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木曜日, 11月 10, 2011

くま笹(改訂版)

○くま笹

 クマ笹はイネ科の笹の一品種で、葉の緑が白くなる(隈ができる)ために隈笹、冬眠から覚めた熊が好んで食べて体力の回復を図るところから熊笹とも書かれる。古くから若葉を煎じたものが民間薬として胃病・糖尿病・高血圧・喘息などの改善に利用されてきた。

 クマ笹にはタンパク質や葉緑素が豊富に含まれているほか、生体の免疫力を高め、ガン細胞の増殖を抑える作用があるといわれる笹多糖体の存在も注目されている。九州大学農学部の村上浩紀、山藤一雄が、クマ笹の葉から抽出したリグニンに動物実験で制ガン作用を認めたと報告している。また、ささの防腐作用をつかさどる多糖体のパーフォリンにも、生体の免疫力を強くしてガンの増殖を抑えること、なおかつ正常細胞に対する害がないことなどがわかり、その効用が期待されている。

 最近、クマ笹の有効成分を効率よく抽出する循環多段式加圧抽出法(菊地式抽出法)が考案され、より多くの多糖成分が抽出できるようになった。この抽出法は、最初に100℃以下の熱水抽出によって主としてミネラル、ビタミン、アミノ酸を採り出し、その後、加圧のレベルを何段階かに変えることによってさらに多糖成分を抽出するという方法である。近藤勇(東京慈恵会医科大学名誉教授)らは、これによって得られたクマ笹エキス(AHSS)をヘリコバクター・ピロリ菌に作用させ、鞭毛を溶かすことで菌が死滅することを発見、第11回国際ピロリ菌学会(2001年9月、ドイツ)で報告している。

 慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍の発症に大きく関わっているとされるピロリ菌だが、日本では50歳以上の70%以上がピロリ菌感染者であるこという報告もあり、ピロリ菌対策が本格的に始まっている。しかし、抗生物質を使った除菌では耐性菌の問題も大きなネックとなっている。近藤らの研究結果は、クマ笹エキスが植物由来の天然物質であることから抗生物質が直面している耐性菌問題にも新しい展望を開く可能性を秘めているといえよう。