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金曜日, 2月 28, 2014

菟絲子

○菟絲子(としし)

 日本の各地、朝鮮半島、中国に分布するヒルガオ科のつる性一年草ネナシカズラ(Cuscuta japonica)の種子を用いる。そのほかハマネナシカズラ(C.chinensis)およびマメダオシ(C.australis)の種子も用いる。日本では中国産のハマネナシカズラを小粒菟絲子と呼んで区別している。

 ネナシカズラは寄生植物で他の植物にからみつき、吸盤で養分を吸収しながら成長する。宿主植物が決まると根に続くころが枯れて根がなくなるためネナシカズラの名がある。

 種子の成分にはカロテンやタラキサンチン、ルテインなどが含まれる。漢方では補陽・固精・明目・止瀉・強壮の効能があり、足腰の酸痛、遺精、消渇(糖尿病)、視力低下、排尿障害などに用いる。おもに滋養強壮剤として腎陰虚や腎陽虚になどに用いる。

 疲労、腰痛、耳鳴、胃腸障害には熟地黄・山薬・枸杞子などと配合する(左帰飲・右帰飲)。インポテンツや遺精、頻尿、下肢倦怠感などには鹿茸・附子などと配合する(大菟絲子丸)。視力低下や白内障には石斛・菊花などと配合する(石斛夜光丸)。日本でも滋養強壮の薬用酒として菟絲子酒が知られている。

木曜日, 2月 27, 2014

吐根

○吐根(とこん)

 ブラジル南部を原産とし密林に自生するアカネ科の木本状の多年草トコン(Cephaelis ipecacuanha)の根を用いる。3年以上の株の値を乾燥させ、一定期間貯蔵したものを用いる。マレー半島やスリランカでも栽培されている。

 成分のトコンアルカロイドにはエメチンやセファエリンなどが含まれる。エメチンにはアメーバに対する強い毒性や知覚神経を刺激による催吐作用、去痰作用もみられ、またセファエリンにはエメチンより強い催吐作用がある。もともとブラジルの原住民は下剤として用いていたが、ヨーロッパに伝えられてアメーバ赤痢の特効薬として知られるようになった。

 少量では食欲増進、去痰剤としても使用される。今日でも代表的な催吐剤である。日本では余り普及していないが、欧米では胃洗浄の代わりに吐根シロップを用いることのほうが多い。日本では浅田飴など市販薬の鎮咳・去痰薬にしばしば配合されている。

月曜日, 2月 24, 2014

杜衝

○杜衝(とこう)

 中国の江蘇、省を産地とするウマノスズクサ科の多年草トコウ(Asarum forbesii)の根または全草を用いる。日本では近縁植物のカンアオイ(A.nipponicum)の根を杜衝あるいは土細辛という。トコウの根は近縁植物のウスバサイシン(生薬名:細辛)の根と似ているため土細辛という名があるが、根の香りは細辛よりも弱い。

 トコウの根には精油中に芳香性のメチルオイゲノール、サフロール、エレミシンや鎮咳作用のあるピペコール酸などが含まれている。漢方では散寒・止痛・平喘の効能があり、感冒時の頭痛や咳嗽、歯痛、胃痛、肋間神経痛などに用いる。細辛の代用品として用いられることもあるが、香気・薬効ともに細辛には及ばない。

金曜日, 2月 21, 2014

土荊芥

○土荊芥(どけいがい)

 メキシコおよび西インド原産のアカザ科の一年草アリタソウ(Chenopodium ambrosioides)の花穂のついた全草を用いる。日本には天正年間に南蛮人によって伝えられ、ルウダソウの別名もある。アリタソウの名は佐賀県有田で栽培されていたという説やスペイン語のルーダに由来するという説がある。近年では毛の多いケアタリソウやアメリカアリタソウなどが北米大陸から帰化して日本各地に自生している。

 アリタソウの全草に独特の強い臭いがあり、この草を家の入り口にかけておけば災いを免れるといった言い伝えもある。全草には精油のヘノポジ油が含まれ、その主成分はアスカリドールである。

 アスカリドールは加熱すると爆発する性質があり、寄生虫に対する強い駈虫作用がある。またアメーバ赤痢や白癬菌症に対しても効果がある。しかし、過量に服用し、吸収されると悪心、嘔吐を起こし、ひどければ腸管麻痺や耳鳴り、難聴、視覚障害、痙攣や意識障害などの副作用があるため、必ずヒマシ油などの下剤と併用する。

 漢方では性味は辛・温・有毒であり、駆虫・殺虫の効能がある。中国では駆虫薬として用いるほか、関節リウマチや脱肛にも用いられる。また頭虱や湿疹、毒蛇咬傷、出血などに外用する。メキシコや中南米ではエパソーテ(Epazote)と呼ばれ、独特の匂い科のある香辛料として利用され、薬用としては腹部膨満や無月経、マラリア、喘息などに効果のあるハーブとして知られている。

木曜日, 2月 20, 2014

土槿皮

○土槿皮(どきんぴ)

 中国の浙江・安徽省などの高地に分布するマツ科の落葉高木イヌカラマツ(Pseudolarix amabills)の樹皮および根皮を用いる。カラマツに似た樹高40mに達する高木で、秋に鮮やかな黄色に染まるため金銭松とか金松の名がある。華東地方で用いられていた民間薬であるため本草書にはなく、近年になって注目されてきた生薬である。

 樹皮や根皮にはフェノール性物質やタンニンなどが含まれ、抗真菌作用や止血作用が知られている。中国では専ら水虫やたむしの外用薬として有名である。土槿皮という名はアオイ科のムクゲ(Hibiscus syriacus)の樹皮である木槿皮の効能と似ていることに由来する。

 土槿皮のチンキ剤には強い抗真菌作用が認められるが、水浸液には抗真菌作用はみられない。皮膚真菌症、湿疹、神経性皮膚炎にはアルコールに浸したエキス、またはすり潰して粉末にしたものを患部に塗布する。日本でも複方土槿皮チンキという名で水虫の治療薬として販売されている。

水曜日, 2月 19, 2014

土瓜根

○土瓜根(どかこん)

 日本、台湾、中国の各地に分布しているウリ科のつる性多年草カラスウリ(Trichosanthes cucumeroides)の根を用いる。

 カラスウリは神農本草経では土瓜と呼ばれ、金匱要略に土瓜根という名で記載されているが、現在では一般に王瓜根と呼ばれている。種子も王瓜子と呼ばれ薬用にされる。同属植物のキカラスウリ(栝楼)の根は栝楼根としてよく知られているが、土瓜根はしばしば栝楼根の代用としても利用されてきた。

 カラスウリの根には多量のデンプンやアルギニン、コリンが含まれる。漢方では清熱・止渇・利尿・活血の効能があり、熱による口渇や尿量減少、扁桃炎、月経異常、打撲傷などに用いる。

 月経困難症や月経の回数が多いときには桂枝・芍薬・シャ虫と配合する(土瓜根散)。日本の民間では催乳薬としても知られ、母乳の出をよくするために用いる。また根のデンプンを天花粉あるいは「汗しらず」と称して夏の汗疹に用いられている。ただし天花粉というのは、本来、栝楼根のことをいう。

月曜日, 2月 17, 2014

銅緑

○銅緑(どうりょく)

 銅を湿った空気中に放置すると表面に緑色の銹ができる。この成分は塩基性炭酸銅(CuCO3・Cu(OH)2)である。また銅に酢酸の蒸気をかけるとやはり緑色の塩基性酢酸胴の銹ができる。これらの銹を銅緑という。

 日本では一般に緑青と呼んでいる。また天然の塩基性炭酸銅を主成分とする緑色の鉱物に孔雀石(マラカイト:Malachite)があり、これを砕いて生薬としたものは緑青という。これらは古くから猛毒があると信じられていたが、国立衛生試験場の研究で、それほど毒性の強い物質ではないことが明らかにされた。

 漢方では退翳・去腐・瘡の効能があり、角膜混濁や結膜炎、瘡、痔、歯槽膿漏などに用いる。ただれ目の挿入薬として鉛粉・艾と配合する(金竜散)。

土曜日, 2月 15, 2014

藤梨根

○藤梨根(とうりこん)

 日本各地、朝鮮半島、中国東北部に分布するマタタビ科の落葉つる性藤本サルナシ(Actinidia arguta)、シナサルナシ(A.chinensis)の根および根皮を用いる。シナサルナシはキウイの原種であり、中国ではキウイのことを獼猴桃という。サルナシは小さいながらもキウイと同様の果実がなり猿が好んで食べることからその名がある。

 中国の民間薬として清熱・利尿・活血・消腫の効能があり、肝炎や浮腫、関節痛などに用いられている。また、中国では古来より、胃癌、直腸癌、乳癌等に対する効果が知られており、現在でも検討されている。

金曜日, 2月 14, 2014

桃葉

○桃葉(とうよう)

 中国を原産とするバラ科の落葉小高木モモ(Prunus persica)あるいはノモモ(P.persica var.davidiana)の葉を用いる。モモの種子は桃仁、花および蕾は白桃花と称して薬用にされる。モモは多くの果実をつけることから木に兆と書き、日本でもももも(百々)という名がある。

 モモの葉にはタンニンやニトリル配糖体が含まれ、鎮咳作用やボウフラ殺虫作用が知られている。漢方では去風湿・清熱・殺虫の効能があり、頭痛や関節痛、湿疹などに用いる。

 近年、中国では桃葉によるマラリアや膣トリコモナス、蕁麻疹などの治療が報告されている。日本ではモモの葉は浴湯料してよく知られ、刻んだ葉を風呂に入れて夏場のあせもや湿疹、かぶれ、荒れ性などに応用する。

 かつてツツガムシ病の特効薬として、焼き石の上に桃の葉を並べ、その上に座って足についたツツガムシを殺したり、桃の枝で作った針でほじり出したと伝えられている、また、ふけ症には葉の煎液で洗ったり、脱肛に濃く煎じた液で坐浴する方法もある。

水曜日, 2月 12, 2014

動物胆






○動物胆(どうぶつたん)

 さまざまな動物の胆嚢および胆汁を薬用に用いる。魚類では鯉魚胆やヤツメウナギの胆、爬虫類ではヘビの蛇胆、鳥類ではニワトリの鶏胆、哺乳類ではクマの熊胆、ブタの猪胆、ウシの牛胆などが薬用にされている。

 近年、熊胆の入手が困難なため、その代用として牛の胆汁を濃縮した牛胆が用いられている。また牛黄はウシの胆嚢や胆管にできた胆石である。胆嚢は肝臓で作られた胆汁を蓄え、濃縮する臓器であり、食事によって胆嚢の収縮が起こり、胆汁が腸に排泄される。

 一般に動物の胆汁には胆汁色素、胆汁酸塩、脂肪酸、コレステロール、レシチンなどが含まれている。胆汁酸塩は胆汁酸がナトリウムやカリウムと結合したもので、胆汁酸はコール酸、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、リトコール酸などがグリシンと結合したグリリコール酸か、タウリンと結合したタウロコール酸として存在する。動物によってこのグリリコール酸とタウロコール酸の比が異なっているるちなみに牛黄の主成分はデオキシコール酸、熊胆はウルソデオキシコール酸である。

 胆汁酸は水に不溶性の脂肪や脂溶性ビタミンなどを乳化させ、酵素作用を活性化させる作用があり、動物の胆嚢および胆汁には抗菌作用、利胆作用、鎮咳作用、鎮痙・止痛作用などのあることが知られている。

 漢方では性味は苦寒であり、清熱・解毒・平肝・鎮驚・明目・通便などの効能があるとされている。日本の大衆薬である救心などには動物胆、敬震丹には牛胆・鯉胆が配合されている。また中国の片仔癀には蛇胆が含まれている。

火曜日, 2月 11, 2014

橙皮

○橙皮(とうひ)

 ヒマラヤ原産のミカン科の常緑低木ダイダイ(Citrus aurantium)やアマダイダイ(C.sinensis)の成熟した果実の果皮を用いる。ダイダイの未成熟果実は枳実・枳殻として用いる。

 ダイダイは奈良時代に日本に伝来し、古くはカムスとも呼ばれていた。ダイダイという名は果実は枝についたまま数年(代々)も落ちないことにより、カムス(蚊無須)と名は干した皮を焚いて蚊よけにしたことによる。ちなみに果肉をしぼった汁をポン酢というのは、オランダ語のポンスから出ている。

 アロマオイルでは、ダイダイはビターオレンジとして有名で、花から得られた精油はネロリ(Neroli:橙皮油)、果皮からの精油はビターオレンジ、木の葉と小枝から抽出した精油はプチグレン(Petitgrain)と呼ばれている。

 果皮には主としてd-リモネンからなる精油やナリンギン、ヘスペリジンなどが含まれる。橙皮は西洋医学的に芳香性苦味健胃剤として苦味チンキや橙皮シロップの原料にも使われている。漢方では理気・健胃・去痰の効能があり、陳皮の代用として消化不良、二日酔いなどにも用いる。

 民間療法ではダイダイを酒に漬けた液で手や顔の荒れを治したり、果皮を干したものを煎じて車酔い、風邪、咳のときに服用する。また疝気や婦人の腹痛などに用いられた。

月曜日, 2月 10, 2014

桃仁

○桃仁(とうにん)

 中国北西部を原産とするバラ科の落葉小高木モモ(Prunus persica)あるいはノモモ(P.persica var.davidiana)の核の中にある種子を用いる。花は白桃花、葉は桃葉と称して薬用にする。日本には古くから伝えられ、弥生時代の遺跡からモモの種子が発見されている。すでに平安時代から栽培されていたが、専ら花の観賞用だったといわれている。

 果樹としての記録は江戸時代からであるが、当時の桃は小さく果肉が硬かったと考えられ、今日のような栽培品種は明治以後に導入されたものである。ただ薬用の桃仁としては、果物用の白桃や水蜜桃では種子が小さいため適さない。

 桃仁の成分として脂肪油40~50%、青酸配糖体のアミグダリン、酵素のエムルシンなどが含まれ、薬理作用として抗炎症作用、鎮痛作用、血小板凝集抑制作用、綿溶系活性作用などが知られている。月経障害、腹部腫瘤、下腹部痛、神経痛、打撲傷、内臓の化膿症、便秘などに用いる。

 漢方では活血・排膿・潤腸の効能があり、白桃花は利尿・緩下剤として浮腫や脚気、便秘の治療に、桃葉は浴湯料として皮膚病などに用いられる。

金曜日, 2月 07, 2014

冬虫夏草






○冬虫夏草(とうちゅうかそう)

 中国の四川・貴州・雲南省、チベット自治区などに産する蛾の幼虫に生えたキノコの一種を用いる。バッカクキン科のフユムシナツクサタケ(Cordyceps sinensis)と呼ばれる菌類で、とくにコウモリガ科の昆虫の幼虫に寄生する。

 幼虫(栄養体)の体内に入った菌は菌糸をのばして生長し、やがて体内を完全に占領し、さらに細い柄(子実体)を出してキノコが発生する。幼虫の長さは3~8cm、子実体は4~10cmの棍棒状で頭部がやや膨らんでいる。市販されている薬材は全長が10cm前後、黄褐色である。

 冬には虫の姿をし、夏に変じて草になると信じられていたため冬虫夏草の名があり、古来、ウドンゲとともに吉祥の印として知られていた。夏至の頃に雪が残っている山に入って、雪の表面から露出している子実体を見つけて掘り出す。かつて冬虫夏草という名はこの中国産のみの名称であったが、現在では一般に昆虫寄生菌に対する総称となっている。日本でも同様の昆虫寄生菌が発見されることもあり、またセミの幼虫に寄生したセミタケを特に金蝉花という。

 近年、中国では冬虫夏草の代替品として北虫草が人工栽培されている。北虫草はイコガの幼虫に冬虫夏草菌の一種C.militarisを寄生させたもので、冬虫夏草と比べ、亜鉛、セレン、ビタミンの量が多いことが認められている。

 冬虫夏草の成分には各種アミノ酸、ビタミンB12、ミネラルのほか、コルディセピン(虫草酸)、ジオクシアデノシン(虫草素)、ポリサッカライド(虫草多糖)、マンニトール(甘醇露)、エルゴステロールパーオキサイドなどが含まれ、抗菌作用、気管支拡張作用、血糖降下作用、降圧作用、免疫賦活作用、抗腫瘍作用などが報告されている。

 漢方では肺腎を補い、去痰・止咳の効能があり、肺結核などによる慢性の咳嗽、喀血、自汗、盗汗、インポテンツ、病後の体力低下などに用いる。虚弱体質の改善に人参、鹿茸などと配合する(双科参茸丸)。

 冬虫夏草は古くから不老不死、滋養強壮の妙薬といわれ、薬酒(冬虫夏草酒)や薬膳料理などにも珍重されている。1993年の世界陸上選手大会で活躍した中国の女子陸上チームが「冬虫夏草入りドリンク」を愛飲していたと大きく報じられ、ブームとなったためそれ以後価格が大きく上昇した。

木曜日, 2月 06, 2014

稲草






○稲草(とうそう)

 イネ科のイネ(Oryza sativa)の茎葉を用いる。コメはその粘性によって粳と糯に区別されるが、いずれの茎葉も稲草として用いる。一般にはもち米(糯米)を収穫した後の地上部を用いる。種子はうるち米を粳米、もち米を糯米といい、もち米の根と根茎を糯稲根鬚といい、二番芽を餅苗という。

 稲草には理気・消食の効能があり、消化不良、食滞、下痢、腹痛、糖尿病に用いる。糯稲根鬚には止渇・止汗・清虚熱の効能があり、病後の衰弱や盗汗、口渇、微熱などに用いる。糯米には補気・健脾の効能があり、多尿、発汗、下痢などに用いる。

水曜日, 2月 05, 2014

刀豆

○刀豆(とうず)

 熱帯アジア原産のマメ科のつる性多年草ナタマメ(Canavalia gladiata)の種子を用いる。ミャンマーや中国雲南省に自生し、インドや東南アジア、中国南部では栽培されて食用とされる。ナタマメや刀豆の名はさやの形が刀や鉈に似ていることによる。

 ナタマメはタンパク毒を有するが、水煮のあと数時間水にさらせば食用二できる。日本にも江戸時代に渡来し、現在ではおもに若い豆果を福神漬けとして用いている。

 一般にナタマメ属の完熟種子にはサポニンや青酸配糖体、有毒性アミノ酸のカナバニンやコンカナバリンAなどの有毒成分が含まれている。ナタマメ属の毒性は品種により異なり、タチナタマメ(C.ensiformis)やタカナタマメ(C.microcarpa)などには強い毒性がある。

 日本で栽培されているナタマメには、アカナタマメとシロナタマメの品種がある。アカナタマメにはある程度の毒性があるが、水煮の後、数時間水にさらせば食用にできる。一方、シロナタマメには毒性はほとんどないといわれている。

 カナバニンはアルギニンとよく似た化学構造をしており、タンパク質を生合成するときにアルギニンと識別できないため、生命に重大な支障をきたすといわれている。一方、カナバニンの排膿作用、抗炎症作用、血行促進作用なども報告されている。

 コンカナバリンAは、世界で始めて精製、結晶化された植物性の赤血球凝集素であり、抗腫瘍作用が知られている。漢方では温裏・止嘔・補陽の効能があり、しゃっくりや嘔吐、下痢、腰痛などに用いる。日本の民間では膿とりの妙薬といわれ、蓄膿症や歯槽膿漏痔漏などに用いられる。近年、豆を焙煎したナタマメ茶が慢性的な炎症体質者の健康茶として利用されている。

火曜日, 2月 04, 2014

灯心草

○灯心草(とうしんそう)

 日本全土、朝鮮、中国に分布し、水田の畦や湿地に自生するイグサ科の多年草イグサ(Juncus effusus)の茎および髄(灯心)を用いる。日本でもトウシンソウともいうが、古くからあるいはイグサと呼ばれ、その茎は畳表や花むしろの材料として利用されてきた。

 とくに江戸時代以後に瀬戸内海地方(備後・備中)で盛んに栽培されていた。イグサの髄は白くて弾力性があり、それをとってロウソクや灯明の芯に用いた。このため灯心草と呼ばれ、江戸時代には生活の必需品であった。薬材としてもこの髄を乾燥したものが市場に出ている。

 全草にはキシラン、アラバンなどの多糖類やフラボノイドのルテオリンなどが含まれているが、薬理作用は明らかでない。漢方では利水・通淋・除煩の効能があり、膀胱炎などによる排尿障害、浮腫、不眠、心煩、小児夜泣きなどに用いる。

 全身性に浮腫があり、呼吸困難のみられるときには茯苓・沢瀉などと配合する(導水茯苓湯)。肝硬変などによる腹水には蒼朮・白朮などと配合する(分消湯)。気分がすぐれないときには桂枝・蘇葉などと配合する(分心気飲)。「和方一万方」には黒焼きにして末にしたものを乳首に塗り、小児の夜泣きのときに飲ませる方法が記されている。民間療法ではイグサを噛み砕いて傷の止血に用いる。

月曜日, 2月 03, 2014

党参

○党参(とうじん)

 中国の山西・陝西・四川省などに産するキキョウ科のつる性多年草ヒカゲツルニンジン(Codonopsis pilosula)および同属植物の根を用いる。潞洲上党産の人参という意味である上党人参という名から党参と呼ばれていたが、清代になってウコギ科の人参とは別のものとして区別されるようになった。

 四川・河北省に産する同じキキョウ科のトウジン(C.tangshen)も川党と称され、党参のひとつとして用いられている。またセリ科のミントウジンの根を明党参というが、これは止咳・去痰薬であり党参の代用とはならない。

 成分にはサポニンやイヌリンが含まれるが、詳細は不明である。漢方では補中・益気・生津の効能があり、疲労倦怠、食欲不振、口渇、下痢、脱肛、咳嗽、呼吸困難などに用いる。一般、中国では人参が高価であるため、党参を人参の代用品として幅広く用いている。

 党参は補益作用は人参よりも弱く、人参の量の2~3倍を必要とするがね胃腸機能を高める作用は強く、また性質が穏やかで血圧に影響することも少ない。また貧血改善作用もあるといわれている。補気には黄耆と配合し、補血には当帰と配合し、健脾には白朮と配合し、補陰には麦門冬と配合する。