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月曜日, 3月 31, 2008

グルコース

〇グルコース

 ブドウ糖ともいう。自然界に最も多く存在する単糖(六炭糖)で、ブドウやバナナ、アンズなどの果実やハチミツに遊離の形で含まれるほか、少糖類(スクロース、マルトース)や多糖類(デンプン、グリコーゲン)の構成糖として存在している。水に溶けやすく、甘みはスクロース(ショ糖)の約70%である。

 動物は、植物に含まれるデンプンを摂取して体内でグルコースに変え、エネルギー源として利用している。肝臓に吸収されたグルコースの一部は血液に供給される。血液中に含まれるグルコースを血糖といい、その血中濃度(血糖値)は空腹時で70~110mg/dlであるが、食後は120~140mg/dlにまで上昇する。しかし、グルコースが生体内の各組織に取り込まれてエネルギー源として利用されることによって、血糖値は徐々に低下していき、食後約3時間で正常濃度に戻る。

 グルコースはまた、肝臓でグリコーゲン(貯蔵多糖)に合成・貯蔵されており、なんらかの理由で血液中のグルコース濃度が低下した時などは、分解してグルコースとなり血液中に供給される。グルコースはこのほか、脂肪酸やアミノ酸の合成にも関与している。

土曜日, 3月 29, 2008

単糖類

〇単糖類

 糖質の中で、分子構造的にこれ以上分解されない最小単位の糖を単糖という。含まれる炭素の数から三炭糖・、四炭糖・五炭糖・六炭糖に分けられるが、天然に広く存在するのは五炭糖と六炭糖である。この内、ヒトの栄養と重要な関係があるのは六炭糖で、食品の中に遊離の状態で含まれるほか、少糖類や多糖類の構造糖として広く存在している。グルコース(ブドウ糖)、アルクトース(果糖)、ガラクトース、マンノースなどがある。五炭糖は食品中に遊離の状態で含まれることはなく、各種多糖の構成糖として存在している。リボース、キシロース、アラビノースなどがあるが、ヒトのエネルギー源として利用されることはほとんどない。

 単糖類にはこのほか、誘導体として糖アルコール(ソルビトール、マンニトールなど)やアミノ酸(グルコサミン、ガラクトサミン)がある。

金曜日, 3月 28, 2008

ふくろたけ(袋茸)

〇ふくろたけ(袋茸)

 テングタケ科のキノコで、学名はVoluariella volvacea。秋に有機物の多い地上に発生する。初期の傘は卵型であるが、生育するに従って中高に開いて直径5~10cmほどになる。繊維状近視で覆われており、中央部は灰褐色、周辺部は白くなる。肉は白く乾燥質。ひだは密生して紅色を帯びる。太さ1cm止まりの白い柄は高さ10cm内外になる。東南アジアや中国、台湾で盛んに栽培されており、成長初期の卵型をしたものは中華料理によく使われている。欧米でもストロー・マッシュルームと呼ばれ、ポピュラーなキノコである。

 フクロタケに含まれるβ-1.3-D-グルカンに強い抗腫瘍活性があることが報告されている。マウスにガンの一種である肉腫を移植した上で、ふくろたけの冷アルカリ抽出グルカンを注射で、腹腔内投与し、5週間後に固形腫瘍の大きさを調べた結果、増殖抑制率が73~97%という高い値を示したという。

木曜日, 3月 20, 2008

せみたけ(蝉茸)

〇せみたけ(蝉茸)

 バッカクキン科のキノコで、学名はCordyceps sobolifera。中国では蝉花、蝉踊草などと呼ばれる。セミタケは地中にいるセミ(蝉)の幼虫に寄生してその体内に菌核を形成し、やがてセミを死なせてその頭部に発生する。薬用となる中国産のセミタケは冬虫夏草の一種で、ヤマセミ(山蝉)に寄生したものである。その円柱形の柄と紡錘形の頭部を丸ごと採集して乾燥させたものが薬用に供され、特に金蝉花とも呼ばれている。セミタケそのものは日本でも春から夏にかけて、庭園や山林中によく発生する。

 セミタケには、抗腫瘍活性を示すβ-1.3-D-グルカン、細膜内皮系組織のマクロファージ亢進作用や血糖値降下作用のあるガラクトマンナンなどの多糖が含まれている。古来中国では、子実体と虫体を一緒に乾燥したものが薬用とされ、証類本草(唐慎微、1108年)には小児の驚癇、夜泣き、心悸亢進」などに効くと記されている。さらに鎮静・鎮痛・鎮痙薬として、また眼病、麻疹、発熱、炎症性疾患にも良いとされてきた。子実体だけでも滋養強壮効果があるとして、食用に珍品として供されてもいる。

水曜日, 3月 19, 2008

こふきさるのこしかけ

〇こふきさるのこしかけ(粉吹き猿の腰掛)

 サルノコシカケ科の薬用キノコで、学名はGanoderma applanatum。中国名は樹舌、龍眼菰、梅寄生など。広葉樹のケヤキ、梅、桜、シイ、カシ、栗、キク(椈)、ミズナラなどの枯れ木や倒木に発生する。幹にまさかりを打ち込んだように扁平な半円形ないし丸山形の外観で着生し、大きなものは直径30cm以上、厚さ20cmにも達する。傘の表面は灰白色か灰褐色で年輪状の紋が入り、傘裏(管孔面)は白色または黄色を呈する傘表面にココア色の粉末(胞子)がつくので「コフキ」の名がある。肉は茶色のコルク質で固く、もっぱら薬用となる。

 コフキサルノコシカケはグルコースを主体とする多糖体の含有量の多さ(約74%)が特徴で、その子実体に含まれるβ-グルカンは抗ガン剤のクレスチン、レンチナン、シゾフィランと比較しても劣らない抗腫瘍活性を示す。また培養菌糸体に含まれる多糖類の中では、βー1.3-グルカンだけが顕著な抗腫瘍活性を示している。漢方では止血・健胃・中風・心臓病・腎臓病・脳卒中・胃ガンに効能があるとされている。

火曜日, 3月 18, 2008

ちょれいまいたけ(猪苓舞茸)

〇ちょれいまいたけ(猪苓舞茸)

 サルノコシカケ科の薬用キノコで、学名はPolyporus umbellatus。中国名は野猪糞。傘が丸く、中心部の下に隠れているゴツゴツした菌核が猪の糞に見えるところから、この名がついた。ブナやカエデの枯れた根に菌核を形成する。外面は黒褐色で不整魂。長さは5~10cmで多数のくぼみと荒いシワがある。肉は固く折れやすい。内部は白色から淡褐色で無味無臭。国内では北海道と長野県でわずかに産するが、ほとんどは中国から輸入されている。

 チョレイマイタケの菌核の乾燥したものを猪苓と呼び、古くから生薬として利用されている。猪苓の成分はエルゴステロール、有機酸、β-グルカン、ビオチンなどだが、漢方薬として利尿・解熱・止瀉作用に優れた薬効を持つことが知られている。猪苓を用いた漢方処方としては猪苓湯・五苓散が代表的なもので、主に膀胱炎・尿道炎・淋病・腎臓病などに用いられている。最近ではまた、制ガン効果が脚光を浴びている。発表された動物実験によると、腹水ガンマウスに対して体重1kg当たり1日100mgの猪苓抽出液を投与したところ、抽出エキスを投与しなかったグループは35日目に10匹全部が死亡したのに対し、投与したグループは10匹中1匹しか死亡せず、ガン組織は完全に消失していたという。ヒト血清において強い補体活性能(補体は血漿中に含まれるグロブリン系タンパク質で、抗原抗体反応を促進させる働きがある)を示すとする研究も多い。

月曜日, 3月 17, 2008

かわらたけ(瓦茸)

〇かわらたけ(瓦茸)

 サルノコシカケ科の薬用キノコで、学名はlusversicolor。中国名は霊芝。春から秋にかけて、枯れ木や枯れ枝に重なり合うように密生する木材腐朽性のキノコである。傘は幅2~5cm、厚さ1~2cmで、半円形、扇型、ヘラ形など様々な形状を見せ、表面には黒色、灰色、褐色、藍色など多彩な同心紋があり、革質で固い。傘の裏は白色ないし黄ばんだ淡灰色を呈する。成長中のものを採取して、専ら薬用にされる。サルノコシカケ科のキノコはどこにでも寄生するわけではない。そのための希少価値もあって、古くから仙薬・妙薬として珍重されてきた。

 カワラタケが注目されたのは20余年前、呉羽化学工業がそのエキスからクレスチン(PS-K)という抗がん剤を開発したことに始まる。この抗ガン効果はいわゆる免疫療法で、ヒトが生まれつき持つガンに対する抵抗力を強めることが分かり、一躍ガンの免疫療法のエースとして脚光を浴びた。クレスチンは綿密な基礎実験が繰り返された結果、(財)癌研究会化学療法センターの塚越茂が、①薬の与え方(経口投与、静脈注射、腹腔内注入)の差によって毒性がほとんどない(副作用がない)、②口から与えると、ある種の抗ガン剤が効果を示さないガンにも効いた、③作用の主体は体の免疫力を高めて増強する、④ガン細胞に対して強くはないが直接働く作用を認めた、と発表した。

 これを受けて国立病院や医療センターなどで肺ガン・食道癌・乳ガン・胃ガン・悪性リンパ腫などに臨床応用され、制ガン作用が認められた。1976年8月に厚生省(当時)の許可が下り、翌年5月には保険も適用されるようになった。この免疫効果は、カワラタケエキス中にインターフェロン・インデューサー(インターフェロンの産生を促す物質)が含まれているためと考えられている。インターフェロン効果とは、外からウイルスや細菌などの異物が侵入してきたとき、これを排除しようとする生体の防御機能であり、白血球の一種であるリンパ球中のT細胞(胸腺細胞)とB細胞(骨髄細胞)の働きによるものである。カワラタケエキスのクレスチンはそのT細胞に強く働きかけて、ガン細胞を抑える作用を持つ(これと同じような作用を持つ制ガン剤としては、シイタケエキスから抽出したレンチナンがある)。

 カワラタケの免疫作用は、在来の化学療法や放射線療法などに比較すると効果は地味であるが副作用がなく、宿主に抵抗力をつけるので自然な療法といえる。さらに免疫体質を強くすることから、ガンの予防にも有効性が期待されている。

日曜日, 3月 16, 2008

重曹

〇重曹

 重曹は炭酸水素ナトリウムの俗名で、わが国では明治時代から掃除に欠かせない道具として一般家庭などで広く活用されてきた。最近は合成洗剤の普及で、掃除用として使われることは少なくなったが、軟水作用や消臭作用など様々な機能性で改めて注目され、また環境にやさしい素材ということからも再び脚光を浴びるようになった。

 重曹には数多くの機能性がある。例えば、制酸剤としての活用ではコップ1杯の温水に重曹を少量入れて飲むとゲップや消化不良を和らげてくれる。また風呂に重曹を入れると循環を良くして美肌効果がある。黒豆と一緒に調理すると煮える時間が短くなる。また、肉を軟らかくし、魚の臭みを消す作用もある。このように重曹には中和作用、軟水作用、研磨作用、消臭・吸湿作用、発泡・膨張作用などが知られており、食品添加物として使われるだけでなく、その活用範囲は極めて広い。天然の重曹(シリンゴル重曹)はトロナ鉱石から採られるが、地球上でトロナ鉱石を産出する鉱山は少なく、現在、天然重曹の主産地は内モンゴルが中心となっている。

土曜日, 3月 15, 2008

コブラエキス

〇コブラエキス

 コブラはタイ、ビルマ、フィリピンなど東南アジア一帯に広く分布するコブラ科の毒ヘビで、全長2mにも達する。毒蛇は強精・強壮剤という考え方は世界共通のもので、それも毒性の強いものほど効果があると信じられているが、これまでの関心は専らヘビ毒に向けられており、強壮効果などは科学的に裏付けられているわけではない。したがって、コブラの食効は体験から推察するしかないが、古くからその肝臓や胆嚢は目の薬とされ、老眼も回復するといわれている。

 肉と骨だけの乾燥コブラ製品の分析結果(日本食品分析センター)ではタンパク質7.24%(スペルミンなどアミノ酸18種類を含む)、脂質1.9%、灰分19.4%(カルシウム5.7%、リン3%)、また100g中に鉄4.21mg、カリウム795mg、ビタミンB1・0.3mg、B2・0.39mgが含まれている。スペルミンは精子を作り、勃起中枢を刺激する。

 動物実験でスペルミンを投与すると性腺刺激ホルモンが分泌され、メスは子宮壁や膣壁が充血、オスは精液の産生が高まることが認められている。そのほかエネルギー代謝に関与する補酵素のコエンザイムQ10も含まれており、これらが精力増強に寄与すると考えられている。インドの研究者ブラガンザは、コブラの毒に制ガン作用があると発表している。

金曜日, 3月 14, 2008

エスカルゴエキス

〇エスカルゴエキス

 エスカルゴはマイマイ科の食用カタツムリ(蝸牛)で、フランス料理の前菜として馴染み深い食材である。味覚の楽しみもさることながら、カルシウム、コンドロイチン硫酸、タウリンといった注目の栄養素を多く含むところから、健康食品素材としても利用されている。カタツムリは中国薬草書の古典・本草綱目に消渇(糖尿病を指す)、丹毒、利尿、鼻血、耳鳴り、痔疾などへの効用が記され、わが国の民間療法では黒焼きを腎臓病に用いてきた経緯がある。

 エスカルゴエキスはカルシウムが100g中550mgと多いことが特徴である。また、ネバネバの主成分であるコンドロイチン硫酸は腎炎や肝疾患、動脈硬化などの医薬品成分として知られている。アミノ酸のタウリンは高脂血症、動脈硬化、不整脈などの予防に効果がある。健康食品素材の条件の一つに、それが入手しやすいということがあるが、その点、輸入に頼るしかなく品薄だったブルゴーニュ地方産のエスカルゴはハンディを背負っていた。しかし、大平章((財)高冷地農業研究所)らによって独特の人工飼育方が確立され、1994年には農水省の飼育許可も下りて供給が可能になったことで、おいしい健康食品が実現した。

木曜日, 3月 13, 2008

布海苔

〇布海苔

 刺身のツマや汁の実のほか、古くから糊料の原料としても使われてきた布海苔は紅藻の一種で、日本近海では主にマフノリ、フロクフノリ、ハナフナリを産する。

 わが国では江戸時代に黄疸や食中毒、疫痢、難産などの民間薬として用いられた記録があり(救民単方など)、中国にも解熱、胆石、去痰、止瀉などへの薬効を記した医典(食性本草、本草綱目など)があるが、アーユルヴェーダ医学研究家の北村慧光によってこの布海苔が健康食品として現代に蘇ることとなった。

 布海苔の特異的な有効成分は、α型とβ型のガラクトースが交互に鎖状に結びついた構造のフノランという粘性多糖類である。野田宏行(三重大学)は高血圧・高脂血症・移植ガンへのマウスを用いて実験し、フノランが血圧降下・動脈硬化指数の大幅な改善、血中ナトリウムの低減、エールリッヒ腹水ガンやザルコーマ180固形ガンなどに対し顕著な増殖抑制と延命効果のあることを見出している。また糖尿病に関しては、長村洋一(藤田保健衛生大学)が高血糖マウスを使って布海苔顆粒を投与した実験があり、ここでも良好な血糖降下が認められている。布海苔を水や温湯に数時間浸漬すればフノランが得られるが、最近では手軽で便利な顆粒製品もある。

水曜日, 3月 12, 2008

藻類

〇藻類

 クロレラや昆布、海苔、テングサ(天草)など、水中に生息して光合成する下等植物を藻類という。淡水産のものと海産のものがあり、海産で大型の藻類を海藻と呼んでいる。また、光合成色素の違いから藍藻、緑藻、褐藻、紅藻に分類される。

 藍藻は藍青色の藻類で、昆布をワカメ、ヒジキ、モズクなど海藻類に多く、藻類全体の3/4を占めている。褐藻には多糖の一種であるアルギン酸が多く含まれている。これはヒトの消化酵素では消化されないため、食物繊維として利用されている。紅藻は紅褐色の藻類で、浅草海苔やテングサ、布海苔などがある。紅藻には多糖の一種であるカラギーナンが含まれており、血液凝固防止作用のあることが知られている。また、抗炎症作用のあるアガロオリゴ糖も多く含まれている。

 健康食品としての藻類はクロレラやスピルリナがよく知られている。これらはどちらもたんぱく質の含有量が多く(乾燥重量の50~60%)、古代から食料として利用されてきた長い歴史があり、栄養補助食品としての評価も定まっている。一方、海藻類はミネラルの宝庫といわれ、カルシウム、リン、亜鉛、ヨウ素などが多い食品として知られているる日本人は世界で最も多く海藻を食べてきた民族だが、そのため海藻は健康食品というより、ごく日常的な保健食材として捉えられてきた。

月曜日, 3月 10, 2008

しそ油

〇しそ油

 シソ科のシソ(紫蘇)やエゴマ(荏胡麻)の種子から採られる油脂で、エゴマの油脂はえ油(荏油)と呼ばれる。個の油脂が近年脚光を浴びる理由は、他の植物油ではアマニ油以外にはほとんど含まれないα-リノレン酸が主体(含有量約70%)だからである。α-リノレン酸はn-3系の多価不飽和脂肪酸で、 ヒトの体内では合成されないため食品から摂取しなければならない必須脂肪酸である。体内ではEPAやDHAに退社されるので、これらの機能も合わせ持っている。この脂肪酸の高揚が明らかにされたことから、第2の健康油として健康食品業界の寵児となった。

 α-リノレン酸の注目度が高まる中で、その独自の効果も次第に明らかにされてきた。例えば、乳ガンの抑制効果に関してはアメリカのE・キャメロン(カリフォルニア州ガン予防研究所)、米倉郁美・佐藤彰夫(山梨大学)、長澤弘(明治大学)らが、また大腸ガンについては成澤富雄(秋田大学)、広瀬雅雄(名古屋市立大学)らが有効性を解明している。また、体液性免疫を司る生理活性物質のロイコトリエンがリノール酸から代謝された場合よりも、α-リノレン酸から代謝される場合の方が、数十分の一も作用が穏やかで、アレルギーによる炎症反応に対し抑制的に働くことを奥山治美(名古屋市立大学)らが報告している。このほか、血圧の上昇を抑え、血小板凝集を抑制して脳梗塞や心筋梗塞を予防するという報告もある。

日曜日, 3月 09, 2008

キャラウェイ

〇キャラウェイ

 セリ科カルム属の1~2年草で、学名はCarum carui。和名はヒメウイキョウ。紀元1世紀に著されたディオスコリデスの薬物誌にも収載されているほど古くから利用されてきた。駆風薬、鎮痛薬、健胃薬のほか、媚薬としても使われた。

 咳や風邪の時に果実(キャラウェイシード)を煎じて飲むと、症状を和らげてくれる。消化促進作用があり、おなかの調子が優れない時にも効果的である。また、母乳の出をよくするハーブとしても知られている。その場合は、果実をそのまま噛んだり、煎じたりして用いる。果実から得られる精油には大腸菌や連鎖球菌に対する抗菌作用が認められている。果実には独特の甘い香りがあり、ザワークラフトに欠かせないスパイス。葉はサラダに用いられる。

土曜日, 3月 08, 2008

クミン

〇クミン

 セリ科クミヌム属の一年草で、学名はCuminum cyninum。原産地はエジプトや地中海東部沿岸、インド。和名はマキン。独特の香りと辛味・苦味のある種子はインド料理に欠かせないスパイスとして知られており、カレーパウダーやチリパウダーの材料となる。また、チーズやケーキ、パンなどの風味づけにも使われる。

 薬用植物としても古くから利用され、古代エジプトの医学古典エーベルス・パピルスにも収載されている。駆風薬や鎮痛薬、覚醒薬として、またミイラを作る際にも使われた。インドの伝承医療アーユルヴェーダでは健胃薬として用いれている。クミンの摂取が膀胱ガンの発症率を低めるというイスラエルの研究報告もあるが、クミンのガンに対する効果についてはまだ明確にされていない。種子に含まれる精油は抗微生物活性をもつ。

金曜日, 3月 07, 2008

コリアンダー

〇コリアンダー

 地中海沿岸を原産とするセリ科コアンドムル属の一年草で、学名はCoriandrum sativum。世界各地で最も親しまれているハーブで、中国では生の葉を香菜と呼び、お粥やスープ料理に使われている。インドでは種子がカレーに欠かせないスパイスとなる。

 コリアンダーの種子は古くから食材や薬用に利用されてきた。紀元前1500年のエジプトですでに登場し、古代ギリシャやローマでは消化薬やワインの香りづけ、肉の保存剤として、中国では長寿薬として用いられてきた。また、精油には健胃作用、刺激作用、鎮静作用、駆虫作用などがあり、リューマチ痛や神経痛を緩和するマッサージオイルとしても使われている。

木曜日, 3月 06, 2008

アニス

〇アニス

 セリ科アニス属の一年草で、学名はPimpinella anisum。地中海東部沿岸地域やエジプトが原産で、古代エジプト時代から薬用や調味料として愛用されてきた伝統的ハーブである。アニスの完熟種子(アニスシード)には特有の甘い香りと味があり、今日でもパンや菓子、スープの香辛料、リキュールの香料などに用いられている。種子はアネトールを主成分とする精油を2~3%含み、これがアニスシード特有の芳香と味のもとになっている。

 精油には細菌繁殖を抑える効果がある。種子を潰して煎じたお茶は消化を促す働きがあり、食欲不振、消化不良、腹痛などの改善に適している。また、母乳の分泌を促す作用があり、種子をお湯に浸すアニスティーはヨーロッパでは古くから授乳期の女性のお茶として知られている。この母乳分泌促進作用は動物実験でも確認されている。アメリカの栄養学者E・ミンデルによると、乳牛にアニスオイルのにおいを嗅がせると牛乳の生産量が増加したという(ハーブバイブル、同朋社)。精油の香りには虫が嫌う成分が含まれており、防虫にも効果的であるとされる。

水曜日, 3月 05, 2008

アンゼリカ

〇アンゼリカ

 セリ科シシウド属の多年草で、学名はAngelica archangelica。和名はヨロイグサ、ヨーロッパトウキ。原産地は北ヨーロッパだが、用途の広いハーブであることから多くの国で栽培されている。根や葉、茎、果実から抽出した精油は薬用として、また、茎はシロップで煮詰めて菓子の飾りに、果実はジンの香り付けなどに用いられる。

 薬用として使う場合には抽出液を飲んだり、患部に塗ったりする。消化や健胃の効果がよく知られているほか、呼吸器疾患にも良いとされ、痰を取り除く。アンゼリカには体を温める作用があり、お茶などに混ぜて飲むと血行をよくし、手足の冷えを緩和してくる。民間療法ではリューマチの塗り薬としても利用されてきた。大量に摂取すると血圧や心拍数、呼吸が乱れるので注意が必要。妊娠中は避けたほうがよい。

火曜日, 3月 04, 2008

アンティチョーク

〇アンティチョーク

 アンティチョークは地中海沿岸のエジプトから南ヨーロッパ地方に分布するキク科の多年草で、学名はCynara scolymus。アザミの仲間で和名はチョウセンアザミ。成長すると2mほどになり大型の紫色の花をつける。花の付け根の膨らんだ花托は独特の風味と食感があり、フランスやイタリアでは古くから高級野菜として珍重されている。

 アザミの仲間のハーブは肝臓疾患の症状を和らげる効果のあることが知られており、ヨーロッパの薬草組織療法では、アンティチョークには肝臓の解毒作用を助ける効果があるほか、肝臓組織の再生にも有効であるとされたきた。20世紀に入ると、多くの生物学者らによってアンティチョークの薬理研究が行われ、今日では苦味成分を中心とした多種の有効成分が見いだされている。それによると、アンティチョークの効果を決定つける成分として、苦味成分のシナリンやフラボノイド、セスキルペンラクトン系のシナロピクリンのほか、イヌリン、キナ酸カフェオイルが単離されている。

 アンティチョークの葉の苦味値は15000単位と報告され、苦味成分の含有量が最も高い数値を示すのは開花直前と果実の成熟時とされている。その成分中の苦味成分シナリンには、胆汁の分泌を促進し、血液中の脂肪代謝を活性化することによって血液中のコレステロール値を正常に戻す効果があるとされている。また軽い利尿作用があるほか、胃のもたれや膨満感を解消し、上腹部の痙攣症状の緩和にも効果のあることが臨床試験において確認されている。今日、ドイツの薬品業界ではこのシナリンがアンティチョーク調剤の品質基準を測る指標とみなされている。アンティチョーク調剤には主として糖衣錠や圧搾エキスがある。

月曜日, 3月 03, 2008

まこも(真菰)

まこも(真菰)

 マコモはイネ科マコモ族の草木で、中国南部から東南アジア一帯で水田に栽培されている。わが国ではコモ、コモガヤ、カツミ、、チマキグサと呼ばれ、古くはマコモの実を粥に炊いて食べていたこともあるという。中国では、新芽にマコモ黒穂菌が寄生して細いタケノコ状になったものが中華料理に利用される。マコモは神仏に供せられるケースもよく見かれられる。例えば東京の神田明神では毎年6月にマコモで編んだ輪の中をくぐらせている。出雲大社ではマコモの上を歩かせて、1年間の無病息災を願う行事が古くから引き継がれている。こうした例はマコモの持つ薬効や生命力、食料としての価値を経験で知っていたことによるものであろう。

 その効用について古くは本草綱目などにも記載されている。マコモの根は、「無毒、止小便、止瀉、利腸胃」に、種実は「止瀉、利五臓、利大小便」に、中心茎は「滋人歯、止渇、胸中浮熱風気、水痢」に有効性があるという。これを現代風に解釈して、高血圧・糖尿病・肝炎など卓効があることを示した文献もある(和漢薬1974年、医歯薬出版)。マコモを使った動物実験によると、①腸内の大腸菌を減らし、慢性疾患などに予防効果が認められた。②脳血管障害の予防効果が示唆された、③補体(血漿中の免疫作用をもつタンパク質)の活性が62~82倍となり、免疫力あるいは抵抗力の賦与などに役立つことが示された、などが報告されている。

 マコモを素材とした健康食品には、葉や茎を乾燥させ粉末化したものや、納豆菌を加えて発酵させた後に乾燥・粉末化したものなどがある。

日曜日, 3月 02, 2008

エスピニェイラ・サンタ

〇エスピニェイラ・サンタ

 わが国で漢方薬に使われる生薬は200種ほどだが、「ブラジル産薬用植物事典」(橋本梧郎著)には2168種も収載されている。そのような生薬の宝庫の国から送り届けられてきたのがエスピニェイラ・サンタ(意味は聖女の棘)という薬用植物である。現地で別名「神の棘」「救命の木」などと呼ばれるこの植物はブラジル(特に南部地方)に自生するニシシギ科の灌木で、互生する葉は我が国のヒイラギに似て鋭い棘をもつ。古くから原住民の間で、、胸やけや吐き気を伴う胃酸過多や腸内異常発酵の防止、利尿や緩下剤、虚弱体質の改善などの目的で愛用されてきた。

 近年の研究では内臓の腫れ、肝炎、肝機能障害、膀胱炎、静脈瘤、子宮筋腫、子宮ガンなどへの効果が見いだされているが、なによりも顕著なのは即効性を持つ鎮痛薬としての働きである。向精神薬への関心が高いといわれる現地においてもこのエスピニェイラ・サンタの鎮痛作用はモルヒネやコカインに匹敵するとまで評価されており、胃痙攣、頭痛、神経痛などに葉の煎じ液を飲むだけで劇的な効果を示すという。さらに特徴的なのは単に麻酔性の鎮痛効果ではなく、痛みの原因となる潰瘍などの疾患を修復する作用を併せ持つことである。従って、切り傷、可能、皮膚病などに葉や樹皮の粉末を外用することもお行われてきた。

 ペインクリニック(痛みの療法)への関心が日毎に高まりを見せるわが国にとって、上記のような薬効は座視できるものではない。最近のわが国での実験によれば、ラットを拘束ゲージに入れて浸水を浸すことで生ずるストレス性胃潰瘍に対し、エスピニェイラ・サンタ(以下、ESと省略)のエタノール抽出エキス(500mg/kg)経口投与群は未投与群に比して43.4%も潰瘍発生を抑えた。さらに、ラットに塩酸とエタノールを強制的に投与して胃潰瘍を起こさせた潰瘍モデルに対して、ES抽出エキスの使用性画分、水溶性画分はいずれも潰瘍治療薬であるセトラキサートと同等、またはそれ以上の潰瘍発生抑制効果を示し、その抗潰瘍活性成分がβ-シトステロール及びその誘導体であることも突き止められている。

 また、マウスに刺激性の強いホルマリンを注射すると、最初は直接的な痛みのため(この痛みを一相反応といい、モルヒネで抑えられる)、次いで炎症による痛み(これは二相反応で、アスピリンで抑制できる)のために患部を舐めるしぐさを繰り返すが、この一、二相反応に対してES(とくに脂溶性画分)が優れた鎮痛効果を示すことが確認されており、その活性本体の有効成分がフリーデラン-3-β-オールという物質であることが解明されている。

土曜日, 3月 01, 2008

ヤムいも

〇ヤムいも

 漢方で滋養・強壮・強精・止瀉薬とされる山薬は、我が国が自生するヤマノイモの一種だが、ヤムイモも同じくヤマノイモ科に属し、フィリピンをはじめとする東南アジアで広く自生している。フィリピンではUBEの名があるが、わが国ではヤムいもという通称以外に、根茎を切ると鮮やかな赤紫色を呈するところからパープル・ヤム、乾燥後に微粉末にした健康食品素材を特にパープル・ワイド・ヤムと呼んでいる。

 原産地フィリピンでは一般的に食材として茹でたり焼いたりスプレッド状にして食べられているほか、粉末にしてケーキ、タルト、シャーベットなどにも用いられる。栄養的には炭水化物(粉末で87%)と食物繊維(同約10%)が中心で、カルシウム(100g当たり28.9mg)と鉄(同10.7mg)の含有量が多いのが特徴だ。

 ヤムイモで特に注されるのは、赤紫色の色素成分であるアントシアニン(ポリフェノール)をはじめとするファイトケミカル(植物微量成分)が多く含まれていることである。ポリフェノールはタンニンやカテキン、フラボノイドなどを含めた総称だが、ヤムイモ(エキス・パウダー)の総ポリフェノール含量は9.31%にも及ぶ。アントシアニンは目の疲労回復や近視予防効果で知られる物質だが、体内で活性酸素の生成を抑制することを通じて発ガン・動脈硬化・心疾患・炎症性疾患を予防し、老化現象にブレーキをかける働きのあることが最近の数多くの研究で明らかにされている。

 また、前述の山薬やヤマノイモの滋養強壮効果は、サポニンの働きに加えてネバネバ成分であるムチン(ムコ多糖体)がタンパク質の効率的な代謝を促すことによるとされているが、ヤムイモにもサポニンのようにステロイド核をもついくつかの物質が見いだされており、その一つがジオスゲニンである。ジオスゲニンハDHA(デヒドエピアンドロステロン。副腎で作られるホルモンで、若さを保つホルモンとして知られる)の前駆体となる物質で、女性ホルモンの失調によって生ずる月経前症候群、子宮内膜症、過敏性乳房、不定愁訴、骨粗鬆症、更年期障害(高血圧、のぼせ)、乳ガンなどを防ぐことに寄与するとされている。卵巣を摘出したマウスにジオスゲニンを投与することによって、乳房上皮の発達が確認されたという実験結果が報告されている。