○フランス海岸松
フランス海岸松は南仏の大西洋沿岸のみに生息する海洋性の松である。この樹皮から得られる抽出物には40種類を超えるフラボノイドが含まれており、半世紀以上も前からヨーロッパを中心に抗酸化物質として活用されてきた。現在は一般にピクノジェノール、フラバンジェノール(いずれも商標)という名称で世界的に知られている。
樹皮が生薬となる例は多々あるが、これは16世紀のフランスの探検家J・カルチェの率いる探検隊がカナダを探索中に壊血病にかかった時、現地の先住民に松の樹液を飲むことを教えられて助かったという記録が発見のきっかけとなった。1940年代にケベック大学(カナダ)の客員教授をしていたJ・マスケリエがこの記録を知り、帰仏後も樹皮成分(フラボノイド)の研究を続ける中で、生理活性の高いこのフランス海岸松エキス(以下、海岸松エキス)に辿り着いたのである。以後、フランス厚生相が血管の保護効果がある医薬品として認可すると共に、90年代に入ってからはアメリカでも研究が進み、サプリメント市場に登録するや爆発的な評判を得た。
海岸松エキスには数多くのフラボノイドが含まれているが、なかでも注目度が高いのはプロアントシアニジンで、通常のフラボノイドに比べて水への溶解性が高いため、抗酸化物質として即効的に働くという特徴がある。また、多数の有機酸からなる機能成分が連携して高いSOD活性を示すことが明らかにされている。このことから、海岸松エキスは毛細血管を保護し、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞・静脈瘤などを予防する効果のあることが明らかにされ、多くの研究者によって報告されている。
海岸松エキスにはこのほか、月経困難症・生理痛・子宮内膜症・冷え性・更年期障害など、女性特有の疾患を劇的に改善する効果のあることが日本の医師や研究者によって明らかにされている。1998年に金沢市で開催された日本補完・代替医療学会の第1回学術集会で、医師の小濱隆文(恵寿総合病院)、神奈川大学医学部の鈴木信孝らによって海岸松エキス(ピクノジェノール)による886例の臨床予備治験の結果が報告され医療関係者の注目を集めた。小濱はその翌年も発表を行い、子宮内膜症患者に対してピクノジェノールの投与により重度の月経痛と骨盤痛が軽減したこと、また子宮内膜症以外の原因による月経痛・骨盤痛も軽減されたことを報告している。また、藤野武彦(九州大学)らはサントリー健康科学研究所との共同研究により、フラバンジェノールに血液の流れをよくする作用のあることを確認し、学会発表を行っている(第44回日本人間ドック学会)。