○松籮(しょうら)
日本各地や東アジアに分布する樹枝状地衣類であるサルオガセ科のナガサルオガセ(Usnea longissima)やヨコワサルオガセ(U.diffracta)の全体(糸状体)を用いる。この地衣植物は亜高山の針葉樹などに寄生し、枝からレースのように垂れ下がっている。
ナガサルオガセは主軸の直径1~2mm、長さ50cm~1mくらいで、ヨコワサルオガセは2分岐を繰り返して次第に細くなるもので、長さは10~30cm、基部の太さは1~1.5mmくらいである。
オガセとは麻をよって糸にしたものを絡ませる道具で、樹の幹から多くの糸が垂れ下がっている様子を表している。霧の多い深山にみられるもので、「雲の花」とか「霧藻」も別名もあり、乾燥したものを袋につめた「霧藻枕」などが土産に売られている。
成分はバルバチン酸やウスニン酸、ジフラクタ酸などが含まれ、抗菌、抗腫瘍、利尿、肝庇護作用などが認められている。漢方では止咳、化瘀・止血の効能があり、頭痛、咳嗽、喀痰、瘰癧(頸部リンパ腺腫)、性器出血、腫れ物などに用いる。
近年、松籮の煎剤や抽出したウスニン酸ナトリウムなどによる肺結核や慢性気管支炎などの臨床報告がある。またリンパ節炎、乳腺炎などにも用いられるが、副作用として嘔気や口渇、めまい、肝機能障害のみられることがある。そのほか外用として腫れ物や潰瘍、外傷などに用いる。ちなみにジフラクタ酸に炭酸アンモニアを加えるとリトマス色素になり、リトマス紙にも利用されている。