○エブリコ
北海道、択捉島、色丹島、中国の東北部、シベリア、ヨーロッパの北部などに分布し、カラマツなどのマツの幹に寄生するサルノコシカケ科の担子菌類エブリコ(Fomes officinalis)の子実体を用いる。樹幹から垂れ下がり、下方が膨らんで馬蹄形ないし釣鐘型をしている。エブリコはアイヌ語で、東北地方ではトボシ(トウボシ)とも称され、また江戸時代の本草書にはテレメンテイコの名でも呼ばれていた。
エブリコにはアガリチン酸やエブリコ酸が含まれ、アガリチン酸は汗の分泌を抑制する作用があると報告されている。旧ソ連ではアガリチン酸は製剤化され、結核などによる盗汗の治療に応用されているという。副作用として胃に対する刺激がある。噛むと苦味が強く、苦味のため時に悪心がみられる。
エブリコはイケマ(牛皮消根)とともにアイヌの霊薬のひとつで、疝気、腹痛、食あたり、眼病、脚気、結核、盗汗、火傷、創傷などの万能薬として用いていた。江戸自体に緩経湯という四物湯にエブリコを加えた処方があり、月経痛の治療に用いられた。中国の民間療法では気管支炎や胃酸過多、関節リウマチなどに用いられている。
最近、毛穴を収縮し、皮膚分泌を抑制すると同時に、皮膚を乾燥から防ぐことから化粧品にも配合されている。