○野菊花(のぎくか)
近畿以西、朝鮮半島、中国、台湾に分布しているキク科の多年草シマカンギク(Chrysanthemum indicum)や北野菊の頭状花を用いる。中国では全草も野菊または苦薏と称して薬用にする。
山地や丘陵地の道端などでみられるキクで、直径1cmくらいの黄色い頭花が咲く。栽培のキクはシマカンギクとチョウセンノギクを交配したものと考えられ、栽培品種のキクの花は菊花という。菊花を甘菊花というのに対し、野菊花は苦いため苦薏とも呼ばれている。
アブラギク(油菊)という名は、このキクの花や葉からゴマ油で抽出した精油成分を「菊油」として利用していたことに由来する。菊油には殺菌力があり、切り傷ややけどの外用薬として用いたほか、島津藩では蒸留したものを「秘薬薩摩の菊油」と称して下痢や腹痛の薬に使っていた。現在、日本の市場では菊花として、この野菊花が流通している。
シマカンギクの花にはクリサンテミン、αツヨシ、dl-カンフルなどが含まれ、降圧作用、抗菌作用が認められている。中国医学では清熱解毒・降圧の効能があり、感冒、肺炎、胃腸炎、皮膚化膿症、高血圧などに用いる。乳腺炎や皮膚化膿症には金銀花・蒲公英などと配合する(五味消毒飲)。近年、高血圧の予防に野菊花茶が茶剤としてよく利用されている。本来、菊花と効能は異なっているが、日本漢方では慣例として菊花と同様に用いている。