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水曜日, 11月 28, 2012

蜈蚣

○蜈蚣(ごこう)

 中国や日本の全土に分布する節足動物、オオムカデ科のトビズムカデ(Scolopendra subspinipes mutilans)などのムカデを乾燥した全虫を用いる。主産地は浙江・湖北・湖南省などであり、江蘇省のものは脚が赤く良品であるため、蘇浙江省という。

 ムカデの体長は10~15cmくらいで20数節の環節があり、各環節から一対の歩脚があり、百足の異名をもつ。頭部の脚は歩行に関係せず、顎に変化して口器の役目をしており、この顎脚に毒腺を有する。冬から春にかけて採取し、市場には一頭ずつ竹串に刺して乾燥させたものが出ている。一般に体が長く、頭が赤く、背中が黒緑で、腹が黄色いもので、折れにくいものが良品とされている。

 ムカデの毒には蜂毒に類似したヒスタミン様物質と溶血性タンパク質の2種類の有毒成分が含まれ、咬まれるとしびれるような痛みがあり、発赤して数日間も腫れがひかない。蜈蚣には抗結核菌・抗真菌作用や新陳代謝を促進する働き、筋肉痙攣に拮抗する作用などが報告されている。

 漢方では平肝・止痙・解毒消腫の効能があり、脳卒中の後遺症、痙攣、破傷風、顔面神経麻痺、結核、瘡瘍などの皮膚病、火傷などに用いる。鎮痙作用は全蝎よりも強く、全蝎が熱性の痙攣に適しているのに対して蜈蚣は風寒の痙攣に適している。

 熱性痙攣やひきつけ、破傷風、激しい頭痛や関節痛には全蝎と配合する(止痙散)。また皮膚の潰瘍や疔、癰などの化膿、中耳炎、痔などに外用薬として使用する。日本の民間ではゴマ油や椿油にムカデを漬けたムカデ油が傷薬や火傷の治療薬として知られている。