○ノニ
ノニは熱帯アジアからポリネシアにかけて広く生育している常緑潅木で、学名はモリンダ・シトリフォリア。わが国では沖縄県の八重山地方で植樹されており、ヤエヤマアオキとして知られている。
ノニは高さ6mぐらいにまで成長すると楕円形の緑色の葉をつけ、黄色いごつごつした果実をつける。これを採取して日光に当て、完全に熟したものを搾ってジュースにする。味はチーズのような腐臭があるため、グレープフルーツジュースなどとミックスして飲まれることが多い。
ノニという名称はタヒチやハワイでの呼び名で、オーストラリアではチーズフルーツ、インドではインディアン・マルベリーと呼ばれている。古くから世界各地で薬用に使われてきた歴史があり、インドの伝承医学でも利用されていた。特に南太平洋の島々では日常的な健康飲料として用いられ、糖尿病、高血圧、心臓病、関節炎、結核、老化防止の他、外傷や腫れ物、ニキビなどに塗ったり、うがい薬としても使われてきた。
近年になって、ノニの薬理成分の研究はハワイ大学などによって進められ、これまでにプロキセロニン、スコポレチン、アスコルビン酸、モリンジン、テルペンといったフィトケミカルの他、ノニの根からはダムナキャンソールという抗ガン物質も見出されている。
プロキセロニンは、パイナップルに含まれる消化酵素ブロメリンの研究で知られる米国の生化学者ラルフ・ハイニッケらによって見つけられた天然アルカロイド成分で、スプーン1杯のノニ果汁にパイナップル10個分のプロキセロニンが含まれる。プロキセロニンは、プロキセロニナーゼという酵素の存在下で他の物質と結合したとき、体内でキセロニンに変換される前駆物質である。キセロニンは人体の自然治癒力を高める働きをするほか、一連の生化学的反応を行って細胞が正常な機能を維持する作用があるため、ガン細胞の増殖を抑制する効果も期待されている。
スコポレチンは、1993年にハワイ大学でノニの果実から抽出された物質だが、その後の研究で①血圧効果作用、②バクテリアなどに対する抗菌作用、③鎮痛作用、④うつ症や睡眠障害の改善作用のあることがわかっている。スコポレチンは、セロトニンという神経刺激伝達物質の合成に関与しており、セロトニンが欠乏するとアルツハイマー症などの原因となるという報告もある。
ノニにはビタミンCの前駆体として知られるアスコルビン酸も豊富だ。①広範囲な有害成分やストレスから体を守る、②ビタミンDとともに鉄分の吸収を高める、体内で発ガン物質の生成を防ぐなどである。
このほか、ノニのフラボノイド(色素成分)であるモリンジンには鎮痛・鎮静作用がある。また、ノニの実に含まれるテルペンには体力増強作用が見込まれている。
ノニはジュースとして飲まれるのが一般的だが、最近は果汁だけ出なく、ノニの他の部分の抽出液を加えた製品が多く発売されるようになってきている。このはノニの根の部分にダムナキャンソールという抗ガン物質が含まれていることが明らかにされたからだ。
ダムナキャンソールは日本人研究者・平松朋紀によって、ヤエヤマアオキの根から単離されたもので、1993年にガン専門誌「キャンサーレター」にその抗ガン性が掲載され、薬学者の間でも大きな話題になった。研究では、ダムナキャンソールはガン細胞を正常な細胞に見せかけることで、ガン細胞の増殖を停止させるか少なくとも低下させていると考えられ、肺ガン、大腸ガン、膵臓ガン、各種白血病を含む人の複数のガンに対して有効であることが明らかにされている。
このほか、ノニが免疫システムの増強に有望であることを示唆する報告もある。1997年にハワイ大学で行われた研究では、ノニを飲用することでマクロファージの活性が通常より3倍高くことが明らかにされた。また、別の免疫機能物質であるインターフェロンと結びついたときは、この効果はさらに増加することも明らかにされた。研究者らは、サイトカインの定量と一酸化窒素の確認の実験から、ノニがマクロファージの活動を刺激していることを確認している。
さらにノニには、生体内で一酸化窒素の酸性を増強することも明らかにされた。一酸化窒素は、進入してきた病原菌を死滅させる作用を持っている。ノニが効果的な抗菌剤であることを示す報告があることは、ノニによる一酸化窒素の増加と関係があると考えられている。
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