○サンザシ(山査子)
山査子(山楂子とも)は漢方薬の平胃散や緒苓湯に加味される生薬としてよく知られているが、18世紀前半に朝鮮半島から薬用植物として渡来以来、日本ではもっぱら観賞用の庭木として定着した。バラ科の落葉性低木で、複雑に枝分かれして棘が多い。春先に短い小枝の先に白い梅の花に似た小花をつけたあとに、直径2cmほどの球形の実がなり、秋に赤または黄色に色づくが、この果実は桃のように子房が肥大したもの(真果)ではなく、子房以外の萼や花托が発達したもので、偽果と呼ばれるものである(リンゴやイチゴも同様である)。
漢方薬では山査子の成熟した果実を乾燥させたものを、健胃・整腸・消化・駆瘀血(古血を除くの意味)、鎮静薬として用い、胃や腸の出血には黒焼きにした山査子炭を用いている。
薬用成分としては、ケルセチン、アントシアニジン、オレアノール酸、クエン酸、クラテゴール酸、フラボノイド、タンニン、サポニンなど多彩であるが、薬理テストでは①血圧をゆっくりと持続的に下げる作用(血管拡張作用)、②赤痢菌や緑濃菌に対する抗菌作用、③血中コレステロールを低くする作用、④降圧作用及び強心作用、⑤胃液の分泌を促進する作用、⑥月経痛や産後痛を癒すなどが認められている。
調理では、肉類を煮るときに山査子の実を数個入れると肉が柔らかくなるといい、また、煮魚に加えれば毒消しになるといわれている。民間的な使われ方としては、完熟寸前の果実を採って、日干ししたものを煎じて飲むと(果汁そのままでも良い)二日酔いに効く。また、成熟した山査子の実500g(種子を除く)に対して、氷砂糖200g、1.8Lのホワイトリカーを加えた山査子酒は健胃・整腸によい。