○豆乳
大豆を一晩水につけておき、すり潰して加熱し、ろ過すると乳状の液体が得られるが、これが豆乳の原型である。これは豆腐の製造過程で生まれるが、そのままでは青くさい大豆臭があり飲用には向かない。市販されている豆乳は、脱皮した大豆を熱処理し、においの原因となるリポキシゲナーゼ(酵素)を失活させて飲みやすくしたものである。
良質のタンパク質を豊富に含むことから”畑の肉”といわれる大豆だが、豆乳は”畑の牛乳”ともいわれ、牛乳に匹敵する栄養食品として愛用者を増やしている。見た目にも両方とも乳白色でよく似ており、栄養成分を見るとどちらも甲乙つけ難いが、動物性食品と植物性食品の異なる特徴を待っている。
タンパク質の含有量では、牛乳の方がいくぶん勝るが、アミノ酸の組成では豆乳が勝るとも劣らないほどで、豆乳は良質なタンパク源として価値が高い。
豆乳が優れているのは含まれる脂肪酸の違いである。脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大きく分かれるが、飽和脂肪酸を摂りすぎると血中コレステロールや中性脂肪が増え、動脈硬化の原因となることがよく知られている。日本食品標準成分表を使って単純に比較してみても、牛乳には100g当たり2.33gの飽和脂肪酸が含まれているが、豆乳は0.35gで6分の1以下である。逆に不飽和脂肪酸は牛乳が0.99gであるのに対し、豆乳は1.4gと1.5倍も含まれている。
牛乳はカルシウムを多く含み、骨を丈夫にするということから成長期の子どもには大切な食品であるが、成人以上では牛乳の脂肪分にも配慮する必要がある。高齢社会に入ったわが国では、加齢によって引き起こされる疾患が急増しており、大きな関心事となっているが、骨粗鬆症もその一つだ。現在、日本には900万人の骨粗鬆症患者がいるといわれるが、そのうち8割(700万人)は女性である。骨粗鬆症は女性ホルモンと深く関わっており、閉経とともにエストロゲン(女性ホルモン)が減少することによってカルシウムの吸収力が低下し、閉経後の5~7年では毎年2~5%の骨が失われていくといわれている。豆乳にはエストロゲンと同じ働きをするイソフラボンが豊富に含まれている。骨の健康を増進させるには、単にカルシウムの摂取量を多くするのではなく、それを効率的に吸収するために必要な各種ビタミン類の補給も必要だ。牛乳だけでなく、豆乳も上手に利用するば、脂肪の摂りすぎを心配せずに効果が上げられるだろう。
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