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土曜日, 4月 11, 2015

秦皮

○秦皮(しんぴ)

 日本の本州中部以北に自生するモクセイ科の落葉高木トネリコ(Fraxinus japonica)などの樹皮を用いる。中国ではオオトネリコ(F.rhynchophylla)やヒメトネリコ(F.bungeana)などの樹皮を用いる。

 これらの幹や皮にイボタロウムシが白色の蠟を分泌することから白蠟樹の名があり、これを練ったもので戸のすべりをよくしたことから、戸ねり粉という語源説もある。市場にはクルミ科のヒメグルミの樹皮も秦皮として出ているが、適当ではない。

 秦皮にはクマリン類のエスクリンやエスクレチン、タンニンなどが含まれ、エスクリンのために切り口を水をつけると水は青い蛍光をする。薬理的には消炎、鎮痛、尿酸排泄作用が知られている。

 漢方では止瀉・清熱燥湿・明目の効能があり、下痢、帯下、目の充血などに用いる。裏急後重を伴う細菌性下痢には白頭翁や黄連・黄柏と配合する(白頭翁湯)。目の充血に秦皮の煎液で洗眼したり、目の痛みには菊花や黄連と配合して服用する。ヨーロッパや北アジアに分布する近似種のセイヨウトリネコ(F.excelsior)は通風の治療薬として知られている。

人尿

○人尿(じんにょう)

 健康人の小便の中間尿を用いる。とくに10歳以下の男子の小便を童便といい、良品とされている。また妊娠2~3ヶ月の健康な妊婦の尿を妊娠尿として用いることもある。

 用法は新鮮な尿をそのまま1~2杯飲むか、薬湯に混ぜて飲む。成分は電解質や尿素、硫酸、尿酸、アンモニアなどのほかビタミンやホルモンも含まれる。妊娠尿では2ヶ月前後に尿中HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の含量が最も多くなる。妊娠尿は尋常性乾癬に効果があるという報告もある。

 漢方では滋陰清熱・止血・活血化瘀の作用があり、結核などの発熱や喀血、高齢者や病後の衰弱に用いる。傷寒論では下痢で陰液まで損なわれたときに白通湯に猪胆汁とともに人尿を配合する。

 古くから世界各地に民間療法として自分が排泄した尿を飲む飲尿療法が行われている。かつてヨーロッパで歯磨き粉や口腔洗浄液の原料として人尿が利用されていたといわれている。また人尿を癌治療に応用する試みも行われており、中国で人尿から抗癌作用がある成分が抽出されたとの発表もある(CDA-Ⅱ)。

 今日、医薬品として人尿から血栓溶解剤のウロキナーゼや酵素阻害剤のウリナスタチンが抽出精製されている。また尿中の沈殿物が便器に付着したものを人中白、童尿と石膏で加工したものを秋石という。