○黄精(おうせい)
本州から九州、朝鮮半島に分布しているユリ科の多年草ナルコユリ(Polygonatum falcatum)の根茎を用いる。中国産の黄精はカギクルマバナナユコユリ(P.sibiricum)およびその近縁植物の根茎である。花の咲く様子を鳴子に見立ててナルコユリという。同属植物のアマドコロとよく似ているが、アマドコロの根茎は玉竹である。
ナルコユリはアマドコロより暖地性で、花が一ヶ所から3個以上つけることが多い。しかしこのアマドコロ属は非常に種類が多く、区別しがたいものも少なくない。このため薬材では太いものを黄精、また一般に黄精よりも玉竹のほうが甘い。
ナルコユリの根茎には粘液質のファカタンやポリゴナキノンなどが含まれ、降圧作用や強心作用、降血糖作用などが報告されている。ただ、生で用いると咽を刺激するため、蒸した熟黄精を使用する。漢方では補気・潤肺・強壮の効能があり、胃腸虚弱や慢性の肺疾患、糖尿病、病後などによる食欲不振、咳嗽、栄養障害などに用いる。
日本の民間では江戸時代に滋養・強精薬としてブームとなり、砂糖漬けにした黄精が売られていた。現在でも東北地方には黄精のエキスを入れた黄精飴が売られている。黄精に砂糖を加え、焼酎につけたものを黄精酒といい、精力減退や病後回復の滋養・強壮薬として知られている。小林一茶も黄清酒を愛飲したと書き記している。