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月曜日, 4月 15, 2013

十薬

○十薬(じゅうやく)

 日本の各地をはじめ東アジアに広く分布するドクダミ科の多年草ドクダミ(Houttuynia cordata)の全草を用いる。平地ややや湿ったところに普通にみられ、独特の臭気がある。

 この臭いのため中国では魚腥草という。和名は毒が入っていそうなので「毒溜み」、あるいは解毒作用から「毒矯み」といわれている。十薬の語源については十種の効能があるためというのは俗説で、漢名に由来する蕺薬を十薬あるいは重薬に当てたものである。

 一般に花が咲いている5~6月に根を含む全草を採取する。独特の臭気はデカノイルアセトアルデヒドやラウリルアルデヒドによるが、乾燥すると悪臭は消える。そのほか葉や花にはフラボノイドのクエルシトリンやイソクエルシトリンなども含まれる。

 デカノイルアセトアルデヒドに抗菌・抗真菌作用があるが、乾燥すると酸化されてメチルノニルケトンに変化してその作用が失効する。このため乾燥させたドクダミの煎液にあまり解毒作用は期待できないが、利尿、緩下作用や抗動脈硬化作用などが知られている。

 漢方では清熱・解毒・利水・消腫の効能があり、肺炎や気管支炎、腸炎、膀胱炎、腫れ物、痔、脱肛などに用いる。日本漢方では梅毒や腫れ物、湿疹、痔患に金銀花・荊芥などと配合した五物解毒湯が有名である。しかし乾燥させると解毒作用が失効するためか、専ら生のまま外用薬として利用される。

 たとえば新鮮な生の葉を火にあぶって柔らかくしたものを腫れ物の患部に当てて膿を吸い出すのに用いる。蓄膿症にはドクダミの葉を揉んで汁を出したものを鼻に挿入する。また葉の汁を湿疹や痤瘡、水虫、かぶれなどに外用する。痔や脱肛には坐浴用として、あせもには浴湯料として乾燥した葉を用いる。今日ではどくだみ茶として便秘や高血圧、皮膚病などの体質改善に利用されている。