や雌黄、鶏冠石などの用語は混乱しているため、ここでは中薬大辞典の内容に従う。

 雌黄は全体がレモン色をした不規則な塊で、脆くて砕けやすく、特異な臭いがある。成分には三硫化ニヒ素が含まれ、抗菌・抗真菌作用が認められている。有毒であるため舐めてはならない。

 漢方では雄黄と同様に殺虫・解毒の効能があり、おもに粉末を外用薬として疥癬や頑癬、化膿疹、虫や蛇の咬傷などに用いる。また内服として胃痛、咳嗽、癲癇などの治療に丸剤が用いられていた。しかし現在では有毒のため薬としての使用が禁止されている。

火曜日, 2月 05, 2013

刺猬皮

○刺猬皮(しいひ)

 中国各地の山林や草原に生息しているハリネズミ科の動物、ナミハリネズミ(Erinaceus europaeus)あるいはダウリアハリネズミ(Hemiechinus dauuricus)の皮を用いる。

 これらハリネズミは夜行性でおもに昆虫や小動物を食べている。体長は約20cm、1.5~2cmの硬くて鋭いとげで背部が密に覆われている。敵にあうと体を丸めて、とげの球になる。

 冬眠時に捕獲しやすく、捕られたハリネズミの皮を剥ぎ、裏返して石灰を薄くまき、風通しのよいところで陰干しにする。一般に用いるときには炒めたものや焼いて灰にしたものを粉末にして用いる。

 漢方では収渋・止血の効能があり、嘔吐や下痢、腹痛、下血、遺精に用いる。とくに痔の治療薬として有名で、槐角・地楡などと配合する(舒痔丸)。

土曜日, 2月 02, 2013

三稜

三稜(さんりょう)

 日本の各地、東アジアにかけて分布し、池や沼などの浅い水中に生えるミクリ科の多年草ミクリ(Sparganium stoloniferum)やエゾミクリ(S.simplex)、ヒメミクリ(S.stenophyllum)の塊茎を用いる。しかし、中国東北部や内モンゴル自治区、西省などでは沼沢地の水中に生えるカヤツリグサ科の多年草ウキヤガラ(Scirpus fluviatilis)の塊茎を三稜として用いている。

 ミクリとウキヤガラはともに茎の断面が三角形である三稜という名があるが、花や葉はまったく異なる。これらを区別するため生薬名では荊三稜と黒三稜と呼ばれている。ところが、生薬名ではミクリ(植物名:黒三稜)のほうを荊三稜、ウキヤガラ(植物名:荊三稜)のほうを黒三稜といい、中国の植物名生薬名が全く逆になっている。

 三稜として日本ではウキヤガラがよく知られているが、中国ではおもにミクリが用いられている。また日本に輸入されている三稜もおもにミクリの荊三稜である。成分や薬理作用は明らかではないが、一般に区別されずに用いられる。

 漢方では活血・理気・消癥・止痛の効能があり、腹部の腫痛や腹痛、胸痛、月経障害、打撲傷などに用いる。主に瘀血や気結、食滞、積聚など滞って腫瘤になったものを除く、つまり「堅いものを削る」作用があるといわれている。

 三稜と莪朮とはともに消積の効能がありよく似ているが、活血・去瘀の作用は三稜が強く、理気・止痛の作用は莪朮が強い。両者を合わせると活血・理気の作用はさらに強まるため、しばしば併用される。

 小児で寄生虫などにより腹中にしこりが触れ、熱のみられるときには柴胡・胡黄連などと配合する(浄府散)。腹中にしこりが触れ、腹痛や腰痛のみられるときには陳皮・香附子などと配合する(大七気湯)。越中富山の名薬として知られる反魂丹に配合され、今日でも小児の疳虫などの家庭薬にも配合されている。

金曜日, 2月 01, 2013

山羊血

○山羊血(さんようけつ)

 中国東北部および内モンゴルの山中に生息するヤギに似たウシ科の動物ゴーラル山羊・青羊(Naemorhedus goral)の血を乾燥したものを用いる。ゴーラルは体長約1m、雄雌とも短いまっすぐな角を持ち、全体の色は灰褐色である。多くは高山の森林に棲み、山頂の岩場などでよく見かけられる。

 ゴーラルの角は山羊角、肉は山羊肉、肝臓は山羊肝として薬用にされる。山羊血は捕獲した後、抜いた血を鉢に入れて日干ししたものである。乾燥血は塊状または片状で、濃く褐色で光沢がある。水の中に少量の血を入れて、碗の底から糸状に上昇し、拡散しないものが本物とされている。

 漢方では活血・止血の効能があり、打撲傷や骨折、吐血や鼻血、狭心痛などの治療に用いる。一般に粉末にしたものを酒で服用する。ちなみに山羊角は小児のひきつけ、山羊肉は疲労や体力の低下、山羊肝は夜盲症の治療薬として知られる。