○百合根
ユリ科には美しい花を観賞するものが多いが、いずれも地下部分は球根上の鱗茎になっており、オニユリ、ヤマユリ、スカシユリの鱗茎になっており、百合根の名で食材として利用されている。この3種以外の鱗茎は苦いばかりでなく、食べると下痢をするものもあるので注しなくてはならない。わが国では江戸時代中期から野菜として栽培されており、京都料理には欠かせない食材である。百合根は一片ずつ剥がしたものを下茹でして煮物や和え物にすると、ホクホクした舌ざわりと僅かに苦味のある特有の風味を楽しむことができる。
主成分は糖質(100g中28.3g)で、ほかにタンパク質やビタミンB類、リン、カリウムなどを含むが、漢方ではこれは百合(ひゃくごう)といい、鎮咳・利尿・滋養・強壮・鎮静剤として使われてきた。健康野菜としても同様の効果があり、精神的な不安を抑え、イライラを鎮め、更年期の不定愁訴を和らげるには百合根にハチミツを加えて柔らかくなるまで蒸したものを食べるとよい。百合根を潰して出た汁に湯を注いで飲むと、咳や喘息の発作が抑えられるといわれている。また食物繊維の一つであるグルコマンナンが豊富なので、コレステロール値や血糖値を抑える作用もある。