○葛根(かっこん)
日本各地、東アジアに広く分布するマメ科のつる性木本クズ(Pueraria lobata)の根を用いる。クズの花を葛花、クズの根からとれるデンプンを葛粉という。根に多く含まれるデンプンは食用としても葛湯や葛餅、葛切り、葛粉などの原料として用いられている。
葛粉の作り方はクズの根を洗って外皮を除き、つぶして水に浸して粥状にし、滓を布でこして得られた租デンプンを水槽に入れて沈殿させ、上澄み液を捨てる。このような精製の行程を繰り返し、最後に残った白色の沈殿物を乾燥させて固めたものが葛粉である。日本では奈良県の吉野葛、福岡県の秋月葛が有名である。ただし市販されている葛粉のほとんどは小麦やサツマイモなどのデンプンである。
根にはデンプンのほかにダイジン、ダイゼイン、プエラリンなどのイソフラボン誘導体が含まれ、解熱、鎮痙、降圧、消化管運動亢進作用などが知られている。漢方では解肌・透疹・潤筋・止渇・止瀉の効能があり、頭痛や肩こりなどの感冒症状、麻疹、筋肉の緊張、口渇、下痢などに用いる。そのほか中国では高血圧の随伴症状や狭心症、片頭痛、突発性難聴などにも応用されている。民間でも葛デンプンに砂糖を加えて溶かしたものを葛湯と呼んで風邪の初期や腹痛に用いている。