○蓍草(しそう)
日本の中部以北、北海道を始め東アジアから北米に分布するキク科のノコギリソウ(Achillea alpina)の全草を用いる。葉が深く切れ込みノコギリ状になっているためノコギリソウの名がある。
ノコギリソウの属名、アキレア(Achillea)という名はギリシャ神話の英雄アキレスが、これで切り傷のときの止血に用いたという故事に由来している。近年、日本ではノコギリソウとして観賞用に栽培されているのはおもにセイヨウノコギリソウ(A.millefolium)で、最近ではこのセイヨウノコギリソウが野生化している。
ノコギリソウにはイソ吉草酸、サリチル酸、タンニン、フラボノイド、ステロールが含まれ、また精油成分としてカマズレン、アキリン、シネオールなどが含まれる。漢方では活血・止痛・解毒の効能があり、打撲傷、リウマチ、腹部の腫塊などに用いる。
ヨーロッパでは古くからセイヨウノコギリソウは解熱薬として風邪や熱病に用いられている。また生の葉を揉んで、汁を傷口につけると止血作用があり、ノーズブリード(鼻血)という別名もある。そのほか痔や無月経、リウマチの治療に、また健胃薬や止咳薬としても利用されている。