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火曜日, 1月 31, 2012

一角

○一角

 北極海に生息するイッカク科の哺乳類イッカク(Monodon monoceros)の牙を用いる。イッカクはイルカの近縁動物で、体調は約5mで、雄の上顎に1対ある歯牙のひとつの門歯が長くなり、細長く2m以上に伸びるため、イッカクあるいはウニコルン(ユニコーン Unicorn)と呼ばれている。牙は象牙質で螺旋形になっている。

 イッカクの角は中世ヨーロッパにおいて神秘的な解毒薬として珍重されていた。日本にはオランダ医学とともに江戸時代に伝えられた。漢方薬ではないが、サイカク(犀角)と同様の解熱・鎮静の効能があるといわれ、粉末にして服用する。和田東郭は精神病の激しい症状に対して大承気湯に配合して用いている(治狂一方)。

月曜日, 1月 30, 2012

一位葉

○一位葉(いちいよう)

 日本の各地、朝鮮半島、中国に分布するイチイ科の常緑針葉高木イチイの葉を用いる。日本では特に中部地方以北の深山に多く自生し、アララギやオンコなどの呼び名もある。中国ではイチイの枝や葉を紫杉の菜で生薬として用いている。

 かつて高官の笏(しゃく)に用いていたため一位という名があり、建築材や家具材、彫刻材、鉛筆材として知られている。今日でも飛騨高山の一位細工は有名である。また心材は紅褐色であり、浸出液は蘇芳色の染料としても利用されている。

 赤く熟した仮種皮は甘く食べられるが、種子には毒性がある。葉や枝にはアルカロイドのタキシン、タキシニンなどが含まれ、血糖降下作用や中枢神経抑制作用が報告されている。民間では葉や小枝を通経、利尿薬として用いている。また糖尿病にも効果があるといわれ、糖尿病用剤として知られる家庭薬にも配合されている。ただし毒性があるので過量にならないようにする。

 近年、アメリカ北西部に自生するタイヘイヨウイチイ(T.brevifolia)の樹皮から、パクリタキセル(タキソール)という抗癌活性のある成分が分離され、さまざのな癌の治療に用いられている。パクリタキセルは中国産の紅豆杉や日本産のイチイなどにも含まれているが、工業的にはセイヨウイチイ(T.caccata)の葉から抽出したバッカチンという成分が合成されている。

 現在、欧米では西洋イチイはユー(Yew)と呼ばれ、免疫力を高めるサプリメントとして販売されている。ちなみにイチイの同属植物である雲南紅豆杉の材部を原料にした紅豆杉茶が健康食品として輸入され、花粉症などに効果があると紹介されている。

土曜日, 1月 28, 2012

伊豆縮砂

○伊豆縮砂(いずしゅくしゃ)

 関東地方以西、四国、九州、台湾、中国に分布するショウガ科の多年草ハナミョウガ(Alpinia japonica)の種子を用いる。中国の生薬名ではハナミョウガの種子を土砂仁、全草を山姜という。葉がミョウガに似て、花が目立つことからハナミョウガの名がある。

 日本では熱帯アジアに産するショウガ科の植物の種子、縮砂の代用品として江戸時代から利用されている。さらに伊豆縮砂の代用品として同じくショウガ科のアオノクマタケラン(A.intermedia)の種子(黒手)やゲットウ(A.speciosa)の種子(白手)が用いられた。この黒手と白手では黒手のほうが品質がよいといわれている。いずれも西南日本、得に沖縄県などに自生しているが、南方より帰化したものともいわれている。

 ゲットウ(月桃)という名は台湾の呼称であり、沖縄の方言ではサンニン、つまり砂仁(縮砂の異名)とも呼ばれている。ちなみに台湾産の縮砂はゲットウの種子である。

 ハナミョウガの種子には精油のシネオール、β-ピネンのほか、フラボノイドのイザルピニンなどが含まれる。種子はソースなどの香辛料や芳香健胃の家庭薬の原料として用いられている。漢方では健胃・理気の効能があり、縮砂の代用として腹痛や嘔吐、下痢、生理痛の治療に用いる。

金曜日, 1月 27, 2012

郁李仁

○郁李仁(いくりにん)

 中国北部原産のバラ科の落葉低木ニワウメ(Prunus japonica)やコニワザクラ(P.humilis)などの種子を用いる。根も郁李根として用いる。現在、郁李仁の市場品には大李仁と小李仁の2種類がある。ただし、大李仁は主にバラ科のユスラウメ(P.tomentosa)の種子であり、薬用には小李仁を正品とする。

 ニワウメは江戸時代に渡来し、花が美しいため観賞用として栽培されている。果実はサクランボ状で食べられる。熟したニワウメの果実を摘みとり、果肉を除去し、核の殻を割って、種子を取り出す。この種子、郁李仁は6×4mmくらいの小さなアーモンドの形をしている。種子の成分には青酸配糖体のアミグダリンのほか、サポニン、フィトステロール、ビタミンB1などが含まれる。

 漢方では潤腸・利水消腫の効能があり、便秘や排尿減少、浮腫に用いる。郁李仁は麻子仁よりもやや強い潤下作用があり、高齢者や産後の慢性の便秘に柏子仁・桃仁などと配合する(五仁丸)、顔面及び手足の浮腫に防已・青皮などと配合する(郁李仁湯)、また脚気の浮腫にはヨクイニン・杏仁などと配合して用いる(三仁丸)。なお郁李根は歯の治療薬としてよく知られ、歯痛や歯肉炎には煎じた液でうがいする。

木曜日, 1月 26, 2012

硫黄

○硫黄

 天然に産する硫黄の単体、硫黄鉱(サルファSulphur)を加熱、加工したものを用いる。火山国の日本で盛んに採掘され、海外へ輸出していたこともある。現在、硫黄は石油精製過程で得られるため、日本の硫黄鉱山はほとんど閉山となっている。また金属硫化物や硫黄塩として地球上に広く分布し、生物体内にもタンパク質および有機化合物の成分として含まれている。

 古くから燃える不思議な物質として知られ、西洋の錬金術でも、中国の錬丹術でも重要な原料であった。単体のままマッチや黒色火薬の原料にされるが、精製硫黄はパルプ製造用の亜硫酸や二硫化炭素の原料になる。薬材の硫黄は表面がざらざらした軽い黄色の塊で、質はもろく砕けやすい。特異な臭いがあり、燃やすと炎を出し刺激性のある二酸化硫黄(亜硫酸ガス)の臭気を発する。粗製硫黄を昇華させて固定したものは硫黄華といい、無味無臭の黄色い粉末である。

 硫黄イオンは細胞膜を通過しないため薬理的作用はないとされているが、服用すると腸内細菌により還元され、硫化物や硫化水素となって腸壁を刺激し、また水が腸内に滲出して下痢をおこす。また硫黄を皮膚に外用するとSH基をS-Sに変えて角化した皮膚を軟化させ、また硫化水素やペンタチオン酸となって抗菌作用が発現する。かつては痤瘡の治療にクンメルフェルド液、湿疹や疥癬の治療に硫黄軟膏などがよく使用された。

 漢方では止痒・補陽の効能があり、湿疹や疥癬、痤瘡などの外用薬として用いるほか、インポテンツや慢性の下痢、老人性便秘などに用いる。小児の寄生虫症で腹痛、夜泣きするときには平胃散に硫黄を加える。老人性の虚寒の便秘に半夏と配合する(半硫丸)、老婦人の腰冷えや帯下に竜骨と配合する(竜硫丸)。近年、北米原産のテーダ松から抽出された有機硫黄成分MSM(メチルスルフォニルメタン)に鎮痛作用や抗炎症作用、抗アレルギー作用があり、関節炎や筋肉痛の緩和、アレルギー性鼻炎の改善、髪や爪の成長促進などに効果があるとして注目されている。

水曜日, 1月 25, 2012

安息香

○安息香(あんそくこう)

 エゴノキ科の高木で、インドネシアに分布するアンソクコウノキ(Styrax benzoin)、タイや東南アジアや中国南部に分布するシャムアンソクコウノキ(S.tonkinensis)の樹脂を用いる。樹幹に傷つけると黄色の樹液と白色の樹脂が徐々に分泌されるが、この樹脂を採取し乾燥させたものを薬材とする。薬材の表面は黄褐色ないし赤褐色、内部は乳白色の硬くてもろい不定形の塊で、芳香があり、過熱するとすぐに軟化する。

 インドネシア産のものはスマトラ安息香、タイを主産地とするものはシャム安息香といい、世界市場の90%はスマトラ安息香である。日本に輸入される安息香もほとんどはスマトラ安息香であるが、シャム安息香のほうが高級とされる。

 スマトラ安息香の成分には芳香族化合物の安息香酸、ケイヒ酸、バニリンなどが含まれる。一方、シャム系には安息香酸やバニリンが多く含まれるが、ケイヒ酸は含まれない。安息香酸には中枢神経興奮作用殺菌作用があり、安息香酸ナトリウムは抗カビ、防腐剤として利用されている。また安息香チンキは呼吸器の局所粘膜を刺激して分泌物を増加させる作用があるため、かつて吸入剤の去痰薬として使用されたことがある。

 一方、古代エジプト時代から香料として、また宗教儀式の薫香として使用されてきた歴史があり、現在では、主に石鹸やポマードの香料やアロマテラピーの精油(ベンゾイン)として用いられている。

 漢方では開竅・理気・活血の効能があり、意識障害、胸や腹の痛み、産後のめまい、小児のひきつけなどに用いる。失神などの意識障害や胸痛、腹痛には蘇合香・麝香・沈香などの芳香薬と配合する(蘇合香丸)。一般に内服では丸剤や散剤として用いる。そのほか白癬症などの外用薬として有名な華陀膏にも蝋梅とともに配合されている。

火曜日, 1月 24, 2012

アロエ

○アロエ

 アロエはアフリカの地中海沿岸部を原産とするユリ科の植物であり、アロエとは、アラビア語で苦いという意味である。中国では蘆薈薈と記し、日本に渡来して蘆薈をロカイと読み、和名となった。アロエは600種類ぐらいが知られているが、代表的なものにケープアロエ(Aloe ferox)、キダチアロエ(A.arborescen)、アロエベラ(A.barbadenisis)がある。このうちケープアロエは、日本薬局方に収載されており、医薬品以外の食品や化粧品への使用は禁止されている。

 ケープアロエに含まれるアントロン配糖体の苦味成分、アロインには瀉下作用があり、大腸性下剤として常習性便秘に用いられる。またアントラキノン類のアロエエモジンも苦味成分で胃液の分泌促進、緩下作用がある。健康食品として日本では主にキダチアロエ(木立蘆薈)が利用されており、ヨーグルトなどに入っているアロエはアロエベラの葉肉である。日本の家庭で栽培されているアロエは一般的にキダチアロエであり、アロエベラは日本では沖縄でしか栽培されていない。ちなみに欧米でアロエといえば、アロエベラのことである。

 キダチアロエにはアントラキノン類があまり含まれておらず、下剤の効果が期待できないが、葉全体を食品として利用できるのに対し、アロエベラには薬局方成分のアロインが多く含まれているため表皮を除いた葉肉のみが利用されている。

月曜日, 1月 23, 2012

アルカロイド

○アルカロイド

 植物の中には分子内に窒素を含み塩基性を示す成分があり、これらをアルカリのようなものということからアルカロイドと総称する。アミノ酸から生合成され、ヒトの生理活性アミンと類似の構造を持つため、強い生物活性を持つ。植物毒の多くはアルカロイドであり、薬用植物の主成分もアルカロイドであることが多い。

 代表的なアルカロイドとして麻黄のエフェドリンや附子のアコニチンがある。一般にアルカロイドは、湯液の酸性度が高い場合や酒で煎じた場合には成分の抽出量が増加する。また、長時間加熱することで分解され、活性が低下する。一方、アルカロイドの吸収にも、pHが関与し、胃酸によってイオン化するため、胃での吸収が低下する。食後や多量の湯と一緒に摂取すれば、胃酸は薄まり、アルカロイドの吸収量は増える。アルカロイドの抽出量や吸収量が増加すれば、作用は強くなるが、副作用(中毒)が出現する危険性も増大する。このため、麻黄や附子を煎じたり、服用する場合には、専門家の指示に随うことが必要である。現在までに数千種のアルカロイドが知られており、アルカロイドを含有する植物として、キンポウゲ科、ケシ科、ナス科、ヒガンバナ科、マメ科、メギ科、ユリ科、トウダイグサ科、ウマノスズクサ科などがある。

土曜日, 1月 21, 2012

あり

○あり(蟻)

 中国南部の広西省、雲南省に分布するアリ(Polyrhachis vicina)を用いる。アリは南極と北極を除いて世界中に分布し、現在約8800種が知られており、日本でも277種のアリが報告されている。

 中国南部や東南アジアではツムギアリを、オーストラリアのアボリジニはミツツボアリを食用にする習慣がある。日本ではアリを薬用に用いた記録が名類聚抄(932年)にあり、中国の本草書、本草綱目(1578)にも記載されている。中薬大辞典には、四川中薬誌を出典として黒蟻(Formica fusca)を黒螞蟻として収載されている。擬黒多刺蟻は、中国政府衛生部が唯一、食用と薬用に認定している種類といわれている。

 アリには、タンパク質と脂肪、ビタミンB1・B2・B12、Eなどのビタミン類、蟻酸、クエン酸、酢酸などの有機酸のほか、亜鉛、カルシウム、鉄、マンガン、セレンなどのミネラルのほか、昆虫脱皮ホルモンのエクジステロンなどが含まれている。

 中国では補腎、扶正、止痛、安神などの効能があるとして、滋養強壮、免疫機能の改善、抗炎症、老化防止などの目的で用いられている。臨床的には、リウマチ、関節痛、神経痛、生活習慣病、慢性肝炎、性機能減退などに効果があると謳われている。中薬大辞典では黒螞蟻を蛇咬傷や腫れ物の外用薬として紹介している。

金曜日, 1月 20, 2012

あまにん

○あまにん(亜麻仁)

 中央アジア原産のアマ科の一年草アマ(Linum usitatissimum)の種子を用いる。アマは茎に強い繊維があり古くからリンネル(リネン)として用いられ、また種子からはアマニ油(亜麻仁油)という良質の乾性油が採れる。亜麻の品種は繊維用と油用とで異なり、繊維用は旧ソ連、ベルギー、採油用はアメリカ、カナダなどと世界各地で栽培されている。日本には17世紀に薬用として亜麻仁油をとるのが目的で中国から伝わったが、明治初期になって繊維用が北海道に導入された。リンネルとは亜麻布のことで、夏用の服地、肌着、シーツ、キャンバスなどに利用されている。アマニ油はペンキや油絵具、印刷インキなどの工業用としても重要である。日本は生薬名を亜麻仁というが、中国では一般に亜麻子とか胡麻子と称しているため、胡麻と混同しやすいので注意が必要である。

 亜麻油には、他の植物性油にあまり含まれていない必須脂肪酸のα-リノレン酸が多く含まれている。亜麻リグナンは、腸内細菌によって代謝され、女性ホルモン様の作用があるとして注目されている。このため更年期障害の改善や乳癌、結腸癌などの予防に効果があると期待されている。その他、亜麻仁には緩下作用や刺激緩和作用があり、便秘や咽頭の痛みなどにも用いられている。

 漢方では潤腸・止痒の効能があり、便秘や湿疹、脱毛などの治療に用いる。また、かつてハンセン病や肺結核の治療にも用いられた。民間療法では皮膚の痒みに種子をすりつぶして外用する。健康食品ではオメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸の補給として亜麻仁油(フラックスシードオイル)が、亜麻リグナンや食物繊維の摂取には亜麻仁(フラックスシード)が薦められている。ただし亜麻仁油には微量の青酸配糖体が含まれており、過量に使用しないほうがいい。また亜麻仁油は酸化されやすいため、なるべく新しいものを摂取する。

木曜日, 1月 19, 2012

あまちゃづる

○あまちゃづる(甘茶蔓)

 日本では北海道から九州、朝鮮半島、中国、インドなどに分布するウリ科のつる性多年草アマチャヅル(Gynostemma pentaphyllum)の葉あるいは全草を用いる。中国では生薬名を七葉胆といい、欧米では絞股藍(jiaogulan)の発音からジアオグランと呼んでいる。ブドウ科のヤブガラシによく似たつる性植物であり、葉を噛むと甘味があるのでこの名があるが、アマチャとは関係ない。1976年に日本生薬学会でアマチャヅルのサポゲニンが発表され、朝鮮人参の成分と類似することから注目されてアマチャヅルが健康茶としてブームとなった。

 アマチャヅルにはトリテルペノイドサポニンのジペノサイドが含まれ、高脂血症改善作用のほか、抗酸化作用や免疫機能の向上、抗癌作用などが認められ、欧米ではジアオグランという名でアンチエイジングサプリメントとして注目されている。中国の民間では七葉胆に解毒・止咳・去痰の効能があるとされ、粉末を老人性の慢性気管支炎などに用いている。

水曜日, 1月 18, 2012

あまちゃ

○あまちゃ(甘茶)

 本州の山間に自生し、日本各地で庭木などとして栽培されているユキノシタ科の落葉低木アマチャ(Hydrangea macrophylla var.thunbergii)の葉を用いる。アマチャはヤマアジサイと外見は区別できないが、このヤマアジサイの甘味変種とされる。日本の民間薬のため、中国の生薬名はない。

 アマチャの生の葉は苦くて甘味はないが、発酵させると甘くなる。夏に葉を採取し日干しにしたものを水をうって桶の中に積み重ね、一晩ぐらい発酵させ、揉んでから日干しにする。つまり葉の中の甘味成分は配糖体として含まれているため甘くないが、この配糖体が酵素の作用で加水分解されると甘味の強いフィロズルチンに変化する。フィロズルチンは砂糖の約1000倍の甘さがあり、かつて砂糖が普及するまでは甘味料として利用されていた。なお4月8日の灌仏会(花まつり)に、甘露の法雨の代わりとしてアマチャを誕生仏に注ぐようになったのは江戸時代からだといわれている。漢方では用いないが、今日、甘味料及び矯味薬として用いられている。

火曜日, 1月 17, 2012

あへん

○あへん(阿片)

 西アジア原産のケシ科の越年草ケシ(Papaver somniferum)の未熟果の乳液を凝固したものを用いる。果皮を刃物で浅く傷つけると直ちに白色の乳液が分泌する。この乳液は大気中で次第に微紅色から褐色に変化して粘稠化するが、翌朝に竹の刀でそぎとり、乾燥させたものが阿片である。阿片の名はアラビア語のアフィウーンに由来する。英語名のオピウム(opium)は乳汁という意味である。また漢方では成熟したケシの果殻を罌粟殻という。なお、50種以上あるケシの仲間のうちアヘンを生産できるのはこのケシとパパベル・セティゲルム(P.setigerum)の2種類のみである。

 アヘンには成分としてモルヒネ、コデイン、パパベリン、ノスカピンなど20種以上のアルカロイドが含まれ、モルヒネやコデインには中枢神経に作用して鎮痛、催眠、鎮咳などの効果がみられる。アヘンを過量に用いると大脳の機能が麻痺して陶酔感や幻覚が出現し、さらに量が多いと小脳・延髄の機能が冒され、呼吸中枢が麻痺して死に至る。九精中毒症状として昏睡・瞳孔縮小・呼吸抑制の特徴がある。アヘンは習慣性が非常に強いため慢性中毒の状態となり、耐性を生じるので次第に量が増える。慢性中毒では服用後に多幸的な陶酔状態が出現し、不安や苦痛を感じなくなり、効果が切れると強い禁断症状が出現する。

 現在、アヘンは麻酔性鎮痛薬のモルヒネ塩酸塩や鎮咳薬のコデインリン酸塩の原料となるが、麻薬及び向精神薬取締法によって使用は制限されている。また麻薬のヘロインとはモルヒネをアセチル化したジアセチルモルヒネのことで、鎮痛作用は弱いが多幸作用や習慣性は強くなっている。漢方でも止痛・止咳・止瀉の効能があるが、止痛・止咳より、むしろ止瀉薬として用いられていた。津軽藩の秘薬として知られる一粒金丹にもアヘンが配合されていたが、明治10年に阿片配合の売薬は禁止された。

月曜日, 1月 16, 2012

あせんやく

○あせんやく(阿仙薬)

 アカネ科のつる性常緑低木ガンビールノキ(Uncaria gambir)の葉や枝を煮詰めて濾過した後、濃縮・乾燥したエキスをいう。これとは別にマメ科の落葉高木アセンヤクノキ(Acacia catechu)の心材を煎じて濃縮・乾燥したペグ阿仙薬というのがある。中国では両者をともに孩児茶といい、商品名では児茶膏という。中国では主にペグ阿仙薬を用いるが、日本ではペグ阿仙薬はあまり用いない。ガンビールノキはマレー半島やスマトラ、ボルネオなどで栽培され、アセンヤクノキはインド、インドシナに分布し、中国南部などで栽培されている。いずれもタンニンを多く含み、皮なめしか、褐色染料などにも用いられている。東南アジア、台湾などではガンビールと檳椰子に石灰を加え、キンマの葉で包んだものをベテルと称して咀嚼する習慣がある。

 一般に阿仙薬の薬材は1辺が3cmの方形状のもので、茶褐色~黒褐色をし、表面ににかわ様の光沢がある。阿仙薬にはカテキンなどのタンニン、ケルセチン、アルカロイドのガンビリンなどが含まれ、抗菌作用や止瀉作用が認められている。収斂性があり、口に入れると苦くて渋い。このため仁丹などの口中清涼剤や正露丸などの家庭薬の原料として大量に使用されている。

 漢方では止瀉・止血・化痰の効能があり、咳嗽や咽頭炎、種々の出血、下痢、皮膚炎などに用いる。声を出しすぎて声がしゃがれた時には連翹・訶子などと配合する(響声破笛丸)。咽頭炎に用いる家庭薬のクララにも配合されている。ちなみに江戸時代の倍薬としてよく知られている万金丹などの胃腸薬の主成分も阿仙薬である。また江戸時代には五倍子のエキスから百薬煎を作り、これを阿仙薬と偽称したため、阿仙薬のことを百薬煎とも読んでいた。

金曜日, 1月 13, 2012

あせび

○あせび(馬酔木)

 東北地方以南、四国、九州の暖温帯の山地に自生するツツジ科の常緑低木アセビ(Pieris japonia)の茎葉を用いる。生垣などの庭園樹としてもよく植えられ、春に白い鈴のような花が並んで下垂する。アセビは日本特産のため馬酔木というのは和製漢名である。有毒植物で、ウマやウシが誤ってこの葉を食べると麻痺することからアセビ(アシシビレ)とか馬酔木の名がある。普通、ウマやウシはこの葉を食べることをせず、奈良公園ではシカが食べないためこのアセビの木が多く繁殖している。

 葉には有毒成分のアセボトキシン(グラヤノトキシンⅠ)やグラヤノトキシンⅢ、ピエリストキシンなどが含まれ、中毒すると悪心、嘔吐、腹痛、下痢、痙攣、四肢麻痺、呼吸麻痺などをおこす。古くから葉の粉末や煎液は農用殺虫剤としてウマやウシの皮膚寄生虫の駆除、農作物の害虫駆除、便槽のウジ駆除などに用いられた。

木曜日, 1月 12, 2012

あしたば

○あしたば(明日葉)

 関東、東海地方、紀伊半島などの温暖な海岸地帯に生えるセリ科の多年草アシタバ(Angelica keiskei)の葉を用いる。成長が早く、葉を摘んでも明日になるとまた葉がのび出すことからアシタバの名がある。春先の若葉は食用にでき、ゆでて浸し物、和え物にする。多少苦味が残るが、特有の香りがある。八丈島の島民が蔬菜として利用したのが始まりで、ハチジョウソウ(八丈草)とも呼ばれている。

 葉にはルテオリン配糖体やイソケルセチンのほか、各種のビタミンが含まれる。茎や葉を切ると黄色い汁が出るが、その主成分はカルコン類のキサントアンゲロール、4-ハイドロキシデリシンであり、抗菌、抗炎症、胃酸分泌抑制、血管拡張といった作用があると報告されている。近年、アシタバの抽出成分に糖尿病の合併症を防ぐ効果、神経成長因子や骨形成蛋白の産生増強物質が含まれていることが発表され、糖尿病や認知症、骨粗しょう症への効果が検討されている。かつて痘瘡の治療に用いられていた。

 また乳牛の牧草にすると乳の出がよくなるといわれ、催乳・強精作用も伝えられている。最近では健康食品として生活習慣病、便秘、貧血などに用いられているほか、ダイエット効やセルライト解消などの効果も謳われている。

水曜日, 1月 11, 2012

あきょう

○あきょう(阿膠)

 ウマ科動物のロバ(Equus asinus)の皮を、毛を取り除いてから煮て膠(にかわ)にしたものをいう。にかわとは煮皮のことで、粗製のゼラチンのことである。現在はロバ以外にもなどの皮も用いる。主産地は中国の山東・浙江省で、古くから山東省の東阿に産するものが優れていたため阿膠の名がある。ロバの皮を用いたものは驢皮膠といい、ウシの皮を用いたものは黄明膠とい。驢皮膠が漆黒の色をしているのに対し、黄明膠は黄褐色である。日本では主としてウシの皮や骨からとる局方のゼラチンが用いられている。このほか鹿角膠や鹿茸膠などもあるが、効能は異なる。膠は接着剤などに用いるほか、現在でもカプセルや坐薬、ゼラチンスポンジなどの医薬品の原料として応用されている。

 阿膠の成分は硬質タンパク質のコラーゲンとゼラチンで、ゼラチンとはコラーゲンを熱処理により精製した変性タンパク質のことである。これらのタンパク質のアミノ酸の組成としてグリシン、プロリン、オキシプロリンなどが多い特徴がある。ただし阿膠の代用にゼラチンが適するかは議論の余地がある。

。漢方では止血・補血・補陰の効能があり、種々の出血や虚労、慢性的な咳嗽などに用いる。阿膠は加熱すれば溶けるが、低温ではゼリー状に凝固するため、煎剤に用いるときは滓をこした後に溶かしながら服用する。またタンニン酸によって沈殿するので配合に注意する。

火曜日, 1月 10, 2012

あぎ

○あぎ(阿魏)

 中央アジア、イラン、チベット自治区、新疆ウイグル自治区などの乾燥地帯で産するセリ科の多年草アギ(Ferula assa-foetid)の茎や根茎からとれる樹脂を用いる。

 開花前の茎を切断すると断面に乳液が進出して10日ほどで凝固するので、これを削りとる。ニンニクの腐ったような臭いがあり、インドでは香辛料(ヒーング)、中近東ではソースなどの味付けとして、またヨーロッパでは香料に用いている。ニンニク様の不快臭は精油成分に二硫化物(2-ブチルプロペニルジスルフィド)が含まれているためである。かつてはこの臭いが嗅覚神経を刺激して作用する汚臭性神経安定薬、たとえばヒステリーに対する嗅ぎ薬や刺激性の去痰薬として使用された。現在でもインドや南西アジアでは重要な生薬とされている。

 漢方では消積・駆虫・駆お血の効能があり、消化不良などによる腹部硬結や寄生虫症、マラリア、婦人の腹中の血塊などに用いる。近年、内服はあまり用いられず、膏薬に配合して腹部種瘤の外用薬として用いる(阿魏化痞膏)。

土曜日, 1月 07, 2012

あかめがしわ

○あかめがしわ(赤目柏)

 本州以南、中国南部、台湾などに分布しているトウダイクサ科の落葉高木アカメガシワ(Mallotus japonica)の樹皮を用いる。若芽が赤いためアカメといい、柏餅の柏の葉のように食べ物を包んだりしたためアカメガシワという。ただし、葉の形はブナ科のカシワとは似ていない。

 日本の民間療法として、古くは「切らずに治す腫れ物の薬」として用いられていたが、明治以降は煎じて胃潰瘍や胆石症の治療に用いられることが多い。樹皮にはゲラニインなどのタンニンやベルゲニン、ルチンなどが含まれる。成分のベルゲニンには胃液分泌抑制作用や抗潰瘍作用がみられ、樹皮のエキスは潰瘍治療薬として製剤化されている(マロゲン)。また胆汁排出に関して葉のエキスは少量で促進、大量で抑制、樹皮のエキスには抑制作用がある。胃、十二指腸潰瘍、胃酸過多、胆石症には樹皮を煎じて服用する。

 近年、樹皮エキスには腸壁の腸平滑筋に直接作用し、腸の緊張を高め、便秘、下痢、便秘下痢交代といった便通異常に効果のあることが見出され、過敏性腸症候群の治療にも期待されている。そのほかや腫れ物には樹皮の煎液を内服したり、葉の煎液で洗ったりする。痔の痛みには生の葉の汁を患部に塗る療法もある。またあせもの治療に葉を浴湯料として用いる。

金曜日, 1月 06, 2012

あかしょうま

○あかしょうま(赤升麻)

 日本の北海道から九州にかけて北から南に分布するユキノシタ科の多年草アカショウマ(Astilbe thunbergii)の根茎を用いる。アカショウマの近縁植物であるトリアシショウマ(A.thinbergii var.congesta)、チダケサシ(A.microphylla)、アワモリショウマ(A.japonica)などの根茎も赤升麻として用いる。かつて黒升麻、すなわち升麻(サラシナショウマ)の代用にされたため、その名がある。しかしサラシナショウマはキンポウゲ科の植物であり、現代では代用されない。

 根茎にはフラボノイドのアスチルビンのほか、イソクマリン系のベルゲニンが含まれる。アスチルビンとベルゲニンは体内で脂肪に働きかける作用を持つノルアドレナリンを補助する作用があり、ダイエット効果が期待されている。またアカショウマポリフェノールはリパーゼの酵素活性を阻害し、腸管からの脂質吸収を抑制することも報告されている。

 民間療法では煎じて風邪、頭痛、下痢などのときに服用する。また口内炎や咽頭炎には煎液でうがいする。あせもや湿疹などには煎液を塗布する。脱肛には浴湯料として用いる。

木曜日, 1月 05, 2012

あかざ

○あかざ(藜)

 インドや中国が原産である。古くから日本にも渡来しているアカザ科の一年草アカザ(Chenpopdium album var.centrorubrum)の葉を用いる。新芽や若い葉は紅色がかっているためアカザの名があるが、赤味のない変種をシロザという。かつては世界各地でアカザやシロザの若葉や種子を食用にしていたが、今日ではほとんど利用されず、荒地や畑地の雑草として扱われている。若葉を食べた後に強い日光に当たると局所的に発赤、腫脹、皮下出血などが出現することがある(アカザ日光アレルギー性皮膚炎)。

 葉にはロイシン、ベタイン、ビタミンA・B・Cなどが含まれる。民間療法では生の葉を揉んで虫刺されや湿疹に塗る。煎じて健胃・強壮薬として用いれることもある。歯痛には葉を乾燥させた粉末と昆布の粉末と混ぜて痛む部分につける。また茎は太くて軽く、強いため杖として用いると中風にならないという言い伝えがある。

水曜日, 1月 04, 2012

あおき

○あおき(青木)

 関東地方以西の本州、四国に分布する日本特産のミズキ科の常緑低木アオキ(Aucuba japonica)の生の葉を用いる。北海道や東北地方、山陰地方には変種のヒメアオキ、九州や沖縄にも変種のナンゴクアオキが分布している。中国ではアオキの同属植物であるアカサンゴ(桃葉珊瑚、A.chinensis)の葉を天脚板と称し、薬用にしている。一年中、葉だけでなく枝も青いことからアオキ(青木)という名がある。また冬になると赤くて光沢のある実が熟すため、庭木や室内観葉植物として利用されている。アオキは1783年に観賞用植物としてヨーロッパへ伝えられ、学名のアウクバはアオキバ(青木葉)に由来する。

 葉や茎にはイリドイドのアウクビンやアウクビゲニンが含まれ、葉をあぶったり、乾燥させたりするとアウクビンが酸化されて黒変する。日本の民間療法では生の葉を火であぶって柔らかくしたものや、あぶった後すりつぶして泥状にしたものを火傷や腫れ物、切り傷、凍瘡などに外用する。また忍冬の茎葉と一緒に煎じて脚気や胃腸薬、陀羅尼助にアオキ葉が配合されているが、これは固形エキスの表面に色つやを出すためといわれている。