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金曜日, 4月 04, 2014

乳香

○乳香(にゅうこう)

 紅海沿岸、アラビア半島からトルコにかけて分布しているカンラン科の低木ニュウコウジュ(Boswellia carterii)の膠状の樹脂を用いる。インドでは同属植物のボスウェリア・セラータ(B.serrata)の樹脂がインド乳香(サライグッグル)として用いられている。幹の皮に傷をつけ、数日後に傷口からしみ出して固まった樹脂を採取する。芳香のある乳白色の樹脂が浸出するため乳香の名がある。主産地はソマリアやエチオピア、アラビア半島南部である。

 没薬とともに古代オリエント、エジプト、ギリシャ・ローマ時代の代表的な香料であり、宗教儀式に葷香料という用いられた。古代からインドでは独自の植物樹脂に乳香を混ぜて用いており、これが5~6世紀の中国に伝わって葷陸香と称されていた。このため乳香の別名を薫陸香ともいうが、薫陸香はインドに産するウルシ科の植物を基原とする説がある。

 また地中海沿岸に分布するウルシ科のマスチックスノキ(Pistacia lentiscus)という植物の樹脂も乳香として伝えられたこともあるが、これは現在では洋乳香(マスティック:Mastic)と称されている。

 乳香の成分としてボスウェリン酸やオリバノセレンなどが知られている。ローマ時代のプリニウスは乳香をドクニンジンの解毒薬とし、アラビア医学では解熱・解毒薬として用いていた。近年、ボスウェリン酸の特異な抗炎症作用が注目されており、リウマチや関節炎などの鎮痛薬として用いられ、また潰瘍性大腸炎などに対する効果も検討されている。

 漢方では活血・止痛・筋肉痛、皮膚化膿症などに用いる。とくに乳香と没薬は瘀血による疼痛に効果があるといわれ、しばしば没薬と併用して外科や整形外科領域の鎮痛薬として用いられる。また没薬とともに粉末にしたものを傷や腫れ物に外用する。