○鶏子黄(けいしおう)
キジ科ニワトリの卵の黄身を用いる。白身を鶏子白、卵殻を鶏子殻、卵殻膜を鳳凰衣といい薬用にする。卵黄は約15%のタンパク質と約30%の脂肪分を含み、糖質は0.2%と少ない。卵黄タンパク質の大部分はリポビテリン、リポビテレニンなどのリポタンパク質であり、リポタンパク質と結合している脂質の大部分はレシチンを主とするリン脂質である。
卵黄のタンパク質のアミノ酸組成はイソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニンなどの必須アミノ酸をはじめ、ほとんど全てのアミノ酸が含まれている。また脂溶性ビタミンA・D・Eのほか、ビタミンB1・B2、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、鉄、リン、カルシウムなども含まれる。
黄色の色素はカロテノイド系のカロチンとキサントフィルである。レシチンは痔や湿疹、あせも、あかぎれなどの外用薬、また静脈用脂肪乳化剤として用いられるほか、肝硬変の予防やアルツハイマー病の治療にも効果があると報告されている。化粧品としても乳液、口紅、クリーム、ポマード、シェービングクリームなどに配合されている。また卵黄にはコレステロールが含まれているが、レシチンには血中コレステロールを減らす作用もある。
漢方では補陰・補血・止痙の効能があり、煩悶、不眠、熱病による痙攣や意識障害、吐血、下痢、下血、火傷、湿疹などに用いる。胸部に熱がこもって苦しく、眠れないときには黄連・黄芩などと配合する(黄連阿膠湯)。熱病による痙攣や脱水症状には阿膠・牡蠣などと配合する(大定風珠)。また金匱要略には腫れ物に排膿散を用いるときに枳実・桔梗・芍薬の散剤を鶏子黄で飲み下すとある。
また、卵黄をフライパンに入れて弱火で長時間炒ると黒く粘り気のある油が得られる。この卵黄油は古くから日本の民間療法として心臓病、白髪、腰痛などに用いられている。