○納豆菌
納豆の原料となる大豆は、畑の肉とも言われるヘルシー食品だが、これに納豆菌を作用させた発酵食品である納豆は、栄養成分としては大豆そのものよりもビタミンB群(B1、B2、B6、B12、パントテン酸、ニコチン酸)の含有量が多い。とりわけB2は大豆の5倍も含まれるが、これは納豆菌が増殖するときビタミン類を合成するためである。
米を主食とする通常の食事から見ると、米のデンプン質が75%、納豆のたんぱく質35%、脂肪20%というバランスは絶妙で、非常に良い組み合わせだといえる。しかも発酵によって、煮豆なら65%程度だった消化吸収率が大幅に改善され、90%程度にもなる
納豆が日本人の食事に登場したのは3000~4000年前の縄文時代と考えられ、奈良時代に完全に定着したものといわれている。今日残っている納豆の薬効に関する伝承としては、①納豆を常食していると結核にならない、②農繁期には納豆を食べよ、③納豆を肴に酒を飲むと悪酔いしない、④シラクモ(皮膚病の一種)には納豆のネバネバ(主成分はムチンという物質)をつけるとよい、⑤高血圧や心臓病に効く(リノール酸の作用)、⑥下痢が治る(納豆菌の整腸作用)、などのほか、乾燥させ粉末にした納豆を常用すると胃の調子がよいとか、風邪が治るといったものまで、非常に多くのものがあるが、これは納豆が古くから幅広く愛用されてきた証拠であるといえよう
さらに納豆は大豆のタンパク質を酵素分解しているので、人体に不可欠の必須アミノ酸群を含んでおり、それが生理活動を活発にすると同時に、脳細胞の活性化を促す。勉強に集中する学生や、仕事がハードなサラリーマンなどには、うってつけの滋養強壮食ということができる。
納豆の効用は栄養的な素晴らしさだけでなく、納豆菌自体の優れた作用に負うところが大きいことも、見逃せない要素となっている。その第一が整腸作用である。この作用は乳酸菌よりも強く、腸内の腐敗菌を押さえ込む時間も乳酸菌より長く続く。第二は、ある種の腸内有害細菌やウイルスに対して、相当の対抗性ないし抑止効果を持っていることである
納豆菌に制ガン作用があるという研究発表もある。それによれば、ガン細胞を食い殺すT細胞を活性化するインターフェロンを、納豆菌が誘発するのだという。納豆には納豆菌によって作られるナットウキナーゼという酵素が多量に含まれているが、これが血液の固まりである血栓を溶かすことで、脳梗塞や心筋梗塞を予防するという学会発表もなされていることは興味深い。