○梅肉膏(ばいにくこう)
梅肉膏はバラ科のウメ(Prunus meme)の未成熟果実を加工したもので、日本独自の民間薬である。ウメは梅干しや梅酒として日本人に親しまれているが、これらは薬用としても利用される。
梅干しは食中毒の予防や食欲増進に、梅酒は夏の暑気あたりや夏まけに効果がある。また民間療法に梅干しを熱灰に埋めて黒焼きにした梅の黒焼きがある。風邪の熱や咳には黒焼きを熱湯に入れて飲んだり、歯が痛むときには患部に黒焼きをすり込んで治療する。頭痛に梅干しの果肉をこめかみに貼ることもよく行われていた。
江戸時代から伝わる民間薬、梅肉膏は昭和初期に筑田多吉の著した「家庭における実際看護の秘訣」(通称:赤本)によって日本中に広く知られるようになった。最近では梅肉エキスとして有名である。
梅肉膏は、生の青梅をすりおろし、布巾でしぼった汁を天日で濃縮、あるいは過熱してゆっくりと煮つめたものである。弱火で煮つめると泡が立つが、混ぜているとドロッとなり、黒っぽい水飴のような酸味が強いものできる。これが梅肉膏である。
梅肉膏は下痢や食中毒の改善効果やピロリ菌に対する抗菌作用などが認められ、また感冒や咳嗽、咽頭炎などにも用いられる。外傷や皮膚真菌症などに外用する方法もある。
近年、梅を加熱する過程で、クエン酸と糖質(HMF)がエステル結合した化合物、ムメフラールが生成されることが明らかとなった。このムメフラールには血小板凝集能抑制効果や赤血球変形能改善効果が認められ、血流状態を改善することが注目されている。