○款冬花(かんとうか)
地中海の沿岸からインド、中国に分布しているキク科の多年草フキタンポポ(Tussilago farfara)の花蕾を用いる。日本には自生しておらず、明治中期に薬用として伝えられた。かつて日本ではフキを款冬と称していたが、フキの中国名は蜂斗菜である。フキタンポポの名は葉がフキに、花がタンポポに似ているところによる。花期は2~3月ごろであるが、採取は晩秋から初冬にかけてまだ地中にある花蕾を掘り出して行う。
花蕾にはファラジオール、ルチンなどが含まれ、鎮咳・去痰作用などが報告されている。漢方では止咳、潤肺の効能があり、咳嗽、喘息、咽頭の閉塞感に用いる。鎮咳の常用薬で、寒熱・虚実を問わず一切の咳嗽に用いることができる。紫苑と併用することが多く、両者の効能は似ている。相違点としては款冬花は鎮咳、紫苑は去痰に優れ、款冬花は寒咳、紫苑は燥咳によいといわれている。
欧米ではコルツフット(Coltsfoot)と呼ばれ、古くから葉や花の煎じ液やチンキなどが咳の治療薬として知られている。さらに喘息や咳に対してコルツフットの葉をタバコのように喫煙するというギリシャ時代からの伝統的な治療法も行われている。
フキタンポポには肝毒性のあるピロリジンアルカロイドが含まれるため注意が必要であるが、30分以上煎じることにより熱分解されることが知られている。